006 生きていくための訓練
あれから数週間、リアスは俺の刀を創るのに集中しているのかこちらに姿を表す気配はない。
しかし髑髏の仮面の男との訓練は苛烈、としか表現のしようが無かった。
まず第一の訓練は・・・かくれんぼ――髑髏の仮面の男の提案。
しかしその内容はかくれんぼとは名ばかりのものだった。
訓練はとても単純で、十二の方角にランダムに出現する髑髏の仮面の男が殺気を放ってくるので向けてきた髑髏の仮面の男が、別の方角に移動するまで立っている数秒のうちにそちらに身体を向けるだけ、といったもの。
まず殺気を向けられるのに慣れるのに数日かかった。
あいつの殺気強烈すぎて動き出すまでに時間がかかる。
そして振り向いた先に髑髏の仮面の男がいなければ別の方角に移動しているあいつが大剣で斬りかかってくるのだ。
まさに地獄。
地上に降り立つ前に死ぬんじゃないかと思った。
命がいくつあっても足りない。
それでも寸で止めてくるのがあいつの技量の高さを如実に表しているのだと思う。
「ちょ・・・ちょっと休憩、させてくれ」
「魔物や自分を殺そうとしてくる相手を前にそのようなことを言えるのか?」
「なるほど、ね・・・けどお前の殺気が濃すぎて疲れるんだよ・・・」
「ふむ、まだ慣れぬか。ならば仕方があるまい、数分だけやる故呼吸を整えよ」
「飲み物とか・・・ないのか?」
「贅沢なことを・・・水しかないぞ」
「それで、いい・・・」
俺がそういうと髑髏の仮面の男の手にはなにもなかったはずなのに突然水が入ったコップが出現する。
「どういうトリックだよ・・・」
「なんと言ったか・・・リアス様から渡された秘蔵の魔道具だ。この世に5つとないとか言っておったな。主も貰えるのではないか?ほれ、飲むといい」
「それは知らん・・・助かる」
コップに入った水を一気に飲み干す。
美味い。
水がここまで美味いとは思わなかった。
「生き返るぜ・・・・」
「主は元々生きておろうが。いや、儂が一度殺したか」
「そういう意味じゃなくてだな・・・いやいい。続きをやろう」
「ふむ・・・随分とやる気だな?」
「強くて損はしないだろ。それに・・・」
未知の世界。
生死を掛けた戦い。
あっちに居た時には味わうことのできなかった新鮮なものだ。
ワクワクするなと言われてもそれは無理だろう。
前世でラノベやゲームが唯一の生きがいだった零士――否、ゼロには非常に興味深いものだった。
「それに?」
「あんたが殺しに来た世界だと、魔物は出なけりゃ剣や魔法で戦うようなことはなかったんだよ。楽しみだろ?」
「酔狂なものだな」
「あんただって楽しいんじゃないのか?」
「なぜそう思う?」
「その構えた大剣を俺に振り下ろさないなら答える。あと殺気も解いてくれ、休憩にならん」
「返答次第だな」
「そんな深いことは考えてないぞ?単純に俺に訓練をつけてるあんたが・・・楽しそうにしていたからだよ」
「・・・そうか」
そう言うと目の前の男は大剣を振り下ろしたかと思うと、首の寸前で止めた。
「死んだと思った」
「ふん、再開するぞ」
こんな感じで訓練は続いて行くのであった。