19.リンテウス・ルベル・ウィリディス
……ちょっと帰宅するのが遅かっただけなんだ。
ほんとほんと……マジで。
9月23日には投稿しようとしてたんだぜ……ほんと。
……次話は、もうちょっと余裕を持って投稿します。
3日後に投稿予定です。
2番目の、父は……よく俺と義妹を殴った。
何が原因でそうなったのかはわからないし、特に、俺もそのときにできた義妹も何か悪いことをしてはなかったと思う。
ただ、競馬に出かけては金を擦り、酒を飲んでは暴れ出す。
そんな父に、俺と義妹は恐れを抱いていたのは確かだった。
俺の母は、こんな奴の酒代を稼ぎに昼夜問わずに働きに行っていて家にはいなかったしで、こいつを止められる奴は誰一人としていなかった。
そんなある日ーーー
「くけけっ、そういえばオメー中々いい面してるよなぁ……ちょっと相手してくれよ〜、な?」
「い、いやぁだ!」
「くけけっ、痛いのは一瞬だって!な!?」
ーーー父は、義妹に手を出していた。
◆
「ーーーでは、2時間目は魔法史の時間です!」
「……ん」
「あ、ありがとう……」
「ーーー3時間目は、数学の時間です!皆さん、教科書27ページを開いて下さい!」
「……ん」
「ごめん、助かる……」
こうして、あっという間に午前中の授業が終了する。
午前の3時間全てにおいてウィルミから教科書を借りていた秋人は、若干の罪悪感を覚えながら無事に勉学を終える。
「(っーか、授業全部ティータ先生が担当してたんだけど……人手不足なのか?)」
まるで小学校の先生みたいだな、と思いながら、秋人は凝り固まった肩をほぐすように大きく伸びをする。
すると、隣でウィルミは急に席を立った。
「ん?ウィルミ、どこに行くんだ?」
「……午前の、授業終わったら、昼食の、時間」
「へぇ〜……」
「……午後は、実技だから……君も、早めに、食べた方が、良いよ?」
そう言ってウィルミはそのまま教室を出ようとする。
知り合いがいない状態で、何かと心細い秋人はウィルミの後をつける。
「……?なんで、ついて、くる?」
「いや〜、せっかく仲良くなったんだからさ〜……もっとお話ししようぜー」
なんて、間延びした口調で秋人は言う。
しかし、ウィルミは眉を八の字に顰めて秋人がついてくるのを断った。
「……わたし、と、いない方が……いい」
「なして?」
「……それはーーー」
辛そうに、静かに言おうとする彼女の言葉は、果たして……。
「ーーーそれは、こいつがリンテウスの奴隷だかさっ」
軽薄そうな男子生徒の言葉によって、塗りつぶされた。
「……っ」
「?」
ウィルミはその事実に顔を暗め、秋人はピンときてなさそうな間抜けヅラを見せた。
秋人の様子に事情が理解できていないと察した男子生徒は、なおも言い募る。
「おいおい、てめーどこの田舎モンだよぉ。もしかして、リンテウスって誰かわかってねぇの?」
「おう、全然わからんぞ。誰だそいつ?」
「くはっ!これは、めでたい人種もいたもんだなぁ……」
くははっ、と大口を開けて笑う彼の額にも黒い角が生えている。
おそらく、魔族だろう。
男子生徒は絶滅危惧種でも見るかのような眼差しを秋人に向けながら、言う。
「リンテウス・ルベル・ウィリディス……今、この学園で一番魔王に近い“男”!ホントに聞いたことねぇの!?」
「うん、初耳だな、そんな奴は」
「くはーっ!てめー、結構な大物じゃねえか!」
何が嬉しいのか、くははっ、と大笑いしながら秋人の背中をバンバンと叩く。
ステータス差が激しいおかげで、男子生徒にとっては軽いじゃれあいだとしても、秋人からすれば骨折ものの痛みだった。
「(気分はまさにライオンとじゃれあっている飼育さん、ってな)……ッ!」
「お?……おおっと、すまねえな。そういえば人間って結構脆かったんだっけ?悪りぃな!」
「いや、別にいいけどさ……」
だったら肩叩くのやめろよ、とは言えない秋人である。
話が脱線したな、と言って話を戻す。
「それでな?こいつがもうありえないぐらいに、こえー奴でよぉ〜。キレやすいしで、他の奴らも手がつけられねぇの、なんのってな!」
「へぇ〜、そんな奴が……でも、それとウィルミに関わるなっていう話と、何の関係があるんだ?」
「……ウィルミちゃん、すまねぇが……」
「…………ん」
意を決したように袖を捲るウィルミ。
一体腕がどうしたと言うのか?
そう思って秋人が目を向けるとーーー
「ーーーッ!?」
そこには、夥しいほどの火傷の痕があった。
「こ、これは……」
「……全部、リンテウスにやられたんだってよ」
「全部……?」
秋人がそう聞くと、ウィルミはこくりと頷く。
ウィルミの腕の火傷は、どうもその一箇所だけではなく、身体中の至るところにあるらしく、おかげで今のような比較的暖かい季節の中でも長袖でいないと出歩けないほどに酷いものらしい。
「……」
「こいつはなぁ、銀狼族っていう結構珍しい種族らしくてなぁ?獣人の中でも随分と高い魔法への耐性を持ってるらしい。……それで、魔法の実験にーーー」
「ーーーッ!!!」
ギリッ!と、秋人は口の端を噛み締めていた。
「(反吐の出る話だ!)」
脳内に2番目の父親の顔が浮かび上がる。
くははっ、と笑いながら義妹を強姦しようとしていた、奴の姿は……はっきり言って悪魔よりも悍ましいものに見えた。
「(そんな奴が、ここにも居るのか!)」
怒りと、殺意と……。
それとは別の何かによって構成された彼の表情は、控えめに言っても近付きたい人種の顔つきではなかった。
「おおっ……」
「…………ひっ」
……少なくとも、目の前の二人が怖気付く程度には。
「(おおっと、しまった……俺としたことが、スマイルの精神を忘れるとはーーー)」
後ずさった二人を見て、冷静な心を取り戻した秋人はすぐにアルカイックスマイルを浮かべる。
……が。
「(……うっ、なんか………)」
「(うへぇ……)」
「「(きもちわるい……)」」
一瞬で喜怒が入れ替わる瞬間を見た二人は、まるでできの悪いお面でも見ているような気分になった。
ーーー有り体に言えば、気持ち悪い、ということである。
そんな二人の反応に釈然としない思いを抱いたのは、当のアルカイックスマイルを浮かべた本人、秋人である。
「(えぇー……なんで、更に後ずさっちゃうの二人とも〜……少なくともさっきまでは楽しく会話してたよね!?)」
ジリジリと秋人が二人に近づくも、その分二人はジリジリと後退する。
……端から見ると、変な連中である。
ーーーそんな時だった。
「おい、何をしている下等種族」
ウィルミの主人が話しかけてきたのはーーー
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