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9.魔国

次は、3日後に投稿予定です。



「あれって……人間、よね?」


最初に口を開いたのは紫髪のツインテ少女だった。

黒髪黒目という配色は確かに珍しいものではあるが、魔族や獣人族特有のものが一見して見られないことから、ツインテ少女は秋人を人間と判断した。


「うむ。妙な身なりをしておるが……おそらく人間じゃろうな」


ツインテ少女の問いに、女性は大きく頷いた。

緊急事態、というか不可解な事態に陥っていることには変わりはないが、いつまでも惚けていてはこの国の長として申し訳がつかないと考えたのだろう。

数瞬前までは、ポカンと開かれていた口も今はしっかりと閉じられている。


「ふーん……あいつ、何て名前なの?」


「そんなものは妾が知るわけがなかろう。本人が目の前に居るのだ、其奴に聞くのがよかろう」


「それもそうね。おーい!あんた、名前何て言うの!」


女性の言葉に一理あると納得したツインテ少女は、さして距離が離れているわけでもないのに秋人に大声で呼びかける。

秋人は自分の質問にガン無視されたことに少々傷つきながらも、ツインテ少女の問いに答える。


「アキト・ナナエ。なあ、ここは一体何処なんだ?俺、いきなりここに転移してきたから場所がつかめてないんだけど……」


「ふーん、何で転移してきたの?」


「(いや、俺の質問に答えろよ!)……ちょっと、王国でやらかしてね。騎士団長に追いかけ回されたから無差別転移(ランダムテレポート)で逃げてきた。まあ、俺の事情はそんな感じで……で?ここは何処なんだ?」


「ふーん、なるほど……わかったわ。ありがと」


「(いやいや!俺は何一つとして情報を得られてないんだけど!?テメェ、コミュニケーションって言葉知ってんのか!?)」


そんな秋人の内心には構わずに、納得した風に頷いたツインテ少女は秋人を指差した。


「わかったわ!あんた、私の奴隷になりなさい!」


「……は?」


告げられた言葉は、秋人には到底理解できないことであった。





「と、言うわけで、ここは魔族の国よ。ここでは人間は奴隷の身分にならない限り生活できないの!だから、あんたが私の奴隷になれば万事解決ってわけ!ねっ?」


「うむ……確かに、奴隷なしで一国の姫君がうろちょろするよりはマシだが…………。うぅむ、此奴の力量を見んことには承諾しかねるが……」


「別に良いじゃない!奴隷としての役目は何も戦闘奴隷に限った話じゃないでしょう?だって私の同級生に愛玩奴隷とか、性奴隷とか連れてる奴居るんだし。……その点、こいつは私の好みの顔つきしてるから愛玩奴隷としてはぴったりだと思うけど?」


「まぁ、確かに……な。このまま付き人なしで居られるよりはマシじゃろうなぁ……。うむ、相わかった。其奴をお主の奴隷にしよう」


「わーい!ありがと!!!」


「うむ、大事にするのじゃぞ?」


「うん、わかってる!」


「うむ、ではそこの奴。ちょっとこちらに来て奴隷紋を刻ませろ。なぁ〜に、痛くはせん。安心してこちらへ来るんじゃ」


そう言って紫髪の女性が手招きする。

秋人は「あ、はい。わかりました」と頷きそうになって、体に待ったをかける。


「ちょ、ちょっと待てえええい!」


「む?何じゃ、何か問題があるのか?」


「大ありじやい、ボケ!?何でもう話が成立してるような顔してるんですか!?おかしいでしょ、どう考えても!」


「「ん?そうか(な)?」」


「えぇええええ!?何でそこで疑問符!?いやだって、当事者の合意なしに勝手に奴隷紋刻もうとしてますよね!?少なくとも本人の同意ぐらい求めろよ!?」


「ん?何じゃ、嫌なのか?奴隷になるのが」


「嫌に決まってるでしょ!だって奴隷でしょ?あのエジプト作ったり古墳作ったりするときにこき使われるあの奴隷!誰だってそんなものにはなりたくないっすよ!?」


「まて、落ち着け。お主が何を言っておるのかさっぱりじゃぞ?そもそもーーー」


「ーーーだぁー!うるさい!!!だいたい、何でいきなり奴隷!?話通じあうんだから、ここは話し合う流れでしょ!?」


女性の言葉を遮って秋人は怒鳴る。

世の中つまらないとは思っていたし、何か刺激が欲しいとは思っていたが……別に奴隷になるとかこういう方面じゃないんだ、と秋人は頭を抱える。

一方、ツインテ少女の方はといえば、先ほどから蚊帳の外状態でギャアギャア喚かれて少々苛立っている様子。

彼女からしてみれば、飼うと決定している犬にいきなり噛みつかれたような気分だったのだろう。

不機嫌さを露わにしながら、言う。


「あのねぇ、いきなりも何もこの国がそういうルールだって言ってんでしょうがッ!わかりなさいよ、このアホッ!ナニ!?あんたには私たちの頭に生えてる立派な“角”も見えないの!?あんたどう見ても私たちと違ってただの人間なんだから、私たち魔族に従うのは当然でしょ!……ママ!こいつ、うるさいからちょっと闘技場に放り込んで大人しくさせて!」


「う、うむ……しかし、良いのか?こんなヒョロヒョロのガキでは闘技場ではすぐに死んでしまうぞ?」


「ふん!死ぬ前には出してあげるわよ。……こいつが地面に頭を擦り付けながら私に謝罪したら、ね」


「……ふぅ、仕方ないのう」


そう言って、秋人は頭を抱えた状態のまま使用人らしき魔族によって連れてかれてしまった。


ーーーここは、魔国。

魔族、と呼ばれる角を生やした種族が支配する国である。







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