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短編集

どうやら異世界に来てしまったようだな……

千文字強の超短編です


 最初に知覚したのは、目蓋の上から感じる刺激だった。

 明るい。そう感じてゆっくりと目蓋を開く。

 視界へと真っ先に飛び込んできたのは、地面だった。

 段々と焦点があっていき、そして体を起こして辺りを見回す。

 そして、それが見知らぬ光景であることに気が付いた。


(何処だここは……)


 どうやら自分は道端に仰向けに倒れ込んでいたらしい。

 石造りの建物に挟まれた狭い路地裏のようで、奥にも続いているようだ。

 立ち上がり、膝や尻を手で払う。そのとき初めて、自分がデニムにシャツ、そして上着という外出時の格好をしていることに気が付いた。

 はて、この服装は確かに自分のものだが、何でこんな服を着て路地で寝ていたのだろうか。

 疑問に思うが答えを返すものは居ない。


 自分を目覚めさせた顔を照らした日の光の方へ、導かれるように歩き出す。

 逆光になって眩しいので、手を翳しながらふらふらとそちらへ近づく。路地の出口からその先へと出ると、そこには、


 全く見知らぬ世界が広がっていた。


(……何処だ、ここは)


 目覚めてから、二度目となる疑問を抱く。

 大通りらしきその場所は、石畳の舗装がなされ建ち並ぶ建築物も、日本では見ないような石造りや煉瓦造りのものばかりだ。

 街を行き交う人々も、日本人とは大きく異なる彫りの深い顔付きの人種ばかりだ。


 大通りの、道の端に突っ立ったまま、自分が何故先程の路地に倒れていたのかを考える。しかし思い当たりはない。

 そこで、自分が昨夜何をしていたか考えることにした。


(…………昨日はたしか、仕事を終えて家に帰り、そのまま床に着いたはずだ)


 石畳の上に寝ていたからだろうか、やけに痛む頭を擦りながら思考を巡らす。だが、自らの記憶の中には、当たり前の日常のそれしかない。

 そしてそれは当然、己が現在見知らぬ場所にいることとなんら結び付きを見せない。

 駄目だ、考えが纏まらないと、頭を振った。


 そんなとき、突然声を掛けられた。


「Wat heb je gedaan?」

「えっと、あー」


 声の方を見ると彫りの深い、一目みて人種が異なる男性が立って此方に話しかけてきた。

 しかしその言葉は理解できない。


(困ったな……誰か翻訳してくれたらいいのに)


 そう思い、仕方なく自分の話せる言葉である日本語で喋った。通じないだろうな、そう諦めながら。


「ここがどこだかわからなくてね……」


 投げやりに呟いた言葉は、果たして慮外の結果を生み出した。


「迷子かい? ここはxxxxxxxの街だよ」

「!」


 通じないだろうな、そう思っていたにも関わらず、自分の言葉が通じた。しかも相手の男も日本語を喋ったではないか。

 驚きながら、会話を続ける。

 どうやら自分は『ネーデルラント』という聞いたことのない(・・・・・・・・)国にいるらしい。

 

「君、名前は?」

「僕か? 僕は田中健治だ」

「ケンジだね。ぼくはアルベルト、アルって呼んでくれ」

「ありがとう、よろしくアル」


 そういってアルと握手をした。


(間違いない……)


 この状況、分かったぞ!

 アルのお陰で、自分が何処にいるのか、そして一連のやり取りで何が自分に起きたのか理解した。そう、つまり……


(俺は、異世界にやってきた(・・・・・・・・・)んだ!)


 見知らぬ場所。日常で終わりを告げる記憶。いつの間にか着替えていた外出着。

 そして、通じなかった言葉が自分が望んだ瞬間に理解できるようになったこと。

 これは異世界転移したときに得たであろう翻訳スキルが、自分が望んだことで発動したのだろう。


 それに、辺りの様子からみるに、ここはヨーロッパっぽい!

 中世ヨーロッパ風異世界にやってきたのだ!


「ふっ……どうやら俺の時代がやって来たようだな」

「? 何、どういうこと?」


 つい漏れた独り言に首をかしげるアルに対し、俺は「何でもないよ」と誤魔化した。


 まずは周辺の状況を理解できるようにならなけば!

 俺はアルに対し、まず手始めに、この国について聞くことにした……。

この後滅茶苦茶(勝手に)勘違いした。



記憶が飛んでるのは路地で頭を打ったからですね。

アルはたまたま日本語を喋ることができました。日本通!

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