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1話

「懐中電灯よし、食事3日分よし、お金は…あぁ、お札じゃなくて電子マネーなんだっけ……慣れないなぁ」

リュックをパンパンに膨らませ荷物確認をする。俺は今この都市の中央に位置する城の最上階の部屋にいた。大きな窓から外を眺めると人…いや、人型のロボットがうじゃうじゃと日常を過ごしている。にぃっと口角が上がるのがわかった。

「待ってろよ…ホンモノ世界」

俺は窓に向かって勢いよくハンマーを振り下ろした。


--------------------


ロボット都市。それは数年前に出来た大型都市。人口の全てが造られたロボットである。なんでも都市の中央にあるお城の主がこの都市をつくったとかなんとか。

「おはようソフィーナ」

「おはようございます店主さん」

「いやぁ、ソフィーナが店のウェイトレスになってくれて良かったよ。美人ウェイトレスって評判になっちまってな、お前目当てに客がくるんだ。また頼むよ」

「はい、わかりました。その時がきたら教えてください」

ガタイの良さが服の上からでもわかる程の体を持つ行きつけのお店の店主さん。私の家とお店が近い事もあり、よく利用させてもらううちにいつの間にかたまにお店の手伝いをする事もある。すれ違う度に皆が挨拶をかわす。まぁ、人間ではなくロボットなのだが。そういう私、ソフィーナもロボットである。

「今日の気温は20.3度、例年通りの気温。降水確率は10パーセント」

その時、パリーンとガラスの割れる音がした。音のした方へと視線を向けるとお城の方からだった。ガラスが宙を舞っている。

「ガラスが降るとはデータにありません」

今日はなにかいつもと違う事が起こる可能性がある。例えばと聞かれたらそれは答えることは出来ない。周りもザワザワとしていたが次第に騒ぎはおさまった。きっとなにかお城でのアクシデントだろう、ガラスが1枚2枚割れただけとロボット達はいつも通りに過ごし始めた。私自身も大事ではないと考え、足を進めた。決して日当たりが良いとは言えない家へ帰ると、見知らぬ男がリビングの机でくつろいでいた。台所にあったと思われるリンゴを齧りながら。

「あれ?ここの家主?え、やば超可愛いじゃん!女子の部屋?ラッキー!」

「不審者と断定。直ちに警察へと連絡します」

「ま、まって!まって!!話を聞いてよ!!」

「身の危険を察知しました。不審者の身柄確保の為戦闘モードに移行します」

「いやいや女の子は普通不審者見たら逃げ出すか腰抜かすくらいだから!!どこの世界に果敢に不審者に立ち向かう女の子がいるのさ!いるかもしれないけども!!」

口をとがらせ紫色の髪をいじり出した男。ブツブツと何かを言っているが全く聞き取れない。

「何を言っているのか不明です。もっと聞こえるように言ってください」

「いやさー、ちょっとくらい俺の話聞いてくれても良くない?その戦闘モードの構えとか可愛くないよ?もっと女の子らしくしないとさ!君名前は?」

「不審者に名乗るなと言われています」

「え、そんな設定までしてんの?まんま人間じゃん」

「私は人間ではなくロボットです」

「知ってる知ってる」

その男は不貞腐れたように机に肘をついた。

「だって、元を辿ればお前を造ったのは俺だからね」

そしてさらっと爆弾発言をした。私達を造った?その話が本当ならばこの男は。

「なら、つまり……貴方は」

「お城の関係者でーす」

と男は満面の笑みでピースをした。


--------------------


「改めて自己紹介をしよう!俺はアルタイル!名前ダサいからアルタって呼んでよッ!」

「アルタのダサいの基準がわかりません」

「ダサいは直感だから、説明求められても出来ないよ?それよりほら、自己紹介!」

「私はソフィーナ、呼び方はお任せします。歳は18歳と設定されております。以後お見知りおきを」

「じゃあ、ソフィだね、ソフィ〜♡♡」

アルタは両手を左右に振る。これは振り返した方がいいと判断した私はアルタに手を振り返す。その直後まるでなにかに撃たれたかのようにアルタは横転した。

「ま、まさかソフィが返してくるなんて思ってなかった。もしやソフィは見た目に反して小悪魔なのか!!」

「言ってる意味が理解できません。」

「だからさ、俺的にソフィは天使」

ドンッと扉が吹き飛ばされ、アルタの言葉は遮られた。ズカズカと家に入ってくる黒づくめの集団、私が呼んだ警察だ。

「……え、ソフィほんとに警察呼んでたの?」

「呼びました」

「なんで」

「貴方が不審者と判断したからです」

「お城の関係者って言ったのに?」

「それより前に呼んでしまいましたので」

「いやいやいやいやいや、キャンセルの電話とかさ」

「アルタイル様……お戻り願います」

またもアルタの言葉は遮られた。警察集団の中から1人の少年らしきロボットが姿を現わす。その少年を見るや否やアルタは顔をゆがませる。

「……サク」

「あれは、よく都市で見かける警備ロボットのサクですね」

「へー、警察ロボットでは飽き足らずサクも都市徘徊してんだ。うわー、ひくわー」

「アルタイル様お戻り願います」

「だってさ?サクと同じ顔がうじゃうじゃ都市を見回ってるわけでしょ?考えただけで恐ろしい〜」

「アルタイル様お戻り願います」

「お前はそれしか言わないな!!」

「アルタイル様お戻り願います」

「嫌だよ、戻らない!べー!バーカ!!あーほ!!」

相手を挑発するアルタ。挑発といってもかなりレベルは低い。サクの表情が変わらないところを見るとアルタの挑発は効いていないらしい。

「わがままを仰らないでください。私共にはアルタイル様のお城へのお帰りを命じられております。さぁ、アルタイル様お戻り願います」

「だーかーらー!!!……嫌だってば」

アルタの手にはいつの間にか手榴弾が握られていた。栓を抜きサク達に向け手榴弾を放った。

凄まじい爆発音と同時に黒い煙が上がる。あぁ、私の家が。

「あぁー、木っ端微塵だねソフィの家」

「まるで他人事のように言っていますが元凶は貴方ですよ」

「そんな褒めないでよソフィ」

「アルタは馬鹿というものですか?」

私とアルタはというと爆発に巻き込まれる前に家から脱出していた。手榴弾は栓を抜いたとほぼ同時に爆発するので遠くまでとはいかないが爆発被害が及ばない程度の所までは全速力で走ることはできた。私がアルタを抱えながら。

「そういや、逃げるのに必死で忘れてたけどあの爆発でソフィのご近所さんとかに被害があったらどうしよ」

「大丈夫だと思います。私の家の周りには誰も住んでいない空き家ですので」

「わぁお、便利」

「アルタ、貴方は一体何者ですか?」

「ん?俺?……そんな大した奴じゃないよ。」

「ですが、サクは貴方をアルタイル様と呼んでいました。大した者じゃないなら何故サクは貴方を様呼びするのでしょうか」

「そりゃあれでしょ、俺がこの都市の重要人物だからなんじゃない?」

「え?」

「あー、言ってなかったっけ?まぁ、声を大にして言えることじゃないけどさ、俺ねー、このロボット都市つくった張本人なんだよねー!あ、でも他に言ったらダメだよ?2人だけの秘密だね」

アルタは私に手を伸ばす。

「俺ね、ロボット都市じゃないホンモノ世界に行きたいんだ」

その笑顔はまるで無邪気な子供のよう。

「ソフィ!俺と一緒に逃げてくれ!そして俺と一緒にホンモノ世界を見に行こう!」

私は不思議と彼の手をとっていた。この笑顔をどうしてか守りたいと思った。あぁ、理解できない。


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