14.奴隷契約
うーん……すいません、何だか今回も短めです。
次話こそは必ず……ッ!
次話も3日後です。
怒りは、ある程度おさまったようだ。
と、右腕の具合を確かめながら秋人はそう思った。
彼はもともと長い間一つの感情に縛られるタイプではないため、今回のようにここまで怒りを持続できる方が稀だと言えただろう。
「はぁ……ちょっとやり過ぎちゃったかなぁ……?」
腕の具合がそれほど悪くないことを確認した秋人は、憂鬱そうにため息を吐く。
当初の予定では、決闘の時間をある程度長めながら楽しくバトルする予定だったのだが……。
バルドのあまりにもあんまりな仕打ちに、ついカッとなってやってしまったのだ。
全力で遊びを楽しみたい秋人としては、先ほどの戦いはあまり気持ちのいいものではなかったのだろう。
「アキト様ですね?貴方の主人が奴隷契約更新のため、お待ちになっています。すぐに移動をお願いします」
秋人が陰鬱な雰囲気を醸し出していると、先ほどの殺気が消え去っていることを理解したここの係員が、すぐさま秋人をツインテ少女のもとへ連れ出そうとする。
「(ああ、そういえば俺、今奴隷っていう立場だったっけ?)……わかりました。場所は……?」
「私が案内します。ついてきてください」
自分の今の立場を思い出した秋人は、係員の指示に素直に従い、闘技場を後にする。
今度は楽しいことが起こると良いなぁ……なんて、考えながら。
◆
「遅い!!!何やってたのよ!あんた!?」
秋人が闘技場の出口に着くと、そこには仁王立ちがやけに様になっているツインテ少女と、その母親であろう紫髪の女性、そして麻のボロ布を纏った男性が待っていた。
秋人は、係員が呼び出しに来てからすぐに向かったつもりだったが、どうやら彼女的にはそれでもまだ遅かったらしい。
「(こういう奴は何言っても話きかねぇからなぁ……)すいません……ちょっと、色々あって遅れました」
秋人の経験則からして、こういう手合いは何を言っても無駄だと思ったので、素直に頭を下げて謝る。
そんな秋人の態度に満足したらしいツインテ少女は、秋人の右腕を掴んでボロ布の男性の前に引っ張るり出した。
「〜〜〜ッ!」
「あんた、今から正式な奴隷契約結んでもらうから。ほら!はやく名前言って!」
「……アキト・ナナエ」
大体そういう契約書って本人がサインしないとダメなんじゃないの?とは思いながらも男性に名を名乗る。
男性は、秋人の名前を用紙に書き込んだ。
「主人はどちらに登録なさいますか?」
「もちろん、私よ!」
「そうですか……では、お名前をお願いします」
「アイレ・ビオレータ・ヴェーチェル!」
「わかりました。……アイレ・ビオレータ・ヴェーチェルを主人とし、アキト・ナナエは隷属す。ここに奴隷契約は、相成った。」
男が不思議な文言を紡ぐと、用紙が黄色く光り、そして光がおさまると秋人の首には黒い輪っかが取り付けられていた。
「(はあッ!?なんじゃこりゃ!?)」
「奴隷の首輪はつけました。一応、私から主人の命令なしに他者を傷つけることの禁止、及び脱走の禁止を命じていますが……他にも何か条件付けをしたい場合は、首輪に触れて宣言なさると良いでしょう。これで、奴隷契約は以上となります。節度を持って正しい奴隷の使い方をお願いします」
そう言って、男は去って行った。
「(いやいや……正しい奴隷の使い方って何だよ?奴隷とか使っている時点で倫理的にアウトだっつの!)」
「ふふっ、これであんたは名実共に私の奴隷よっ!嬉しい?」
ツインテ少女……否、アイレは言葉上は疑問系にしているが、目にははっきりと『嬉しいと言わなければ殺す』という殺意がありありと浮かび上がっていた。
その殺意を察した秋人は、内心辟易としながらもコクコクと頷く。
「そう!なら良かったわ!」
「(全然、何も良くないんですけど……)」
そんな微笑ましい(?)秋人とアイレの会話が終わったのを見計らって、アイレの母親は声をかける。
「うむ……主にもやっと奴隷ができたところで、そろそろ帰らぬか?妾は、あまりここの空気が好きではなくてのぉ……」
「そうね……私も汗臭いとこあんま好きじゃないし?ちゃっちゃと城に帰るとしましょうか?ね?アキト?」
「……そうっすね」
こうして秋人は城へと強制的に連行されて行った。
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