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1.勇者様!どうか魔王を討滅してください!

週一回か二回ぐらいの投稿ペースです




妄想、というよりもほぼ走馬灯に近いものを見ていた七重秋人は、現状の把握のため隣で待っていた女子生徒に話しかける。


「そう言えば、棺?結局お姫様の話はどのくらい進んだんだ?なんか魔王とか言う人を倒せっていうのは聞こえたんだが……」


「……そこから?秋人、全然話聞いてなかったんだね」


呆れた視線を向ける女子生徒……黒宮棺。


七重秋人と同じく荒川学園所属、高校二年生。

ちなみに、秋人と同じクラスの二組である。

艶やかな黒髪をボブカットにしており、目鼻立ちが整っている大和撫子風の美少女だ。

しかし棺のドロドロとした真っ暗な目と目の下にできたクマが、彼女に陰鬱とした雰囲気を与えており、呪いの日本人形の様な不気味さがあった。

胸は同年代の中では大きい方だが、本人は「肩が凝る」という理由であまり好んではない。

秋人と同い年である。


そんな女子生徒、棺は秋人が人の話を聞かないのは今に始まった事ではないと考え、秋人に要点だけを抑えて説明した。


「まず、魔王というのは人間じゃない」


「へ?どっかのマフィアのボスとかじゃないのか?」


「違う。と言うか、話が進まないから黙ってて」


「……はい」


実は棺は説明するのがあまり好きではない。

そのため、話の途中に割って入られることを嫌う。

調子が狂うから。

秋人のチャチャを厳しい口調の一喝で黙らせると、棺は再び口を開ける。


「この世界……名前はアルンとか言ってたけど……ここはどうも人間だけの世界じゃない、みたい。エルフとかドワーフとか……。そんなのがたくさんいるんだって」


「……へぇ」


棺が真面目に説明している中、秋人は他種族が存命していると聞いてテンションが上がる。


「で、その種族の中に人間と敵対している種族……魔族というのがいるんだけど、その魔族の長のことを魔王って言うん……秋人、話聞いてる?」


「ん?もちろんもちろん。それで?その魔王がどうしたって?」


棺が懸命に説明をしている横で、内心の興奮を抑えられなくなった秋人が変な舞を披露していた。

そんな変態的な行動をしている秋人を白い目で見ながら棺は話を続ける。


「……とにかく、その魔王が人間に悪さして面倒いから勇者(僕たち)を読んだんだって」


「へぇ」


話ざっくり過ぎない?

少なくとも一時間近くは話していたお姫様が、まさかそんなざっくりとした説明ではないだろう。

そう思った秋人だったが、元々自分はそこまでこの世界事情が知りたいわけではなかったので、納得した風に相槌を打つ。

と言うか、秋人はむしろ他のことに目がいっていた。


(むふふ、ここって異世界なんだろう?ってことはさ!もしかしてチートハーレムとかできちゃったりするんじゃね!?そして、異種族の娘たちあんなことやこんなこと……)


むふふ、と忍笑いをする秋人。

控えめに言って気持ち悪い。

棺はいつもの妄想癖が……とは思ったものの、こうなった秋人は何を言っても無駄なことが長年の経験からわかっているので、何も口にしない。

とりあえずはクラスメイトの元へ向かうべきだろう。

そう考えた棺は秋人を一発殴ってクラスメイトたちが入っていった部屋へと向かう。


「痛っ!いきなり何するんスか!?」


「そろそろ行かないと、クラスの皆を本当に見失う」


「それはマズイ!早く行かなければ!」


秋人と棺は他のクラスメイトたちに少し遅れる形で部屋へと入っていった。





部屋へと入った2人。

そこではお姫様による演劇が行われていた。


「という事なのです!どうか皆さん、私たちに魔王討滅の力を貸して下さい!」


「「「うぉおおおおっ!!!」」」


熱狂的な空間。

まるでアイドルのコンサートに集まったオタクの様な雰囲気で、クラスメイトたちはお姫様の言葉に答える。


「……なに、コレ?」


そんな狂気的な光景を前にして棺は、控えめに言ってもドン引きしていた。


(なんかこれはマズイ、気がする……。とりあえず、秋人に相談しないと)


異常、そんな言葉では生温いほどの熱狂に唐突に不安を感じた棺は隣にいる秋人を見つめる。

秋人はーーー


「私たちのすべき事は!?」


「「「魔王討滅!!!」」」


「魔王討滅!」


ーーー一緒になって叫んでいた。

その姿に無性に腹が立った棺。

とりあえずとばかりに一発頭を殴る。


「ってぇ!何すんだよ!?」


「黙って。それよりも、何か変じゃない?」


「は?俺は別に調子なんか悪くないけど?」


いや、別に秋人の事を言っている訳じゃないんだけど……。

と、惚ける秋人を睨みつける棺。

と言うか秋人はいつも変だと棺は思った。

しかし今はそんな事を言っている場合ではない。

棺は気を取り直してクラスメイトたちの様子がおかしい事を指摘する。


「そうじゃない。と言うか、秋人なら分かってるはず。皆、何か変じゃない?」


不安気な様子で問い詰める棺。

そんな棺とは対照的にあっけらかんとした様子で秋人は答える。


「ああ、だって精神系の異能使ってるみたいだもんなぁ。そりゃ興奮するだろうさ」


「そ、それってーーーッ!」


かなりマズイ状況なのではないか。

そう思った棺だが、秋人の意見は棺の意見とは真逆だった。


「大丈夫大丈夫。心配ないさ。今はこいつらも頭クルクルパーになってるけどそのうち冷静になるさ……。異能自体もそんなに強力なモンじゃないし、案外効いてない一般人も居るんじゃないか?」


「でも、もし何かあったら……?」


「そん時は俺が動くさ。大丈夫だろ。な?……おっと何かお姫様が変なことし始めたぞ?」


秋人がお姫様に視線を向けたので、渋々といった感じで棺もお姫様に視線を向ける。

そこにはお姫様が透明な箱を取り出していた。


「これはステータスと呼ばれる勇者様方の能力値を測ることができる器具です!今からこれでステータスチェックを行いますので、皆さんは一列に並んで下さい!」


お姫様の「ステータスチェック」という言葉にニヤリと口角を上げる秋人。


(何か面白くなってきたなぁ)


そう感じた秋人であった。







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