007 餞別
ゼロはリアスが創った、自分の相棒とも呼べる刀―村正(ゼロ命名)を構え、髑髏の仮面の男と対峙していた。
(ふぅ・・・一瞬でも好きを見せたら負けだ。どう出るのがいい?待ち・・・はないな。ジリ貧だ)
「考え事をしている余裕があるのか」
髑髏の仮面の男はそう言うと一瞬で間合いを詰めてきて大剣を振り下ろす。
なにもない殺風景な訓練場にギンッッっと甲高い音が鳴り響く。
「ほう、今の一振りを受けるか。成長したな、ゼロよ」
「そう言ってもらえるのは嬉しいが、今でも受けるので精一杯なんだっ・・・よっ!」
一瞬だけ村正に込めていた力を抜いて、鍔迫り合いを終わらせる。
それと同時に村正を正位置に戻し、仮面男に袈裟切りを放とうとするも・・・
「まだ甘いな」
そう言われ、いつの間にか俺の首元には仮面男の愛剣が突きつけられていた。
「参った」
「だが、切り替えの速さは以前とは比べ物にならないほどに成長しておる。合格だ」
「けどさ、結局あんた相手に一本も取れないとは・・・」
「主に負けるほど儂の腕はまだ鈍ってはおらぬ、ということだ」
「結局0勝374敗か・・・いつになったら初勝利ができることやら」
「儂が死ぬまで無理であろうな。それよりも、そろそろ降りるぞ」
「あぁ、わかった。リアスが餞別くれるらしいしそっち寄ってから行こう」
「こちらに来たということはついにかい?」
「あぁ、やっとあいつから合格を貰えたよ・・・未だに1勝もできてないけどな」
「そうか。僕も彼から一本取るのには苦労したよ・・・さて、旅立つゼロ君へささやかなプレゼントだ。受け取ってくれ」
「俺からしたら村正貰えただけでも十分なんだけどな・・・でプレゼントっていうと?」
「まずは僕力作の魔道具さ、彼から話は聞いたことなかった?」
「あー、なんか1回だけ聞いたことあった気がする」
「ゼロ君に馴染みある言葉でいうならそうだね・・・アイテムボックス、とでも言っておこうか」
「制限は?」
「僕が創ったんだ、あるわけないじゃないか」
「そりゃまさしくチートだね」
「しかもこのアイテムボックスに物を入れている間は時間が流れない。それと・・・これ」
目の前に出されたのは黒いローブ?
「これは数千年の時を生きたブラックドラゴンの鱗と皮を素材に創ったローブ、耐久性は保証しよう。あ、あと彼同様このアイテムボックスとローブには隠蔽の魔法が掛けられているから、超が3個つくくらいの魔法使い、錬金術師でもない限りはこの魔道具の効果には気づかないだろうさ」
「いやアイテムボックスは使ったらバレるだろ・・・」
「ひとえにアイテムボックスと言えどその容量は千差万別。そして中のアイテムを取り出すときは取り出したいものを頭の中に思い浮かべておくれ。それをどこに出すのかも、ね。けど、何処にでもそうホイホイと出せるものじゃないから、気をつけておくれよ。何kmも離れた場所に出すなんてことは不可能だから」
「わかった」
「では餞別はこのくらいにして・・・僕の代理人としての役目きちんと果たしておくれよ?」
「善処はする」
「最初はそれくらいの心持ちでいいのかもね?」
「うむ、では征くとするか」
「わかった」
「じゃあ行ってらっしゃい」
「行ってくる」