25.加速する脚撃《アクセラレート・ブーツ》
当初は本当に三話で完結させる予定だったのに、いつの間にかにここまで伸びてしまいました。
そして、今回の話でもリンテウス戦は完結しません。
なんだかんだで、リンテウス君が、「やれる……我はまだやれるぞ」と俺に叫びかけているようにしか思えないんです。
ということで、リンテウス戦は後一話程度書く予定です。
長々と書いてしまい、すいません。
後書きの方にリンテウスのステータスを公表したので、興味のある方はこちらもご覧ください。
まぁまぁ強いですよ、リンテウス……。
「ッ……!?」
秋人によって繰り出される鎖。
リンテウスは傲慢な態度そのものをかなぐり捨てて、回避に移る。
(あの鎖はマズイ……ッ!)
己の体に一度その技を受けた者としての危機感。
そんなものが彼の思考に影響していた。
左腕一本が丸々使えなくなるというのは、さすがのリンテウスでもいたいと言わざるを得ないのだろう。
回避行動に出ながら彼は、即座に魔法の展開を始める。
「“我、咎人の焔を受けし者ーーー”」
「っと!それはさせねーぞッ!ーーー『束縛する鎖撃』!」
「チッ……!」
『おおっとー!ここで、まさかの二度目の七罪魔法の展開!しかし、アキト選手から出される鎖によって阻止されてしまうーッ!!!』
『おそらく、リンテウスの足りない魔力で、七罪魔法の初級でも使おうとしてたのかもね……あいつの残りの魔力でもできなくはないし……。けどまぁ、そんな長い詠唱を許してくれるほど甘い相手じゃないわ』
解説を務めているアイレの言う通り。
秋人も秋人で、それなりに七罪魔法には注意を払っている。
そのため、あの長い詠唱をしようとすれば、即座に鎖での攻撃が彼に襲いかかるだろう。
「チッーーー!『火の身体強化』!」
『おっと!ウィリディス選手!!!ここで、七罪魔法から通常の魔法へと変えてきました!』
『まぁ、あいつぐらいステータスが高かったらそんな強い魔法いらないしねー』
舌打ち一つして、アイレと同じ考えに至ったリンテウスは、通常の身体強化魔法で秋人に迫る。
「ふんッ……!」
「かはっーーー……」
一足跳びに跳躍したリンテウスのスピードは、秋人のハートの効果で強化された動体視力を
以ってしても捉えることは叶わず、その圧倒的な力を左腕に叩き込まれてしまう。
「ぐっ……『束縛する鎖撃』!」
「なっ!?」
しかし、秋人も負けてはいない。
左腕の損傷を代償に、吹き飛ばされる直前に発した彼の鎖がリンテウスの右足に絡みつき、そして、黒い鎖の文様を映し出す。
「くっーーー!」
ガクン、と。
いきなり力を失った右足のせいで、うまく打撃に体重を乗せることができずに、秋人へ致命傷を与えることができなくなった。
ドガァアアアン!
勢いそのままに壁へと突っ込んで行ってしまった秋人。
そして、左腕右足の自由を奪われたリンテウス。
体のダメージ具合でいえば秋人の方が分が悪いような気もするが……。
「クソがッ……!」
リンテウスの悪態の吐き方は、観客にリンテウス有利と言わせるには、まだまだ根拠がないと言わざるを得ないものとなった。
◆
壁に突っ込んだまま沈黙している秋人と、片足で突っ立ったままになっているリンテウス。
両者共に動きが見えないため、試合は一時中断になるかに思えたがーーー
「“我、咎人の焔を受けし者ーーー”」
『ま・さ・か・のぉおお!ここで、七罪魔法!!!ウィリディス選手、まさしく鬼ですね!?』
『ええ、私でもちょっとそれはさすがにないわー』
(チッ!凡夫共は黙っておれ!)
実況、解説、そして観客もドン引きしている中、それでもリンテウスは詠唱を止めない。
「“我、黒焔を纏て憤怒の主と成らんーーー”」
(奴は絶対に生きているーーーッ!我の感が、そう囁いている!何より、この場にいるからこそ伝わる……奴の圧迫感が)
直接秋人と対峙しているからこそわかる、独特の空気感。
リンテウスはそれを敏感に感じ取り、秋人が生きていることを断定して行動している。
「“咎人の焔を用いて、炎弾となさんーーー”」
7割方リンテウスの詠唱が終わった時、その音は響いた。
『トゥルルルルルッッッ!!!カシャンッ!ーーークローバーの!2!!!』
「……ッ!」
『この音はーーー!?!?!?』
『ええ、私の奴隷の恩恵だわ』
『生きてたんですねー!?』
『当然よ!私の奴隷だもの!これぐらいじゃ、死なないわよ!』
(奴め……一体、今度はどんな手品を見せる気だ?ーーーしかし、我の詠唱は既に終わっている。あとは奴に喰らわすだけだ!)
「ーーー『黒焔の弾丸』!!!」
「ーーー『加速する脚撃』!」
リンテウスの右腕から黒い炎弾が打ち出された直後。
秋人の足元から緑色の輝きが生まれ、秋人は勢いよく駆け出した。
「なっ……よ、避けた……だと!?」
少なくとも、200キロ。
否、もしかすれば時速300キロの土台を超えていたかもしれない。
しかし、そんな炎弾のスピードを諸共せずに秋人は加速し続ける。
カードナンバー、2。
『加速する脚撃』
ただ、単純に秋人の足の速さを2分間、二倍にするだけの異能。
単純、ゆえに不可避な結果であり、単純であるがゆえに強い。
現に、リンテウスもその秋人の速さに翻弄され、全く秋人の姿を捉えられていない。
(くそッ……せめて、右足が使えていれば!)
「『火の弾丸』!」
時折、こうして魔法を打ち出しているものも、どれも不発に終わり秋人の足を止めることは叶わない。
秋人は、しばらくリンテウスの反応を伺い、自身のスピードについてこれていないと理解すると、すぐさま攻撃へと転じた。
「おら、よっと!」
「くっ……舐めるなぁああッ!」
「っと!あぶね……」
ブォン。
と、大振りに振ってくる彼の右腕は、風圧だけで秋人に命の危険性を伝えてくる。
(あれ、食らったらひとたまりもないな……)
内心、秋人がそう戦慄していると、焦れたリンテウスが急に小岩を持ち上げた。
「うぉおお!ーーーオラッ!!!」
(ーーーっぶね!?マジで!!!)
恐ろしい速度で飛んでくる岩石。
秋人がその速度にびびって大幅に右側に回避する。
するとーーー
「それを、待っていた!」
「ーーーかはっ!?」
右側に回避することを予想していたリンテウスによって先回りをされ、左腕にさらにもう一発。
ズドンッ!
と、大砲の弾丸が放たれたかのような凄まじい轟音と共に、秋人はまたしても壁に激突する羽目になる。
「おおっ!おい、あれ……」
「ああ、今回のはマズイな……」
「……ッ」
そして、今回の攻撃は観客たちにも大きな動揺を起こした。
何故ならーーー
(くそッ……イテェ…………左腕がぁあああ)
そう、秋人の左腕が先ほどの衝撃で捥がれてしまっていたのだ。
秋人はあまりの激痛に堪らず地面に膝をつける。
リンテウスは勝負あった、といった感じで鼻を鳴らす。
『おおっとぉおお!?秋人選手の左腕が吹っ飛んだぁあああ!?さすがの秋人選手もここで降参か!?』
観客、実況、そしてリンテウス。
誰もが秋人の敗北を予期している中で、ただ1人……。
『あいつは、まだ何かするつもりよ……』
ただ1人、アイレだけが秋人の勝利を信じて疑っていなかった。
そして、そのアイレの言葉に反応したかのように、秋人は右手にあるカードを出現させる。
『トゥルルルルルッッッ!!!カシャンッ!ーーーハートの!エース!!!』
「き、貴様ぁ……その怪我でまだーーー」
戦うつもりなのか。
そう問うよりも先に秋人は己の異能を発現させる。
「ーーー『聖杯の奇跡』」
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名前 リンテウス・ルベル・ウィリディス
種族 魔族(黒鬼) 年齢17
Lv.86
HP 10879/10879
MP 8543/8543
筋力 14178
敏捷 12249
耐久 8925
器用 7268
スキル『火魔法』Lv.8
『七罪魔法《憤怒》』Lv.6
『拳闘術』Lv.4
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リンテウス君のステータスです。
レベルの割にスキル少なくね?と思う方もいるかと思いますが、リンテウス君はこれでも学院トップクラスのスキル数です。
というのも、魔族は基本的に基礎値が高いので、スキルのような補助を必要としません。
そのため、殆どの魔族がスキル数ゼロの状態です。
……一個でも覚えていたら優等生ですね。
そんな感じなので、リンテウス君はまぁまぁ優秀です。
と言っても、学院最強であるアイレには劣りますが……。
アイレとリンテウスの関係については、その内語る予定ではありますが、これといって重要性のある話ではないので、今のところは出番はない感じです。
まぁ、そんな感じで連載を始めて早三ヶ月?
もしかしたらもうちょっと……?
あんまり覚えていませんが、これからもサイキックブレイバーズをお願いします。
以上、またしても長文、失礼しました。
後、次の投稿は10月17日です。




