復讐の幕開け
前薗による作戦決行日時の指定から5日、
真斗の能力によって新造された滑走路のエプロンには約30機のB-29が出撃準備を整えていた。
スタッフ「グレートベンジャミン号の燃料は?」
スタッフ「今から入れるわよ!!」
スタッフ「ハイパーグリッド号、異常はない、いつでも行けるわ!!」
GLOAのスタッフは女性が多いだけあって爆撃隊の女性の多さも目立った。
真斗「強い女性、ここでは知識のない男の三倍は心強く感じる。」
前薗「真斗、あなたのおかげでスタッフの士気も上がっている。」
真斗「礼を言われる筋合いはありませんね、俺は利害が一致した上でこの作戦を提案したまでです。」
爆撃隊は次々にオールグリーンの合図を出して行く。
防壁の砲隊も榴弾砲の準備を完了していた。
真斗「俺はそろそろ行きます、爆撃隊の指揮を直接取らなければ。」
前薗「10分後に状況を開始する、早く行くんだ。」
真斗は爆撃隊の隊長機、『革命』と名付けられたB-29に乗り込んだ。
真斗「革命が始まる、人から神に対する復讐の序章だ。」
スタッフ「爆撃隊の指揮、よろしくお願いします。」
真斗「そう改まらないでくれ、俺はもともと部外者なんだ、想定外のときだけ指示を出すからそれまでは訓練通りにやってくれ。」
スタッフ「了解!!ところで、あの頭にプロペラのついた飛行機はなんです、聞いたところこのB-29よりも空中戦が得意だとか。」
真斗「あれは紫電改、爆撃隊の護衛だよ、機動性が高いから的にされない。」
スタッフ「塗装が珍しい感じですね。」
真斗「司令官の母国で昔使われていた塗装だ、彼女の国は日の丸こそ神の国の象徴だと昔は伝えられていた。」
スタッフ「詳しいですね。」
真斗「俺も同じ国の生まれだからな。」
スタッフ「え?」
真斗「世間話はもういいだろ?早くコクピットに戻りなよ。」
ブロロロロロロロロロっ!!
既に爆撃隊はいつでも出撃できる状態になっていた。
護衛部隊も既に準備を整え、砲隊や守備隊も万全だった。
出撃1分前、前薗のアナウンスが入った。
前薗「諸君、我々はついに天使軍と対等に戦えるほどの力を得た!!これより天使軍に対する侵略を開始する!!現時刻より状況を開始する!!奴らが聖書を拝む時間をごっそり奪ってやれ!!」
真斗「いい演説じゃあないか。」
爆撃隊は隊長機を先頭に次々に離陸していく。
砲隊も榴弾を詰めて準備は整った。
スタッフ「高度1000メートル、さらに高度上げます。」
スタッフ「各部隊、40秒間自由射撃、41秒後より面制圧に入る!!」
ズドン!!ズドン!!
爆撃隊の高度が2000を過ぎたあたりから砲撃が始まった。
真斗「一番近くの村は信者の村だったな、皆殺しにして天使軍の怒りを扇げ。」
スタッフ「高度4000に到達!!」
真斗「マスクを装着しろ、低酸素で酸欠にならないようにしっかりつけとけ。」
スタッフ「了解、各機マスクを装着、低酸素に注意せよ。」
スタッフ「五分後に第1ポイント到達です、ハッチ開きます。」
スタッフ「視界良好、雲はありません。」
真斗「爆撃日和じゃないか。いいねえ、訓練の成果を見せてやれよ。」
スタッフ「了解、ハッチ確認、投下地点まで3分。」
真斗はニヤニヤと窓の外を眺めていた。
時間がじわりじわりと近づく。
スタッフ「投下地点まで30秒。」
真斗「これで奴らへの復讐が始まる!!」
スタッフ「3、2、1、投下開始!!」
ガシャン!!
ぴゅ〜〜〜
二番機と三番機のハッチから爆弾が投下された、村の家は煉瓦造りのため焼夷弾ではなく普通の爆弾を投下した。
真斗は開いたハッチから下を見た。
ちょうど下では爆弾が爆発して村を焼いているのが確認できた。
真斗「フハハハッ、いいぞ!!もっとだ!!」
スタッフ「上空より天使接近!!第三階層の天使です!!」
真斗「来やがったか、俺の読み通りだ、護衛部隊、天使軍を撃滅せよ!!敵は太陽の方角より接近!20ミリ弾を腹一杯喰わせろ!!」
スタッフ「紫電改三番機いこうは直進!本機と二番機が奴を落とす!!」
スタッフ「了解!!敵の『矢』に注意せよ!!」
護衛の紫電改が旋回して天使軍に向かう。
スタッフ「好き勝手しやがって!!姉貴を殺した落とし前だ!!!!」
ずどどどどどどどどど!!
機関銃が火を吹いた。
天使は最初はあざ笑うかのように弾丸を受けていたがいつのまにか表面にはヒビが入り、天使に余裕はなくなっていた。
スタッフ「二番機、これより天使に追撃を行う!!」
二番機は本格的なドッグファイトに入り天使に機銃弾を喰らわせる。
やがて天使は鉱物のように破片を飛び散らせながらバラバラになって叫びながら消滅した。
真斗「素晴らしい、ここのスタッフには驚かされる、まるでベテランだ。」
スタッフ「4時の方向よりさらに天使、五体接近!!」
真斗「護衛部隊は一度上昇、ダイブで敵に急接近!!ダイブまで各銃座による対空射撃を展開しろ!!」
ずどどどどどどどどどっ!!
B-29の機関銃が火を噴く。
大量の弾丸はまるで一本の紐のようになっていた。
機内には薬莢が散らばる。
スタッフ「一体撃墜!!護衛部隊のダイブが始まる!!射撃を中断!!」
スタッフ「了解、銃座射撃やめ!!」
スタッフ「ダイブ開始!!奴らに大口径の鉛玉をご馳走だ!!」
ずどどどどどどどどど!!!
天使「キェぃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
スタッフ「ざまあみやがれ!!自分から閻魔様に決断をあおぎやがれ。」
天使軍は瞬く間に天使六体を失った。
真斗「この先は確か…」
スタッフ「信者による信者のための大国、通称「シャングリラ」です。」
真斗「シャングリラねえ、気に入らないな、焼き払え!!」
スタッフ「シャングリラ上空に到達、各機自由に投下せよ!!シャングリラは大きい、広範囲に被害をもたらすために各機自由飛行開始!!」
編隊はバラバラになり町のあちらこちらに爆弾を落とし始めた。
その所業はかつての米軍と全く同じだった。
真斗「昔の人はさぞかし気持ちが良かったのだろう。ここまでの優越感、素晴らしいものだ。」
火事は広がり次々に家を燃やしていく。
真斗「神よ、よく見ろ、これが貴様を信じたものたちの最後だ。哀れなものだ、俺たちを支持すれば生き延びられたものを。」
爆撃隊は悠々と空を泳ぐように基地へ帰投した。