第十一話 ラヴィオ、動きます。
ルフィアのため、ラヴィオが一肌脱ぎます。
尚、ここから暫くはラヴィオが主人公になるので、「私」の一人称はラヴィオに移ります。
ご容赦ください。
私はラヴィオ・バレンツァ。
フェミータ王国第二王子で、軍隊長も務めている。
一年前に私の元婚約者のルフィア・ヴィスパーダが国家転覆罪の容疑で国外追放という判決が下った。
彼女は一貫して無罪を訴え続けていたし、無論私もルフィを庇ったのだが、現実は非情だ。
誰かの策謀によるものに違いない、私はそう確信して判決後から独自に調査を進めていたのだが……一向に掴める気配がない。
右大臣にも渋られた。
そこで、私の部下に命じてルフィの自宅を調べることにしたのだった。
ルフィの家に着き、早速調査をした。
ルフィの部屋は、部屋着や筆記用具以外の荷物は運び出さなかったようで、まだ綺麗なままの状態で残されていた。
今は王国関係者以外、立ち入り禁止にしているので私はすんなり入ることができた。
尤も、私以外にルフィの部屋には入るなとは去年から言ってはあるのだが。
そういうわけで、確実に証拠を握っているだろうと踏み、机の中を調べた。
相変わらず几帳面な机の中だ。
日記帳も几帳面に1ページに一面、文字でびっしりと埋め尽くされていた。
私は1ページ1ページ、丁寧に読み進めていく。
知りたいのは「国家転覆罪の日時と一致しているかどうか」だから、去年の記憶を重ね合わせながら慎重に、一言一句見逃さずに見ていった。
分かったのは国家転覆罪の内容と日記の内容とが、明らかに不一致であること、フェミータ王国への愛国心が綴られていたのだ。
私は違和感を禁じ得なかった。
私がルフィに惚れた、第一の理由がその真っ直ぐな性格、第二の理由に誰とでも気さくに話せる社交力なのだから。
私はすぐに分かった。
「誰かに嵌められた」のだと。
しかもあの裁判の後で、ルフィの従者だった者から話を聞いてもそんな話は一切無かったというのだから、ようやく確信に変われたというのもあったのだが。
考えたくはないが、サーリャやマシューが絡んでいるとは思えないし、だったら他の王族の人間なのか? ルフィに、罪を擦りつけられる権力を持った誰かが一枚咬んでいるとしか思えなかった。
私はルフィの日記を近衛兵長に手渡し、こう命じた。
「これを兄上に渡してくれ。それと……冤罪の証拠になりそうなものは粗方押収しておいて欲しい。」
「承知致しました。」
その後、私と部下たちは1時間ほど追加捜索をして、この日の調査は終了した。
兄上には後で説明するとして、問題は勘付かれないで調査を続行できるか、だ。
もし勘付かれてしまえば、幾ら王族内でも立場が上の私でも消されかねない。
慎重に、且つ確実に真犯人に辿り着けるかどうかだった。
真犯人は裏で今も国家転覆を企んでいるのだろうと思うと虫唾が走る。
だが、あの日から誓ったことがある。
「……必ずルフィを救い出す。世間が言っているような奴じゃないということは私が一番よく分かっているんだ……絶対に真犯人を暴いて……私がこの手で裁きを下してやる。」
やるせなさも勿論あるし、私も公務があるので調査に時間を取れるのは少ない。
だが、私が選んだ女性なのだから、そして今、辺境の村で再起を図ろうとしている彼女のためにも、私が諦めるわけにはいかない。
この日はなかなか寝付けなかったが、朝起きる時は不思議といい具合の目覚めだった。
次回も再調査です。
しばらくルフィアは出てきませんので、ご容赦願います。