18.ショートホームルーム
次話は、3日後です。
「今日からこのクラスに編入することになりました、アキトです。魔国に滞在するのは初めてで、学校生活にもあまり慣れていないので色々と至らぬ点はあるとは思いますが、寛容な態度を示していただけると幸いです」
ショートホームルーム。
秋人は黒板の前に立ち、名前を書きながらそう名乗る。
一応秋人にも礼儀作法やマナーを知らないわけではないので、転校初日からやらかさないようにしようと慎重に自己紹介を済ませた。
「はーい!と言うわけで、今日から彼もこのクラスの仲間になります!皆さんも仲良くしてあげて下さいね?」
ハァーイ!と色んな音域が響く。
教室にいる生徒たちは、秋人と似たような年代の者もいれば、アイレのような小学生然とした者もいる。
中には老人としか思えないような姿の者もいる。
「(こいつら、ホントに俺と同年代なのか?)」
教室を隅から隅まで眺めながら、秋人はそう思った。
しかし、例え彼らが同年代ではなかったとしても自分には何ら関係のない話ではあるので、そこまで目くじらをたてるようなことでもないな、と考えすぐさま思考を切り替える。
「んー、とですね〜。アキトくんの席は〜……あっ!ちょうど窓側の一番後ろの席があいてますね!そこにしましょう!アキトくん、その席について下さい」
「わかりました」
ポワポワ〜、とした雰囲気とは裏腹に、ティータが怒ると怖いことは先ほどの失態から知っているので、秋人は何一つとして無駄口を叩くことなく、指示に従う。
「はい!では、今から早速授業を開始したいと思います!1時間目は、魔国史ですね!では昨日やったところから始めますので、皆さんも教材の準備をお願いしまーす〜」
間延びした声音でティータは告げる。
それぞれが教材の準備を始める。
魔国の生徒は案外勉強熱心なのかもしれない。
私語はあまり聞こえない。
秋人もその雰囲気に乗っかる形で教科書を開こうとして気づく。
「(ヤッベェ〜!俺、今日初めてここにきたから教材の準備何もしてなかったんだ!どうしよ!?)」
そう、彼には教材が何一つとして揃ってなかったのだ。
まあ、もともと秋人がこの学校に編入することになったのも昨日いきなり決められたのだ。
制服は何とか間に合ったとしても、教材の準備ができていないのは致し方ないといえよう。
だから、秋人もそこは気にせずに「すみませーん、教科書ないんで隣の人に見してもらっても良いっすかね!?」とティータに申し出れば良いのだが……。
「(こんな優等生ばっかの教室じゃあ、なんか言い出し辛いなぁ……)」
と、妙な人見知りを見せる。
そこで、秋人の様子がおかしいことにティータが気付いた。
「あれ?そういえばアキトくんはまだ、教科書等は渡されていませんでしたっけ?」
「えーと……お恥ずかしながら………」
「いえいえ、それならそうと言ってください。別に何か悪さをしたわけでもないんですから〜。言ってくださればちゃんと対応しますので〜」
「……ありがとうございます」
「んー、では、今日は隣の方にでも見せていただいてください。ウィルミちゃん、アキトくんに教科書を見せてあげて下さい」
「……はい」
ティータは手際よく采配を済ませ、授業の準備を再開した。
秋人はティータに言われた通りに、隣の席の娘に見せてもらおう横を向く。
白銀の少女。
それが、その女子生徒の印象だった。
綺麗な銀髪と銀色の目。
目鼻立の整った顔つき。
獣人らしく、狼のような形をした耳が頭の上にぴょこんと生えており、その耳もあってか全体的に彼女の年齢は幼く見える。
秋人が何も言葉を発さずに少女ーーーウィルミを凝視していたことが、不思議だったのか、若干の不可思議をその銀色の目に宿しながら言った。
「……ん、私、ウィルミ。……よろしく」
「あっ、うん、よろしく……」
「……ん」
そう言うと、机をくっ付けて教科書を真ん中に置いた。
どうやら自己紹介をこれで終了のようだ。
「はーい!皆さん、準備は整いましたか?それでは1時間目の授業を開始します!」
こうして、異世界初めての授業が幕を開けた。
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