008 ようこそ、ウェルバスフの世界へ
つい先程までいた部屋とはまるで違う、薄暗い洞窟。
「・・・ここは?」
「儂の隠れ家、とでも言えば納得できるか?」
「へー、あんたこんなところに住んでたのか?」
「儂は飯を必要とせぬ、故に人里離れた場所におったのだ。儂が必要とされるときまではな」
「うん、色々とツッコミたいところはあるけどまあおいておこう。それより活動方針はどうする?」
「好きに決めると良い、これを」
「なにこれ?」
「リアス様からの言伝だ」
1枚の小さな紙にはびっしりと文字が書かれている。
まず紙というものがこの世界に存在していることが驚きだ。
詳しい作り方とかは知らないけど、太古の昔では甲羅とか羊皮に書いてたんじゃなかったっけ。
「・・・これ見てなにも驚かないんだな」
「それか、リアス様が創造なされた物だからな。あの方は様々な世界を見て物を創っておられた。最もそれがこの世界に普及しているかと聞かれると答えは否、だが」
「なるほど。なになに・・・」
曰く、1ヶ月分くらいの食料と水などの生活必需品はアイテムボックスに入ってる。
曰く、どのように動こうと自由。それは俺の従者と共に決めろ。
曰く、地図はこの世界では軍事機密扱いらしくそうホイホイとは渡せない。
曰く、忙しくて言えなかったけど幾つか便利なスキルが与えられていた(らしい)。
曰く、村正は戦っていくと成長する。
(成長する刀ってなんだよ?竹みたいに伸びるのか?)
曰く、ゼロ君ならステータスとか見たいんだろうけどそんなものはない。
強さは自分で戦って確かめてネとのこと。
曰く、魔法において重要なのはイメージであり、詠唱はそれをサポートするもの。なので必ずしも長い口上が必要なわけではない。
(ふーん・・・スキルね。)
俺がリアスから与えられていたスキルはこんな感じだ。
『異世界言語理解』
これは身体が勝手にウェルバスフの世界の言語を理解して翻訳してくれるのだろう。
『魔物言語理解』
・・・必要か?いるのか知らないけどゴブリンの鳴き声とか理解したくないんだけど。
メモを読み進めていくとどうやらこれはトグル式でオンオフが可能のようだ。
術者が任意でオンオフ可能なのは嬉しい。
『鑑定』
んんん~?これってよくあるチートスキルなのでは?
魔物の大体の強さがわかる。
物に特性が付いてたらそれがわかる。
相手の取得しているスキルがわかる、ただし一定以上の強さを持った相手は鑑定されていることはわからなくともなんとなく違和感を感じるらしい。
使うときは気をつけよう。
スキルは隠蔽、偽造もできるらしい。
『付与』
武器や味方、敵にバフ、デバフをつけることができるらしい。
便利すぎない?
『地球辞典』
地球のことを調べたくなったらこれを使え、だって。
俺がこの世界に来るまでのことは全て調べられるらしい。
はい、チート確定。
米とか醤油に困って各地を走り回る必要がなくなった。
ん?裏面にもメモが続いてるぞ?
困ったときはアイテムボックスの中に僕が地上にいたときにつけていたペンダントが入ってるからそれを出せば国のお偉いさんはわかるかも?
とのことだ。
いたれりつくせりである。
「今日はもう暗い、明朝此処を出る。慣れない世界で疲れているだろう、今日は休むと良い」
「魔物がここを襲う可能性とかってないのか?」
「此処は結界が張ってある、並大抵の魔物ではその結界は破れん」
「なるほどね。じゃあお言葉に甘えて」
(ここを出る前にあいつの名前決めないとな、候補はやっぱりハサン。それと・・・俺がゼロだから1に関連するもの?)
ワンはダサいからなし。
英語くらいしかわからないけど俺にはチートスキル『地球辞典』があるんだよ。
アン・・・はなんか女の子っぽいから却下。
アジーン・・・結構かっこいい、候補。
アインス・・・かっこいいけどあいつのイメージと違うな・・・。
髑髏の仮面の男の名前を考えているうちに気がついたら意識がなくなっていた。