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prologue:そこに、リンゴがあった

前作が行き詰まっているので、適当な新作を書きました。

よかったらみてください。

prologue:そこに、リンゴがあった



例えばそこにリンゴが一つあったとする。

小さな小さな、それこそまだ産まれて間もない赤ちゃんにとっては、そのリンゴという物が何なのか?全くもって見当がつかない。


だから触ってみる。

だから舐めてみる。

だから見つめてみる。

だから叩いてみる。


これらは赤ちゃんが現実を知るために、必要な工程と言えるだろう。

そしてその赤ちゃんは何度かの試行を繰り返してリンゴという存在を知る。

リンゴを知った赤ちゃんは、更にもっと他の物を知りたくなる。


どんな物があるのか?

何がないのか?

危険なものは?

安全なものは?

楽しいものは?

……逆に苦手な物は?


それらを知るために見て触って、聞いて叩いて、味わって……。

そうして色んな物があることを知った赤ちゃん。

そんな赤ちゃんはある日ーーー


ーーー電源が入れっぱなしになっていた、テレビの特撮を見てしまう。


最初はその映像の中にいる人間に触ろうとした。

しかし、そのテレビの中に入っている者たちに触れることは出来ない。

そこでそのテレビに映っている者に近い奴を探し始める。

すると、家には両親がいた。

両親が一番特撮に出ている者たちに近い存在であると知った赤ちゃんは、触ったりなんだりして確かめる。


何ができるのか?

どんな味がするのか?

音は?

質感は?


色々と両親のしていることを注視していると、料理でも始めたのか、と赤ちゃんの父親であろう男性がガスコンロのスイッチを入れ、火を点火した。

赤ちゃんは目を瞠る。


ーーーテレビ(あの箱)の者たちと同じことをしている、と。


そこで赤ちゃんは信じてしまう。

人は皆、超能力を扱うことができる……と。

否、赤ちゃんにとってソレは超能力では無かったのだろう。

皆できること……つまりは人間が二足歩行をすることと何ら変わりのないものだと思っていたのだ。

それから必死に超能力の習得に挑んだ。

赤ちゃんは好奇心旺盛だ。

きっと超能力という存在に憧れと共に多大な興味を示していたのだろう。


ーーー自分も早く出来るようになりたい。


そうして0歳の頃から訓練した結果……赤ちゃん、いや七重秋人()は、超能力者になった。





七重秋人(ななえあきと)御年16歳!

形式上のプロフィールをあげるとするならば、荒川学園所属の高校二年生。

誕生日は名字についている通り七月生まれ。

名前の秋という漢字には全く見合わない暑苦しい期間に産まれた男の子だ。

家族構成はシングルマザーのみ。

その昔、マザーの夫が不倫していたことが発覚。

それによって夫が夜逃げしてしまったのでマザー1人、という中々にヘビィーなご家庭である。

黒い髪の毛を肩に届かないぐらいまでに伸ばしており、一般的な男子高校生と比べると若干うざったらしい長さ。

本人は特にもてたいだとかカッコつけているというわけではなく、ただ単に床屋代の節約である。

切るときも自分で切っている。

眉目秀麗というほど整っているわけではないものの、黒い髪にマッチした烏の濡れ羽色の瞳やシミひとつ無い綺麗な肌は、それなりに女性受けする顔つきと言えよう。

部活は特に何もしていない。

日々を怠惰に過ごし、偶に小説でも読んでベッドの上でゴロゴロするのが日課だ。

学園生活での友好関係においてはそこまで広いわけでも狭いわけでもない。

少しは話すし、だからと言ってリア充よりも日々を満喫しているわけではない。

顔つきが良いのだから女子生徒とも良い関係を持てそうなのだが……。

生憎と秋人は人と話すことを不得手にしている。

学園にいるよりも家にいた方が楽、と考えるくらいで、話す女子生徒は片手の指で事足りるほどだ。

まあだからと言ってこの学園生活が嫌いではなく、むしろこうした平和な学生生活を送れることに幸せを感じて、秋人は日々をーーー


「何、してるの?今はそんなに惚けている場合じゃない」


「別に、イイだろうが!ちょっとぐらい現実逃避したって!」


「ちょっと……?何言ってるの?一時間もの妄想を、人はちょっととは言わない」


「いやいや、やろうと思えば俺はいくらでも妄想できたぞ!と言うか今も妄想の中にいたい!」


「……。そんなことは、どうでもいい。それよりも、お姫様が説明を終わったみたい。そろそろ行かないと、皆に置いてかれる」


「……え!マジで!?ちょっと待てよ、みんなぁあああっ!俺たち仲間だろ!」


「…………」


秋人は、クラスメイトのメンツが隣にいる女子生徒を残して全員他の部屋へと行こうとしていることに気付き、すぐさま後を追いかける。

秋人の情けない声が城中に響き渡り、秋人を待っていた女子生徒も思わず眉をしかめる。

しかし、それも仕方がないだろう。

今秋人は……いや、彼らクラスメイトたちは、異世界に勇者として召喚されているのだから……。






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