15.学校に行こう!
はい、というわけで魔族学園編スタートです!
本当は、学園編書くつもりじゃなかったんですけど……。
いまいち秋人くんが強いんだよー、ということが書けてなかった気がするので、この学園編でどんどん無双させたいと思います。
……え?ヒロインのヤンデレ?
すいません、それはまだ先のことになりそうです。
楽しみにしている方には本当に申し訳ありません。
毎度のことながら、次話は3日後です。
「アキト、明日学校行くわよ!」
何の脈絡もなく、急にそんなことを話された。
「へ?学校?」
「そう!学校!……それとも、なに?あんた、学校も知らないの?」
「いや、そういう意味で聞き返しているわけじゃねぇんだけど……」
場所は魔国の王城。
秋人はそこでアイレの奴隷として食事を戴いている最中であった。
普通、奴隷ってもっと粗末な食べ物を食わされるもんなんじゃないのか?と思いながらも、食事が美味しいことは秋人にとっては嬉しいことなので、黙々と食べている途中で、いきなりアイレはそう宣った。
「なんでいきなり学校?……というか、奴隷も行かなきゃ駄目なのか、それ?」
「……魔族にとって自身の従えている奴隷の強さとは、そのまま己の評価へと繋がってくる。故に、妾たち魔族からしても主のような者を鍛えるため、学校に通わせたりするわけなのじゃ」
秋人の何気ない質問に答えたのは、彼女の母、ティフォン・ビオレータ・ヴェーチェルだった。
「実際、主にも中々に豪華な食事を与えておろう?これは主のコンディションを整えるための配慮、といったやつじゃ。……それに、どちらにせよ奴隷は主の命には絶対服従なのじゃ。主がいくら抵抗しようとも無意味な話じゃ」
「む……確かに」
怪訝そうな顔をしていた秋人であったが、確かにティフォンの言う通り、自分は奴隷の身。
どちらにせよ言うことを聞かないといけないことには変わりないので、そう身構えても意味がないか。
と、開き直ってまた食事に集中することにした。
「主なぁ……(普通は、奴隷になったのならばそれ相応の態度をするというのに……この男ときたら)」
そんな秋人の切り替えの速さにティフォン呆れている様子。
しかし、まぁこういう態度を自分の娘は気に入ったのだろう。
現にアイレは、今もご満悦な様子で秋人の食事風景を眺めている。
「はぁ……(まあ、アイレが良いのならば良いのじゃがなぁ……)」
だが、ティフォンとしても少し気掛かりな点があった。
それは妙にアイレの態度が秋人に対して馴れ馴れしいことだった。
これでは、従僕……というよりも、友達の様ではないか?
と、ティフォンが心配するほどに。
「アキト、あの変な技他にも種類があんの?」
「んお?まぁな……武器の形状としては、剣、靴、槌、銃とか、色々バリエーションはあるけど……なに?見たいのか?」
「うん、ちょっと気になってる!」
「そうか、じゃあ今度見せてやるよ」
「うん、楽しみにしてるわ!」
「(今も、こんなに気軽に会話をしておるしなぁ……)」
ここは一発、魔王として魔族のとるべき態度というやつを指導してやる必要があるか?
と、アイレの方を見やるが……。
「ふふっ……」
「……(まぁ、しばらくは良かろう)」
娘の穏やかな表情を見て、ティフォンはそう思った。
◆
翌日。
奴隷の寝床はボロ小屋のイメージがあった秋人だったが、むしろ日本での自分の住居よりも良い所だったので、なんだか釈然としない者を感じながら支給された制服に着替えた。
「うん……違和感が半端じゃないな」
青色のシャツの上に紫色のジャケットの様な物を羽織った出で立ち。
下は青、というよりも紺色のようなズボンを履いており、全体的な見た目が日本の制服に似通っているがために、余計に違和感を感じさせる。
どこのイタイアニメキャラだよ……と、内心で溜息を吐きながら青色のシャツの上に白色のネクタイを締める。
似合ってなくはない、的な?
黒髪黒目の秋人には、あまり暗色は似合わなそうな気もしなくはないが……。
全体的に纏っている彼のオーラからして、草臥れたサラリーマンの様な感じがして、これはこれで似合っている。
本人としては、陰鬱な雰囲気が出ている気がしてあまり嬉しくはないのだが……。
と、秋人が立ち姿を鏡で確認していると、アイレから扉越しに声がかかった。
「アキトー!準備できた!?できたならさっさと行くわよ!」
「はいはい、ただいまー!」
秋人は鏡から目を離して扉を開ける。
するとーーー
「どう?」
ーーーそこには、アイドルの様なポーズで自身の制服姿を見せつけてくるアイレの姿があった。
「……どうって?」
「あんた、ねえ!感想よ、感想!『うわー!!!めっちゃカワイイ!』とか『ヤバい、めっちゃ興奮する!』とか『グヘヘ……お嬢さん、ちょっと僕とイイコトしませんか?』とか、あるでしょうが!!!」
「……そうっすか」
秋人的には、最初の感想はともかく残り二つの感想は、アウトな気がした。
というよりも、最後の一つは完全に性犯罪者のソレである。
「(えーと、とりあえず褒めれば良いんだよな?)」
しかしまぁ、昨夜の食事を用意したのも寝床を用意してくれたのも彼女(の母親)なのだ。
少しは主の機嫌をとった方が良いだろう、と。
そう考えて改めてアイレの制服姿を見る。
日本でいう所のブレザーの様なタイプで、上着のボタンは全て開放して青色のシャツが見える様にしてある。
上着とシャツはほとんど同じ配色で、秋人としては何故そこまで青色に拘るんだろう、と少し不思議に思ってしまう。
スカートは青と白のチェック模様で、丈は大分短い。
膝下まで伸ばした紺色の靴下が妙に艶かしい。
首元の白色の蝶ネクタイも彼女をちょっと色っぽく見せるのに一役買っていると言えよう。
しかし、どれだけ着飾っていても彼女の幼さを完全に払拭できるわけではない。
何だか制服を着ているというよりも、制服に着せられている感じだな……というのが、秋人の第一印象であった。
まあ平たく言えば、小学生が背伸びしてちょっとメイクしてみた、みたいな感じだろうか?
とはいえ、それを正直に口に出すほど秋人も愚かではない。
ここは何か魅力的だと感じた所を褒め称えた方が良いだろう、とそう考えて秋人は口を開く。
「(色っぽいのは……脚、かな?)あー、ええっと……そう、だな。ちょっと、アイレの脚が魅惑的過ぎてクラッときた……」
うーん、この発言ってやっぱりただの変態なんじゃ……と、そう思いながらアイレの反応を伺うと。
「ふ、ふーん……なに?あ、あんた、脚フェチだったのっ?」
「(いや、別にそういうわけじゃ……)ま、まぁね」
少し赤面した風のアイレに言われ、内心では否定したい秋人ではあったが、「じゃあ、なんで脚を褒めたのよ?」と聞かれては、なにも答えられないので、仕方なく肯定する。
気分は痴漢をしていないのに、「私は痴漢をしました」と言わされる通勤中のサラリーマンだ。
「へ、へぇ〜〜……あ、あんた、なんだかんだ言って、やっぱり変態だったんじゃない!」
「ひえ!す、すいません!」
やっぱりこの発言はマズかったか!?
と、思わず目を瞑るも、特に殴られる様子はなく……。
「なにしてんのっ?はやく行くわよッ!」
急かされる様にして、手を引っ張られるだけだった。
◆
「今更で悪いけど、一応この学校の説明しとくわね?」
朝食を終え学園に行く道中、つまりはアイレの頬の赤みが引いてきた頃、本当に今更な説明をアイレがし始めた。
「この学校は、王立【ビオレータ】学園っていうこの国で最も大きい学校よ。9年制で、それぞれ3年ごとに初等部、中等部、高等部に区切られてるわ」
「へー」
適当な所感だが、初等部が小学生、中等部が中学生、高等部が高校生みたいなものだろう、と秋人は考えた。
「……(もし、俺がアイレと一緒のクラスに入るとしたら、俺は初等部に行かないと行けないのか……。この歳で、小学生の中に混ざるって結構辛いな)」
「それで、あんたは今日から私と同じ高等部に通ってもらうから」
「えっ!?(こいつ、この体型で高校生!?)」
「むっ……なによ、なんか文句でもあんの?」
秋人の驚愕に失礼な視線を感じたアイレが、威圧的に問う。
「(ひえええええ……こいつ、怖いよ!)べ、別に……な、なんでもないっすよ?」
「……そう。なら、良いけど……」
言葉が噛みまくっているのが気にくわないが……。
今回ばかりは許してやるか、とアイレは威圧を解いた。
「ふぅ……(こいつに体型を思わせるようなセリフは禁句だな)」
気をつけよう、と秋人は心に刻んだ。
学園の敷地内に入ると、既に生徒は登校し始めており、中には運動場らしき庭で鍛錬に励んでいる者をチラホラと見かける。
「ほへー(こういうところは、なんかファンタジーっぽいよなぁ)」
制服姿で剣やら槍やらを振り回している少年少女の姿に、秋人は少し感嘆した風の溜息を漏らす。
「ん?なに、あんた同年代があんなに集まってるのが珍しいの?」
しかし、アイレは秋人のその姿をそう捉えたようだ。
いや、確かに秋人の態度は見ようによってはそう見えなくもないので、言うほどおかしなことを言ってるわけではないが……。
秋人はなんとも答えられないので、適当に誤魔化すことにした。
「んー、まぁ、そんなところ……」
「なに、それ?煮え切らないわね。まぁ、いいわ。どうせこれからたくさんこういう光景は見ることになるんだから」
暗にテメェもここに通うんだからな、覚悟しろよ?と言われている気分になってちょっとげんなりする秋人だったが、気を持ち直してアイレについていく。
アイレは、運動場はもちろんの事、学校の玄関口であろうところも通り過ぎていく、やがて全く人気のない広場へと歩みを進めた。
「(一体、どこに行く気なんだ?もうここら辺には生徒の影も形も見当たらないんだけど……?)なぁ、どこに行く気なんだよ?」
「んー?旧校舎の裏庭よ?」
なんでそんなこと聞くの?と言わんばかりの表情で答えるアイレ。
しかし、場所を聞いただけでは目的がわからない。
仕方がないので直接的に目的を聞くことに。
「何しに行くんだ?」
「昨日、言ったじゃない?あんたの能力見せてもらうって!」
「あー……」
そういえばそんなこと言ったなー、と今になって思い出す秋人。
「でしょ?だから私たちが戦っても大丈夫そうな場所に行ってるの。わかったら、黙って付いてきなさい」
「ういっす」
そう言って秋人はアイレの後をついていった。
◆
「ふぅ〜……ここなら、まぁ大丈夫でしょ」
そう言ってアイレが足を止めたのは、校舎から歩いて30分ぐらいしたところだ。
あたりには剥き出しの地面があるだけで、草木すらほとんど生えていない、更地のような所。
確かにここなら誰にも迷惑をかけることはないだろう。
そう思って秋人が『一握りの希望』を顕現させると、それに伴ってアイレがファイティングポーズを取った。
「何してんの?」
「何って……これから、模擬戦するんだから、私だって構えるわよ」
「はあ!?模擬戦すんの!?」
「するに決まってんじゃん!ある程度生命の危機に追いやられないと、あんただって本気出せないでしょ?」
「いやいや、そんなことないからッ!」
秋人が全力で否定するものの、既にアイレの戦闘態勢は整ってしまっているようだ。
肌を刺すような魔力の渦が彼女から発せられている。
「じゃあ、私本気で行くから……死なないでね?」
バカヤロー!そんな言うんだったら最初から本気なんて出すんじゃねえよ!!!
と、そう叫びたかった秋人だったが、アイレの表情を見るに、それはありえない話だろう。
「(はぁあ……ったく、ここに来てから俺死にかけてばっかりじゃん)」
『トゥルルルルルッッッ!!!カシャンッ!ーーースペードの!エース!!!』
アイレの蹴りが秋人の元に到達するのと、秋人の能力が発動するのはほぼ同時だった。
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