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垣間見える人の感情

真斗がGLOAに入ってから約一カ月。



前薗「本当に、あれでよかったのだろうか。」


前薗は虐殺のことを深く考えていた。


???「失礼します。」


司令室のドアが開かれた。


前薗「ノックくらいしろ。」


???「ノックなら既にしましたが?随分とお考えのようで。」


前薗「あなたに質問するわ。GLOA諜報隊隊長のセルシオ・ラ・ヴァーレ。彼をどう思う?」


司令室に入ってきたのはGLOAの諜報部隊で、ありとあらゆる手段をつくして神の情報を聞き出す部隊の隊長、セルシオ・ラ・ヴァーレだった。


彼女も戦闘力が高くフューリーズの一人として認識されていた。


セルシオ「大胆な割に全て計算内に収めているように感じます、虐殺による神に対する冒涜で揚げ足を取ろうというのも理にかなっています。」


前薗「やっぱり、私が鬼にならなければならないのか。」


セルシオ「作戦としては模範解答のような答えです、しかしそれは非人道的ですし、ましてや学生と歳の変わらぬ司令官では無理もないことかと。」


前薗「年齢を理由に決断を曖昧にしたくない、これでも決断力を買われてGLOAの指揮官を任されているのだ。それよりもVR訓練はどうなっている?」


セルシオ「選抜されたのは全員女性です。「アリス」「ピース」「サクマ」「リットリオ」が真斗から直接スナイパー訓練を受けています。それ以外でも最低限、例の翼の生えたモノの離着陸は可能なレベルにまでなっています。」


前薗「奴の様子は?」


セルシオ「真斗がやましいことを考えているとは思えません、射撃時の姿勢の矯正の際に少しスタッフの身体に触れますが基本的にタブーなことはなく、本当に復讐のみが目的かと。」


前薗「奴は?」


セルシオ「相変わらずです、監視の目を欺くことはできないはずです、怪しい行動もなくこれまで通り『白』というのが妥当かと。」


前薗「わかった、ここに真斗を呼んでくれ、少しだけ計画について話し合う。」




前薗はセルシオを通して真斗を司令室に呼んだ。


セルシオ「連れてまいりました。」


真斗「ふぅ、作戦について…ですよね?」


前薗「その通り、セルシオには少し席を外してもらう。」


セルシオ「わかりました。」


セルシオは司令室を出て行く。


前薗「今回呼んだ理由は作戦の決行日時を決める為だ、どれくらいにすればいい?」


真斗「司令官ならともかく、前線で働く兵士には心構えが必要になります、最低でも5日前には告知しておいた方がいいでしょう。」


前薗「そうか、それよりも何故敬語で喋っている。」


真斗「行くあてもない根無し草に居場所をくれたわけですからね、それにここの最高権力者は貴方です、GLOAの傘下に加わった訳ですから敬語になるのは当然です。」


前薗「そうか、いいやつなんだな。」


真斗は一瞬止まった。

そんな言葉をかけられたことがなかったからだ。

真斗はとっさに前薗にかえした。


真斗「どんな人間にも裏がある、仮に裏表の無い純粋な『いいやつ』がいたとしても損をするのはそいつです。」


真斗は表情を固めて司令室を出て行った。

スタスタと歩きながら階段を上っていく。

最上階のドアを勢いよく開け、屋上のフェンスにもたれかかった。


真斗「俺がいいやつだと?馬鹿馬鹿しい、俺は復讐にまみれた小汚い革命家気取りじゃないか。」


空は既に緋色にかわり、日が沈もうとしていた。


真斗「コッチにも夕日があったんだな、そういえばあっちで生活しててもコンクリートジャングルで何も感じなかった。」


???「貴方もここにきてたんですね。」


真斗が振り返るとシスタリカが真斗を見つめていた。


シスタリカ「綺麗でしょう?私のお気に入りの場所なの。」


真斗「夕焼け、くだらねぇな、どのみちこの世界も指導者を失ったことにより均衡を崩す。そうなればあっちこっちで民族間の宗教の違いからくる紛争で煙が上がるぜ。」


シスタリカ「なぜ?なぜ神を消そうとするの?」


真斗「俺が消されたからだ、どれだけこっちの世界でピンピンしてても元いた世界では俺は死んだことになってる。両親は泣いてるだろうし親しかった友達もきっと泣いてる。」


シスタリカ「こっちの世界でもきっといいことが…」


真斗「そんなお花畑はどこにも無いんだ!楽しいことがあれば裏に悲しいことも苦しいこともある。世界だってそうだ、平和を願いながら世界の経済は戦争で回ってきたんだ。結局は等価交換みたいなものなんだ、絶好調が過ぎればやがてスランプになる、何かを得たとき、後々何かを失うんだ。」


シスタリカ「貴方は神に何かを恵んでもらったことはないの?物じゃなくても何かを心に残してくれたはずよ?」


真斗「俺が奴に恵んでもらったのはこの能力と復讐心だけだ、どちらも奴自身を消すために活用させてもらう。」


「諸君!司令官の前薗だ!!諸君!ついに時が来た!!我々に理不尽な死を贈った神への復讐の幕開けだ!!だが本作戦はあくまでも序章に過ぎない!!我々の命の対価は奴らの命で償ってもらうとしよう!!作戦決行は5日後に設定する!!それまで意思を固め、待機せよ!!」


前薗の声が基地全体に広がった。

スピーカーから聞こえた声を聞いてスタッフは歓喜の声をあげる。


真斗「…結局、人間をより高い次元で統一するには怒りの矛先を特定のものに向けるしかないんだ。」


さりげなく呟いた真斗は浮かない顔をしながら階段を降りていく。


シスタリカ「どこに行くの?」


真斗「俺も前線に出るからな、早めに休んで精神統一ってところだ、日が沈む、あんたも早く部屋に戻りな。」


夕焼けは既に暗くなろうとしていた。

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