22.極星の破滅《メテオ・フォール》
はい、ついに秋人くんのエースカードの能力を出すことが出来ました!
と、言ってもまだ一つだけですが……。
彼の能力を全て出すにはどれだけの話数を使うことになるのか……。
ちょっと、この能力設定に後悔していたりする時分です。
次話は3日後です。
(……ん?なんだ?妙に教室が騒がしいなぁ?)
放課後。
こなすべき授業を終えた生徒は、後は下校の準備をして家に帰るだけ。
そのはずなのに、何かビッグイベントでもあるかのように教室内が騒がしかった。
(あっちの方から、騒がしい声が聞こえやがんなぁ?)
首にネックレスをつけたいかにも軽薄そうな男子生徒は、その見た目とは裏腹に空気の変容に敏感なのか、一発で喧騒を巻き起こしている元凶を見つけ出す。
「んお?こりゃあ、決闘戦の申し込み書、か?」
喧騒の元凶まで顔を出してみると、そこには一枚の紙ーーーつまりは、決闘戦の申し込み書が張り出されていた。
(この時期に決闘戦なんて、珍しいなぁ……)
今の時期は、まだ新学期が始まって一ヶ月といったところ。
この時期は周囲の状況を把握するのに精一杯で、決闘戦なんて娯楽をやるほどの余裕は、大抵の人間……というか魔族にはない。
どこの世界でも、クラスの空気に馴染みにはある程度の時間がかかるものなのだ。
しかし、張り出されているということは、やることには変わりがない。
ーーー一体、どんな奴が?
そんな気持ちで覗いてみると、驚きの人物の名が書かれていた。
「リンテウスとアキトだと!?」
(アキトって、さっきのイカれた人族かッ!?)
そう、そこには秋人の名と、リンテウスの名が書かれていた。
「あいつ……いつかやらかすとは思っていたが……まさかそれが今日だとは…………」
決闘戦の申し込み書を前に、男子生徒は茫然自失とした様子で立ち尽くしていた。
◆
「『幻夢結界』……?」
「そう。それのおかげで、あなたは今回の決闘戦で死ななくて済むってわけ。ちゃんと覚えといた方がいいと思うわ」
所変わって、秋人サイド。
秋人は今、決闘戦設営の係員である女子生徒から『幻夢結界』の仕組みについて説明されていた。
「平たく言うと……“そこで起きたことを全てなかったことにできる”っていう結界なの。本当ならあなたみたいな人族に使うなんて勿体無いからしないんだけど……。この国の姫様が使用許可出しちゃったからね、使わないわけにもいかないし……」
「へー」
なんだか凄そうな結界なのはわかったものの、どの辺が凄いのかは異世界歴が少ない秋人には理解できなかった。
そんな、世界でも有名な絵画の価値を一ミリも理解できていない貧乏人を見るような顔つきで女子生徒は睨みながら、説明を続ける。
「……はぁ。それで、ね?この結界内に入ったら文字通りのなんでもありの闘いを強いられることになるわ。もちろん、ウィリディス次期公爵も人族相手にそこまで本気は出さないと思うけど……それでも、危ない目にあうことだけは確かだわ」
「つまり?」
「あまり、オススメできないってことよ」
「ちゃんと理解しているのかしら」と女子生徒は、言葉を紡ぐ。
「それに、『幻夢結界』がいくら万能とはいえ、精神的なダメージが幾らかは残ってしまうの。それはだって、剣で斬られたり自分の心臓が潰される感覚を覚えたままなんですもの……当然といえば当然よね」
「んー?」
「……つまり、あなたが脳天から剣で真っ二つにでもされた日にはーーー」
「ーーー後遺症で、身体がほとんど動かせなくなる可能性もあるの」
「……」
「だから、ね?決闘戦はまたの機会にして今回はやめにした方がいいとわたしは思うんだけれど……」
「いや、やるけどね……俺は」
「……」
心配するように危険性を話す女子生徒の言をバッサリと切り捨て、きっぱりと秋人は宣言する。
秋人のその堂々とした姿に呆れたのか、口上が続かない女子生徒だったが……すぐに気を取り直して話を続ける。
「最後の忠告だわ。ウィリディス次期公爵は、レベル86の……この学院でもトップクラスの実力を持つ魔族よ。……それに対してあなたは?」
「22」
「でしょう?単純なレベル差だけでも相当な差があるのに……それにプラスで種族としての根本的なハンデもあるのよ?……悪いことは言わないわ、今からでもいいから引き返した方がいいわよ」
「忠告してくれたところ悪いけど、決闘戦はするよ。絶対に……」
「どうしても?」
「ああ、絶対」
「そう、じゃあ仕方ないわね。いってらっしゃい」
「うん、行ってきます」
そして、秋人は決闘戦が行われる特設フィールドへと足を踏み入れた。
◆
『さぁ、やってまいりましたぁ!決闘戦!!!今回の決闘戦は、特設フィールドで行うと言うこともあって随分と盛況ですね!?』
『そうね。まぁでも私の奴隷が出るんだし、当然といえば当然よね!』
『おおっと!?今回の出場者の一人、人族のアキト選手はヴェーチェル姫の奴隷なのですか!?』
『ええ、そうよ』
『ほぉー!!?これはこれは!なかなかに面白い情報が入ってきましたね!』
テンションの高い実況に、いつもより二割り増しの笑顔を見せるアイレ。
観客も実況席で話している司会の言葉にノリの良い笑い声を響かせる。
戦闘が何よりの娯楽である魔族たちにとって今回の決闘戦は、完全にお祭りと化していた。
「っと!隣、失礼するぜ?」
「……ん」
人類最弱と揶揄される人族の秋人と、学院最強の男と称されるリンテウス次期公爵の決闘戦は、今まで学院で行われてきた決闘戦の中でもトップクラスで盛り上がるものだったらしい。
体育館よりも大きいと思われるドーム状の観客席は、ほとんど満席状態であった。
魔族の気性も関係しているのか。
普段よりも二割り増しぐらいに暑い、と。
普段なら銀狼族である自分には近寄りもしないはずなのに今回に限っては二度にわたって接触してきた、ネックレスがトレードマークの軽薄な男子生徒を見上げながら、ウィルミはそう思った。
すると、ウィルミの表情でなんとなく彼女の心情を察したのか、男子生徒は若干焦ったように弁明をする。
「いやな?別に普段から避けようと思って避けてるわけじゃねぇのよ?これ、ほんと。マジ、マジだからなぁ!」
「……ん、わかった」
ウィルミは瞬時に目の前の男子生徒が面倒臭い類の人種だということを理解した。
しかし、ウィルミの言葉を自分の都合のいい方向に解釈した男子生徒は、ホッとした表情で胸を撫で下ろした。
「っかしまぁ……あそこまでの底ぬけのバカとは思わなかったぜ!……なぁ?」
「……ん?……ぁ、うん」
“底ぬけのバカ”。
そう言われて最初はピンとこなかったウィルミではあったが、男子生徒の指している方からして、秋人のことだと遅れて察する。
そして、察すると同時に顔を顰めた。
ウィルミとしては、秋人には身体の傷を治してもらった恩がある身だ。
だから、できれば秋人の意思を尊重する姿勢がいいと思ったし、ましてやその恩人をバカ呼ばわりされるのは、いくら温厚なウィルミとしても、あまり気分の良いものではない。
と、そう思って男子生徒の顔を見上げたが……。
「……くくっ、いい。イイなぁ、アキト……てめー、最高にイカしてるよぉ」
……どうやらこの男子生徒は、秋人のことを罵倒しているわけではないようだ。
口調が多少乱暴なだけで、実際は彼なりに褒めているつもりなのだろう。
(……バカに、してないなら………いいか、な?)
ウィルミは怒りを引っ込めて決闘戦に集中することにした。
毎回行われる決闘戦よりも観客が多いこともあってか、整備に少し時間を取られてしまったようだが……。
校内のアナウンスによって準備が整ったことが伝わった。
『それでは!みなさん、お待たせしました!ここにアキト対ウィリディス次期公爵の決闘戦を開始します!!!』
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」
鳴り響く大歓声。
どうやら掴みはバッチリのようだ。
司会も確かな手応えを感じて拡声器を握る。
『では、早速ルール説明!の前に……。え〜、申し遅れました、こちら実況のニーファと!』
『アキトの解説役として、私が来ているわ!!!』
『というわけで、特別ゲストのアキト選手の主人であり次期魔王候補のアイレ・ビオレータ・ヴェーチェル姫が参加なさっています!というわけで!野郎どもぉおお!失礼のないようにしろよぉ!!!』
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」
『……はい、じゃあ解説をお願いしますね、ヴェーチェル姫』
こいつら、ホントに理解してんのかなぁ〜、と野郎どもの野太い歓声を聞いてそう思うニーファだったが……。
あとはヴェーチェル姫に任せるしかない、と拡声器を彼女に渡す。
『え〜……というわけで、今回の決闘戦のルールを説明するわ!』
「「「「「………………」」」」」
アイレが話し始めると急に黙り込む、観客たち。
……魔族と雖も、ある程度のマナーはなっているようだった。
『今回は、『幻夢結界』を用いた特殊な決闘戦。だから、ルールはなんでもありよ!個人のありとあらゆる手段を用いて敵を殺した方が勝ち!そんなわけで、両者共に遠慮なく戦って頂戴!!!』
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」
アイレが場の空気を盛り上げるために声を張ると、それに合わせて観客たちも一斉に騒ぐ。
……よいしょもお手の物、といった様子だ。
ルールの説明を終えたアイレは、拡声器をニーファに返し実況席の椅子にもたれかかる。
『えー、では!長々と話すのもなんですので!早速始めます!『幻夢結界』発動!!!』
観客たちが焦れてきたな、と感じたニーファはさっさと決闘戦を始めるため、『幻夢結界』を発動させる。
すると、決闘戦上に大きな薄紫色の幕が出来た。
おそらくこれが『幻夢結界』なのだろう。
「「「「「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!」」」」」
もう一度、一際大きな歓声が鳴り響き、決闘戦はスタートした。
◆
「……先手を、譲ってやるよ」
さて、ちゃっちゃと攻める用意をしようかなぁ、と秋人が思っていた矢先に、藪から棒にリンテウスはそんなことを言ってきた。
「どゆこと?」
「……ふんっ、貴様、下等な種族の分際で我に勝つつもりなのだろう?ならば、その勝算が一体どんなものなのか見たくなってな……だから、貴様に先手を譲ってやると言っているのだ」
「そっか、ならありがたく貰うわ」
話が見えてこないが、どうもリンテウスは秋人の仕出かすことに興味があるようだ。
ならば、好きなだけ見させてやるよ。
と、そう考えて秋人は己の異能は発動させる。
「ーーー『一握りの希望』」
『トゥルルルルルッッッ!!!カシャンッ!ーーーダイヤの!エース!!!』
現れたのは一つの黄金色のコイン。
表裏には幾何学的な文様が描かれており、その文様がとても神秘的な印象をそのコインに与えていた。
秋人はそのコインを手のひらでクルクルと回し、やがてピンと親指で中空に弾き飛ばす。
「……?」
「後悔すんなよ、次期公爵閣下?」
コインを弾き飛ばした秋人の行動に疑念を抱いていたリンテウスに向けて、秋人は口元を歪めて言う。
「あれは、ちっとばかしやべぇぞ?ーーー『極星の破滅』」
「ーーーッ!?」
秋人が呟くと同時。
突如として巨大な岩石が空から墜ちて来たーーー
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