3.ステータス〈裏〉
ゴールデンウィーク、楽しィイイイッ!
少年は何でもできた。
小さい頃から超能力の訓練をしていたおかげで、自身の想像するものは全て現実となった。
喉が渇けば水が、寒くなったら火が……。
運動会が中止にならないかなぁ、と呟けば次の日は必ず雨となる。
天候さえも少年の思うがままだった。
少年は退屈していた。
何でもできるからこそ、学校ですること全てにおいて達成感がない。
図工できいすを作れる、運動会で一番になる、合唱コンクールで優勝する……。
そんなの少年の力を持ってすれば当たり前に叶うものだった。
だからこそ、少年は理不尽を欲した。
世界に、思い通りにならない不条理を欲した。
自身に枷を欲した。
そうして出来たものが彼の異能。
少年の都合が良すぎる能力をほどほどに封じ、ほどほどに使いこなすための異能。
本来超能力者が自身の固有能力を生み出す時、それは能力者においての強化と言っても過言ではないというのに、少年はそんな能力者とは真逆のベクトルへと走ってしまう。
その異能の名をーーーーーー
◆
ローズヴェルデにはある特殊なスキルがある。
通常スキルには二通りのものがある。
それは先天的なものと後天的なものだ。
後天的なものは大抵が技術である。
剣術だったり盾術だったりと、努力や研鑽によって得られるもののこと。
そして先天的なスキル。
これはローズヴェルデが持っている“特殊な”スキルというやつだ。
先天的なスキルはそのほとんどが異能だ。
それこそ凡人では一生届きようがない、まさに選ばれし者だけが獲得できるスキル。
異世界から召喚された勇者たちが持つ恩恵とも異なる、現地人だけの異能である。
そんなローズヴェルデが持っているユニークスキルの名は、『真実の瞳』
ローズヴェルデの目に魔力を込めれば、相手のステータスを嘘偽りなく見透すことが出来るという、鑑定系スキルの最上位スキルだ。
このスキルはいつでもローズヴェルデに真実を教えてくれる。
故に彼女はこのスキルを疑ったことがない。
しかし、彼女はここに来て初めて自身の目を疑った。
(う、うそ……。こんなの有り得ない、というかこの人人間ですらないなんて……)
ローズヴェルデが鑑定した男子生徒、七重秋人のステータスの結果に思わず体が震える。
ローズヴェルデの目には、七重秋人はこの様に映っていた。
ーーーーーー
名前 アキト・ナナエ
種族 超人族 年齢16
Lv.1
HP 220/220
MP 57800/57800
筋力 105
敏捷 103
耐久 104
器用 102
スキル 『業』Lv.8
『武芸百般』Lv.4
恩恵 『???』
ーーーーーー
(ま、魔力量が……ご、五万………………?そんなの、人じゃない)
何度も目をこするローズヴェルデ。
しかし鑑定結果は変わらず、相変わらず秋人の魔力量は五万から変動することはない。
通常この世界の人間の魔力量は300〜500が一般的と言われている。
魔力を使って戦うことを常としている魔術師と呼ばれる集団ならば、一般人よりは多いかもしれないが、それでも精々先ほどの平均から二、三倍と言ったところだろう。
(なのに、平均値の百倍以上なんて……)
とてもではないが、同じ人種とは言えないだろう。
事実、そんなローズヴェルデの意見に同意するかの様に秋人の種族名は人間ではなく超人族と銘打ってある。
最早この世界のシステムからも化け物扱いされた秋人。
当然、ローズヴェルデの目から見ても人外としか思えない。
(と、とりあえず……彼を、一刻も早く処分しないと。……多分、王国最強の騎士である彼女に頼めば、今ならば討伐できる、はず)
大きすぎる力は人に恐怖を与える。
ローズヴェルデもその例には漏れず、保身に走ってすぐにでも秋人を処分しようと動いている。
ローズヴェルデは異世界人を召喚するにあたって、マニュアル本を読んでいたが、劣等生に対しての対処は書いてあっても、秋人のような超人に対する対処などは何一つ書いていなかったために、ローズヴェルデの勝手な独断により秋人を排除対象に定めてしまった。
(幸いなことに、彼のレベルはまだ低い……。ステータスも一般人に毛が生えた程度。勝機がないわけではない……)
更に不幸なことに(どちらにとってかはわからないが……)今はまだ秋人のステータスは低い。
それこそただの肉弾戦ならばそこらの兵士にも劣るほど。
それ故にローズヴェルデは人外の化け物に対して、排除という選択に出てしまった。
「……リードファルデをここに」
「へ?リードファルデ様ですか?」
「ええ、E室にいる化け物の討伐を依頼したいので」
「はぁ、畏まりました……」
「……頼んだわよ」
ローズヴェルデは近くに控えていた侍女に、王国最強の騎士リードファルデへと言伝を頼む。
秋人を殺せ、と……。
この判断が鬼と出るか蛇と出るか、それは誰にもわからなかった。




