16.進化する銃弾《エボリューション・ショット》
すみません……投稿は、9月17日に延期します。
「(ん……?あれは……ヴェーチェル姫と……?後、あの男子生徒は誰だ?)」
普段から鍛錬を静かな場所で行いたいスカラ・アクィルス・リトス(若干人見知り気味)は、頭に疑問符を浮かべる。
この国の姫君と誰とも知れない男子生徒(しかも人間)が模擬戦をしているのだ、不可解に思うのも仕方がないと言えよう。
「(それにしても……やけに戦闘痕が激しいなぁ……一体、何をやらかしたってんだ?)」
スカラの目には、無残にも捲り上がってボロボロになっているし、まるでマグマでも通ったのかというぐらいに何かが溶けた跡が見えるし……。
そんなわけで少なくとも只事ではないことだけは窺える。
「(というよりも、これは本当に模擬戦なのか?もしかしたら、普通に殺し合いをしているんじゃ……)」
アイレと秋人の表情はここからは遠すぎて見ることができない。
故に彼らがどんな気持ちで戦っているのかなんてわからないが……。
それでもこの二人の戦闘行為が危険であることには変わりがない。
「(どうする……?止めるか?……でもなぁ)」
止めようとすれば自分もただでは済まないだろう。
アイレは身体中から竜巻と見紛うような風を全身に吹き出して、秋人に突進しており、秋人もそれに対応するように人間大の大きさの火球を黒い筒のような物から出していた。
「(ヴェーチェル姫が展開している魔技は……嵐装。ほぼ上級者の武技じゃないか!?しかも何だ、あの男子生徒の黒い筒みたいなやつ!ノータイムで中級レベルの魔法を連発するなんて、普通じゃありえないぞ!?もしかして、人族の固有の恩恵ってやつか?)」
スカラはビビリだ。
勝算のない戦いはしないし、もちろん自分の身に危険が及ぶような行為は絶対にしない。
強さこそが全て、と豪語する傲慢気質な魔族の中では、大分異質な存在と言えるだろう。
だからこそ友達もこの年になっても一人も出来ていないのだが……。
「(でも、これが俺の性分なんだよ!しょうがないだろ!?……とりあえずは、土の防壁の仕込みが終わってから突っ込むべきか……?)」
なんてことを考えながらチマチマと魔法の準備をしていると、突然二人の決闘をしている方角から怒鳴り声が聞こえる。
「ーーー、ーーー、ーーーーーー!?」
何を言ってるかまでは聞こえてはこないが……。
一人の教師が二人を叱りつけているようだ。
二人が地面に正座していることから、この大乱闘が終わりを迎えたことだけは何となくわかった。
「(よかった……俺が介入する前におさまって…………)」
相変わらずのチキンぶりを発揮しながらも、説教に巻き込まれないように彼はその場をそっと離れていった。
◆
「もう!いくらここが旧校舎区域で人が居ないとはいえ!こんな場所でそんな強力な武技を使うなんて……!普通じゃ考えられません!姫様は、もう少し良識と節度を持った行動をですねーーー」
ガミガミと怒鳴りつける女性教師らしき人物。
その元凶となっているアイレは、隣でブスッとした顔で地面に膝をついていた。
「(教師とはいえ、一国の姫君を地面につかせるなんて……)」
地球では考えられないことだ、と考えると同時に、この世界がそれほど実力と礼節によってできた厳格な世界であるのだな、と秋人は改めて認識した。
「ーーーと、言うわけなんです!わかりました?姫様」
「わかった、わかったわ!あれでしょ、もうちょっと大人しくしろってことでしょ?」
「なっーーー!?全然、人の話聞いてないじゃないですか!」
「はぁ!?じゃあ、なんて言ってたのよ!?」
「ですから……もっと良識と節度を持った行動をしてほしいと、言っているんです!」
「だからちょっとだけ静かにしておけばいいんでしょ?」
「いえいえ!姫様はわかっていないのかもしれませんけど、貴方の“静かにする”と私たちの“静かにする”は全然違うんですよ!大体、なんでこんなところで模擬戦なんかしてたんですか!?」
「それは……」
口籠り、アイレは秋人を見つめる。
そこで初めて女性教師は秋人の存在に気付き、視線を向ける。
「あ!もしかして、彼ですか?今日、ここに編入することになった人って……」
「ええ、それでちょっとこいつがどのくらい戦えるかを調べたくて……ちょっと模擬戦しようって話になったの」
「……ちょっと?」
アイレの言い分に何か不満を抱いている雰囲気を出していた女性教師だったが、今はそれどころではないといった感じで、秋人に自己紹介を始めた。
「私が奴隷科の担当教師をしているティータです。アキト・ナナエさんですね?話には聞いています。……あまり愉快なことにはならないと思いますが……一応、担任としてよろしくお願いします」
「……はぁ、まあ……よろしくお願いします」
なんか一波乱ありそうな予感がする秋人だった。
【進化する銃弾】《エボリューション・ショット》のちょっとした説明。
カードナンバー6。
所謂マスケット銃の様な形の銃器。
魔力によって次弾が込められる。
6種類の特殊弾の使用が可能で、1種類の弾丸に一回の使用が可能。
6種類全ての特殊弾を使い切ると、もとの【一握りの希望】《ギャンブル・カード》に戻る。
特殊弾の種類は以下の通り。
加速弾:通常より速い弾が出せる。
模倣弾:相手の技を一個だけ模倣して打ち出す。条件として相手の技を視認すること。
誘導弾:弾丸の射線をある程度操作することができる。
鈍足弾:相手に当たった場合に限り、相手の敏捷性を低下させる。具体的な効果値は60パーセント減速。
連射弾:ガトリングのように何発も連続で打ち出すことができる。理論上は主人公の魔力が続く限り出すことができる。
破壊弾:生物全般に全くの効果を及ぼさない代わりに、どんな物も必ず破壊することができる。
以上、今回は上手く話に載せることが出来なかったので、後書きから秋人の能力解説をしました。
次からはもうちょっとうまい能力の紹介ができるようにしたいです。
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