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11.怒り

次話は3日後に投稿します。



「アキトさん、貴方のステータスカードの登録が終了しました。お受け取りください」


係員に言われ、秋人は闘技場内に向けていた視線をカードに向ける。


「ステータスカードに魔力を通していただければ、貴方のステータス値が表示されますので、コンディションなどを整える際などにお使いください」


「あ、はい……わかりました」


「ステータスカードの登録が終了いたしましたので、いつでも決闘(バトル・オリンピア)への参加が認められます。いつになさいますか?」


「うーん……(特にここにいてやることもないし、早くバルドさんに会いたいしなぁ。次で良いか)バルドさんの次で、お願いします」


「装備の確認や武器の使用運転などを済ませていらっしゃらないようですが……宜しいのですか?」


暗にテメーこのままじゃ黒牙豹ブラックサーベルタイガーの餌になるのが落ちたぞ、と言わんばかりの表情で尋ねる係員に、秋人はもう一度強く頷く。


「はい、大丈夫です」


「(ええー!?ホントに死んじゃいますよ!?良いんですか!良いんですね!?知りませんからね!?)……わかりました。では、司会の方に伝えてきますので、少々お待ちください」


係員は内心の葛藤を押し込めて司会に報告をしに行った。

暇になったしバルドさんの決闘でも見に行こうかな、とそう考えて闘技場の控え室辺りを散策していると、2人の魔族が会話をしていたところに出くわした。


「大丈夫なんですか?こんな無責任な約束しちゃって」


「ふん、どんなに頑張っても奴では生き残ることもままならんわ。……問題ないだろうよ」


「(ん?何の話だ?)」


「しかし……あのバルドっていう男も中々にしぶといですからね。ほら、今ので3分が経過したよ。結構、やばいんじゃないの?」


「チッ……そろそろ、殺しとくか?おい!あいつを殺れ!」


片方の魔族がそう怒鳴ると、急に黒牙豹ブラックサーベルタイガーの動きが良くなった。


「え?何したの?」


秋人の疑問を代弁するかのように、もう片方の魔族が尋ねる。

すると、指示を出した魔族は醜悪な笑みを浮かべながら答えた。


「クハハハッ!もともと黒牙豹ブラックサーベルタイガーには強化剤を施していてなぁ。私が合図を出せば瞬時に身体能力を高められるように調教しておいたのだ」


「(なっ!?それってーーー)」


「ーーー元からあいつを生かす気なんてなかったわ。奴は口を開けば妻よ娘よ、煩かったのでなぁ……清々するというものだ」


「ーーーッ!」


無意識のうちに秋人は歯を食いしばっていた。

そして、手には一握りの希望(ギャンブル・カード)が握られていた。


「おうおう、あの状態でもよく逃げるわなぁ。おっと!?そこに逃げたらーーーあーあ、足が一本取られちまったなぁ?」


上がる歓声の声量と、魔族の言葉で見なくてもバルドの状態が芳しくないのは想像に難くない。

秋人は内からこみ上げてくるマグマのようなドロドロとした何かを押さえつけながらも、能力を発動する。


『トゥルルルルルッッッ!!!カシャンッ!ーーーダイヤの!9!!!』


発動と同時に秋人の両手には鉄製のガントレットが装着されていた。


ーーーカチンッ!


鉄と鉄がぶつかり合うような音と共に、ガントレットは茶色に発光し始める。

その間も、魔族の不快な声が聞こえてくる。


「クハハッ!見ろよ!あいつ、もう右腕しか残ってねぇぞ!?」


「わかりました、わかりましたから……あんまり近寄らないでください」


場内には血だらけになりながらも必死に黒牙豹ブラックサーベルタイガーから距離をとろうともがくバルドの姿が……。

後もう少しで5分だ、耐えてくれ!バルドさん。


「ふんッ、もう十分だな!やれ!黒牙豹ブラックサーベルタイガー!!!」


「ガッ!?」


魔族が叫ぶと同時に、バルドの小さな呻き声が響く。

数瞬後、観客席から地面が揺れるほどの大きな歓声が上がった。

狂ってる……こいつらは、狂ってる!

秋人の開ききった瞳孔は、バルドの死体を捉えていた。


『One Charge!』


「はいはい!退いてくださいねー!すぐに次の決闘が始まりますのでー!」


ドガッ!と、まるでゴミか何かを廃棄するかのようにバルドの死体をぞんざいに投げ捨てる。


『Two Charge!』


「ワハハッ!やはり今回の奴隷は五分も保たずに死んでしまったわい!これでわしの勝ちじゃ!」


「ちくしょう!後、1分ぐらいはもつと思ってたのに!何だよ、あの奴隷!使えねぇな、まったく!」


『Three Charge!……Four Charge!』


「今回の奴隷は微妙だったザマス。何だか匂いもキツイし、見た目もブサイクだしで……見るにたえない男だったザマス!」


「ホント、それなー!あたしなんか途中から寝てたよー……キモくてー!」


『Five Charge!…………Six Charge!』


観客の声、係員の態度……クソ魔族の下卑た笑い声。

その全てが秋人の不快指数を上昇させ、怒りを感じさせる。

ガントレットの色合いはドンドン濃くなり、今では焦げ茶色に染まっている。

しかし、未だに魔族共の声は止まらない。

それが秋人の癪に触る。


ーーー人が、死んだ。

人が死んだんだぞ?

なのに、何だこいつらのこの態度は?

まるでーーー


『Seven Charge!Eight Charge!!!』


「まあ、良いか。また新しい奴隷(おもちゃ)がくるからな!」


ーーー人を、おもちゃ(ごみ)のようにッ!


Nine(Full) Charge!!!』


「場内の整備が整いましたので、次の戦闘の準備ーーーひっ!?」


秋人の殺伐とした雰囲気に係員が思わず悲鳴を上げてしまう。


「ぁ、ああああ……あ、あの、つ、次の戦闘の準備を……ぉ、お願いした、く……」


「わかりました。もう準備は済んでいるので、場内に案内してください」


「あ、はい!そ、その“黒い”ガントレットは、持参品、ですか?」


「ええ、何か問題でも?」


「い、いえ!特に問題はありません!すぐ案内します!」


「よろしくお願いします……」


普段の無気力な色をした秋人の黒い眼は、今や怒りによって真っ赤に燃え上がっていた。









ブクマ、ポイントありがとうございます!

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