6.業
超能力者である彼らには生まれつき普通の人とは異なる特性を持っている。
それが、業である。
業。
身体能力の上昇を促したり、通常の人間では感知できないものを感知したり、己の実力を隠蔽したりと……。
所謂中国やインドで言うところの氣やチャクラの様なもののことだ。
超能力者はその超常の力にプラスして固有の異能を使うことで戦闘をしてきた。
そして、七重秋人はそんな業使いの中でもトップクラスで、身体能力強化に優れる超能力者であった。
◆
リードファルデに蹴りを放たれる直前、秋人は自身の“素の身体能力”では手に負えないと瞬時に判断し、すぐさま隠していた業を身体に展開。
通常の人間とは比べ物にはならない業の放出を行い、全身の耐久力を向上させ、両の手でリードファルデの蹴りをガード。
当然のことながら業の身体強化能力によって動体視力も上昇しているため、リードファルデの攻撃を的確に捉え、最小限のダメージを負うことで防いで見せた。
そして先ほどのカウンター。
やられっぱなしは秋人の主義に反するので、業を脚に集中させてリードファルデの目前に移動し、そのままアッパーを食らわせた。
ちょうど秋人を仕留めたと勘違いしていたリードファルデは、完全に警戒を解いていたので、無防備にその拳を受けることとなり、全身鎧の姿でありながら秋人に吹っ飛ばされるという事態に陥ってしまった。
(何が起きたのか、それを知るよりも先にアキト殿との戦闘に集中することが先決だな)
リードファルデは秋人の反撃に不意を突かれるも、とりあえずは態勢を整えるのが重要と見て、中空で回転して綺麗に地面に着地する。
先ほどのは凄かったな、と。
そんな賛辞でもしようかなと開けかけたリードファルデの口は、すぐさまに閉じることとなる。
急な秋人の襲撃によって。
(速いッーーー!?)
カンッ、という音が鳴り響きリードファルデは籠手で秋人の拳を防ぐ。
秋人は拳を鉄に打ち付けたというのに、その衝撃も気にせずに半回転して蹴りを放つ。
リードファルデはその蹴りに反応し剣でガード。
パァンッ、と軽く音が鳴ってリードファルデは剣で秋人の蹴りを払う。
それと同時に秋人はリードファルデの剣の勢いを利用して、間合いを空ける。
(ふぅ……これが、レベル1の身体能力だというのか?だとしたら、レベルが二桁になる頃にはとんでもない化け物になっているぞ!?)
リードファルデは秋人の攻撃が止み、余裕のできた頭でそう思考する。
一方、先ほど猛撃を仕掛けていた秋人の方もそれほど余裕があるわけではなかった。
(おいおい、マジかよ……。俺、これでも全力で“闘鬼の業”使ってるんですけど……?これでダメってことは、俺もう後は異能しか切り札ないんだけど?)
一番自信があった業による身体強化。
しかしリードファルデは、秋人の身体能力の上昇に驚きはしたものの決して反応できないわけではなかった。
というよりも、むしろまだまだ余裕を残して戦っている感じだ。
その証拠に、リードファルデは秋人が目前にいるというのに悠々と思考の海に沈んでいる。
もし秋人の攻撃に切羽詰まっていたのだとしたら、とてもではないが考える余裕などはないだろう。
(だけど実際はホントに余裕……みたいな感じだからな。コレはあれだわ。俺じゃあ手に負えんわ〜。……使いたくなかったけど、使うしかないかぁ)
未だに考え事をしているリードファルデに向けて、秋人は手のひらを翳す。
「……?」
リードファルデが何事だ?と言わんばかりの疑念に満ちた目を向けてくる中、秋人は右手に濃密な業の渦を生み出した。
◆
いつの間にか、秋人の右手には一枚のカードが握られていた。
柄は黒と白を基調としたチェック模様で、所謂トランプカードのような風体をしている。
「それは、一体何だ?もしかして勇者特有の恩恵というやつか?」
「まぁそう取ってくれてかまわねぇよ」
一言、そう返すと秋人は掴んでいたカードに業を流した。
「ーーー『一握りの希望』!」




