表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/19

武装集団

真斗は前薗に司令室に来いと言われて真っ先に飛び出した。

真斗の考えていることがGLOAのボスに認知されて実行に移されれば神への復讐の一歩となるからだ。


真斗はスポーツ万能だ、基地の中をパヴロナに言われたとうりに走っていればすぐに司令室についた。


真斗「はぁ、足が速くて助かった、お陰で普通の人間よりも早くチャンスを掴める。」


前薗「来たみたいね、入って。」


司令室のドアが開いた。


司令室の中央には長机が置いてあり、その一番向こうに前薗が座っていた。


前薗「本題に入る前に質問するわ、あなたはどこから来たの?」


真斗「日本。」


前薗「やっぱり、私と同じね。」


真斗「あんたも同じ世界の人間なわけだ、GLOAと聞いて異世界で英語が使われていると思って内心ショックだったが、ようやく謎が解けた。」


前薗「感がいいわね、それならこちらの話を理解するのも早いでしょう。」


真斗「話してみろよ。」


前薗「現在私たちは天使軍と戦争状態にある。1ヶ月に一度、近くの町には偵察の天使がやって来る、しかしあなたが来てから、第三階層の天使が頻繁に偵察を行っているわ、もしもあなたがいっていたことが事実ならばその偵察にここが見つかって2ヶ月以内に焼け野原になるということね?」


真斗「いや、焼け野原では終わらない可能性もある、生存者なし、転生不可能、永遠に無に送られるなんてことも考えられるんじゃないか?」


前薗は話を変えて来た。


前薗「この基地の対空能力をどうやってあげるの?」


真斗「俺の能力で対空砲を作る、初心者でも当てれるようにバルカン砲やガトリングのほうがいいかもな。」


前薗「構造は?」


真斗「その辺の高校生と一緒にするな。銃も弾丸も構造は完璧だ。」


前薗「わかったわ、じゃぁ、何故ここに来たの?」


真斗は黙り込んでから笑い始めた。


前薗「何がおかしいの?」


真斗「ここに来る理由なんて十中八九同じだろ、『復讐』だ、戦争で奏でる復讐の音色だ。」


前薗「雰囲気が、変わった。」


真斗「俺の命を弄びやがって、奴のミスで俺は幸せな家庭を失った、約束されていた未来を失った、愛する家族を、友達を失った!!それを『ごめん』だってよ、気が悪くて仕方がない!!だから俺をこっちに呼び込んだ神を失業させて俺の前で四肢を引き裂いて『助けて』って言わせるんだ!!常人なら死を哀願するほどの苦しみと、恐怖と、絶望と、そして正当なる『終わり』を奴にプレゼントしてやるんだよ!!!」


真斗は全てを出し切ったかのように息を切らせている。


前薗「神との決戦に協力するってことね?」


真斗「勿論だ。」


前薗「なら私の話を聞いてくれ。」


前薗は急にお願いをするような口調になった。


前薗「私はここでボスの位置にあるが軍役はゼロ、作戦立案などもってのほかだ、しかしあなたならよい作戦を考えてくれるだろう、私に知恵を、いや、あなたに作戦を考えてもらいたい。」


真斗は一瞬だけニヤついた。

計画が全て順調に回り始めた。


真斗「わかった、どのような作戦だ?」


前薗「奴らに見つかる前に先手を打ちたい、いい案はないだろうか。」


真斗「かつてドイツはベルリンの壁によって東西に二分されていた、しかしそのベルリンの壁を崩壊に導いたのは欺瞞情報だった。大きな欺瞞を信じ込ませればそこには自然に凄いもの見たさや革命のために人が集結する。今回はそれを使う。」


前薗「そんなもの、どうやって…」


真斗「信者を虐殺しろ、より残忍な方法で。強奪よし、強姦よし、全て自由にさせてここから近い村の信者のみを殺す。」


前薗は真斗の言っていることがわからなかった。

何故殺すのか、何故それほど酷いことをするのか。

前薗はこれまでの雰囲気とは違う声で真斗に問いかけた。


前薗「何故そんなことを…」


真斗「神とやらを信仰する連中は神直々の命令により我々の障害となり得る、それだけじゃ飽き足らずGLOAに独自に潜入し、組織を内側から崩す人間も出て来るかもしれない。」


前薗「だからといって…」


真斗「それよりも本当の目的は神に信仰心を持つものを殺戮に巻き込むことで神とやらが我々に対して怒りを感じるように仕向けるためだ。」


前薗「そんな、酷すぎる。」


真斗「神に絶対的な信仰を寄せていないものは殺さないようにする、この行いを神からの命令だという欺瞞情報を流す、そうすれば信仰なきものは神を魔神と入れ替えGLOAに着くはずだ。」


前薗はあまりの酷さに声をあげられなかった。


真斗「酷いと思っているんだろ?だがどの世界でも人民の怒りの矛先をどこかに集中させる必要があった。かつてのアメリカはあえて日本に真珠湾を攻撃させ国民の反日精神を育んだ、第三帝国の総統、ヒトラーはユダヤ人を絶対悪とみなして軍の士気を向上させた。戦争に必要なのは練度や兵器の前に統一性のある軍隊だ。」


前薗「だからといって無差別に奪う命などあってはならないはずだ。」


真斗「GLOAの実質的ボスが聞いて呆れる、綺麗事など復讐を決意した人々の前では通用しない、むしろ見境なく暴走化する。あんたのその傷はなんだ、憎くないのか?傷のない乙女の肌が羨ましくないか?その傷をつけた『奴ら』にせめて一矢向くいたいとは思わないのか。」


前薗「そ、それは…」


真斗「世界なんて負の感情を起爆剤として無数の信管を突き刺した不安定で敏感な爆弾のようなものだ、世界は1人の暴動、いや、1人の指先の動きだけでさえ簡単に崩れ落ちてしまう。一度目の世界大戦もセルビア人の指先がほんの少しトリガーを引いただけで勃発した。」


前薗は何も言い返せなかった、それが真実だと薄々勘付いていたからだ。

世界は不安定、何があってもおかしくない、同盟国が次の日には攻め込んで来てもおかしくないようなカオス、それを前薗は信じずにはいられなかった。


前薗「何故そんなことを思いつくんだ、これは作戦などではない、『虐殺』だ。」


真斗「これは必要最低限の犠牲だ、信者が数百人だけ死ねばあとは奴らが地べたに転がるだけだ。」


前薗「私にそんなことはできない。」


真斗「…おおかた、あんたも『神の過ち』でこっちにいるみたいだな。」


前薗「!?」


真斗「神による人口バランスの操作ミス、本当なら死ぬはずのなかった人間、幻の死亡者、リストにない犠牲者……単なる最悪。

それによって約束された未来を捨てることになってもあんたは文句を垂れないのか?」


前薗「…」


真斗「もしもそれで黙っていられるならそれほどメンタルが強いのか、こうなることに不信感がなかったのか、死にたかったのかいずれかだろう、だが結局のところそれで悲しむ連中をあんたは裏切ってるんだ。」


前薗「!!」


真斗「自身に愛情を注いだ両親を思い出せ、友を、恩師を、失うはずないと思っていたあの日常を、そのためになら悪に堕ちるという覚悟を決めろ。」


前薗はしばらく俯いていた。


真斗「命を焼却炉にぶちまけるような決断をするには若いし経験もない、気長に考えてくれ。俺はしばらくGLOAにいる。」


真斗は椅子から立ち上がり司令室を出ようとした。

ドアノブに手を伸ばした瞬間、真斗は椅子が動く音を聞いた。


後ろを振り向くと前薗は前を向いて立っていた。


前薗「本作戦を実行するにあたって重要なことを教えてくれ!!」


真斗「…喜んで。」











医療室〜


パヴロナ「…真斗、危険な人物かもしれないわ。」


シスタリカ「何故そう思うのです?」


パヴロナ「彼は銃を握ったことがないと言っていたけどあれは慣れた人間の手つきだったわ、どこかで銃を手にしたことがあるはず、それだけじゃない、人に銃を罪悪感なしに向けることのできる素人などこの世にはいないはずよ。」


シスタリカ「つまり、彼は…」


パヴロナ「人の皮を被った……『魔』。」


シスタリカ「え!?」


パヴロナ「見境なく人を殺戮する眼を持っていた、狂気に満ちた眼、私に銃を向けたとき彼は笑っていたわ。」


シスタリカ「でも、優しそうな人じゃないですか。」


パヴロナ「私も向こうじゃ軍役経験があったからわかるけど彼は軍人とも殺し屋とも犯罪者とも違うものを感じる。強いていうなら独裁者。」


シスタリカ「彼にそんな…一体何があったら、彼はとてもいい人に見えました。」


パヴロナ「私も初めて会った時は普通の人間だと思ったわ、でも彼に銃を向けられたとき、弾丸は入っていなかったけどそれでも彼は躊躇もなく発砲できる眼だった。おそらく、恐ろしいほどの憎しみで彼は動いてるのよ。」


シスタリカ「それが何の因果かこのGLOAにやってきて神に対する復讐を実行に移そうとしているというわけですね。」


パヴロナ「でもそれはかえってこちらにも好都合、利害が一致した上での神に対する復讐ならGLOAのスタッフの士気も上がるかもしれないわ。それに彼にはあの能力がある。神に対して有利に戦闘をすすめられるはず。」


前薗「総員に告ぐ、直ちに中央の訓練所へ集合せよ。」


突然独自の回路で組み立てられたスピーカーから前薗の声が聞こえた。

これまでにGLOAでは前薗がアナウンスすることはなかったためスタッフは急いで訓練所に集まった。


訓練所に集まったスタッフは驚愕した。

自分たちが見たことのない兵器らしき物が訓練所にずらりと並んでいた。


小さなものは粘土状のものから大きい物は巨大な羽が生えたような兵器まで。


パヴロナ「な、なに?これは。」


前薗「諸君、よく来てくれた!!」


訓練所の中央には前薗が腕を組んで仁王立ちしていた。


シスタリカ「これは、何なんですか。」


前薗「これは、私が生前いた世界の数ある兵器だ、これらは攻撃力となり、天使軍に対する抑止力ともなり得る。」


パヴロナ「いかに強力な兵器を数多く手に入れようとも使えなければ意味がないのでは?」


前薗「いかにも、だからこれらの兵器に精通した人物に説明をしてもらう。来てくれ!!」


訓練所の奥から制服を着た人がゆっくりと歩いてきた。

近付くにつれてパヴロナたちはその正体に気がつく。


その人物は真斗だった。

真剣な顔つきの真斗は前薗の前に立って自己紹介を始めた。


真斗「こんにちは、初めて会う人がほとんどと思います、テキトーにマサトと呼んでください。前薗さんから兵器の開発、製造、訓練プログラムの調整を任されました。以後よろしくお願いします。」


スタッフは何の変哲も無い『いつもの』と思い込んでいた。


パヴロナ「自己紹介も終わったことだ、これらの兵器について説明していただきたい。」


前薗「これらの詳しい説明は真斗君に行ってもらう。」


前薗が真斗に合図する。


真斗「えー、ではどれから説明しましょう。」


シスタリカ「その翼のようなものがついた大きなものは何でしょう。」


シスタリカはデカデカとグランドのど真ん中に置いてある飛行機を指差した。


真斗「あれは私が唯一構造を完全に理解している『爆撃用航空機』の『B-29』です。」


シスタリカ「びーにじゅうく?」


真斗「爆弾を上空から敵地に向けて落とします。長距離の移動が可能ですが練度の低いあなた方では短距離飛行が精一杯と思われます。」


パヴロナ「あれは?」


真斗「M134、通称「ミニガン」です。毎分3000発を余裕で超える重火器で多数のバレルが回転することによって化け物並の連射力を誇ります。」


パヴロナ「なにに使うんだ?」


真斗「主には制圧射撃ですがここに設置する場合は対天使用の対空機銃となるでしょう。」


前薗「ん?あんなものあったか?」


真斗「無線傍受機とスピーカーです。これを近隣の村に設置、神の声はこれで再現します。」


スタッフ「あの大砲のような形をしたのは何だ。」


真斗「FH-70榴弾砲、一番近い村ならB-29を使用せずにこれで村を壊滅させることができます。」


スタッフ一同「そんなに飛ぶのか!?」


真斗「さらには天使軍に対抗する追尾型ミサイルのスティンガーや大威力で連射可能なM2、C4爆弾や粘土型の起爆剤、狙撃銃から突撃銃、拳銃に短機関銃、エイブラムス戦車とレオパルド戦車、アパッチ戦闘ヘリコプター、作ろうと思えば洋上の要塞『戦艦』も作れる。そして今使ってはならないものがこの『核』。」


前薗「核だって!?」


スタッフは核を知らなかった。


真斗「化学の勉強をしておいて正解だった、これは使うだけでも私のいた世界では国際犯罪を問われる可能性のあった『秘密兵器』です。」


スタッフ「それにはどのような特徴が?」


真斗「爆発すれば数キロに渡って一瞬にしてなにもなくなる、爆発の威力はこの世の通常の爆弾で変換すると数百〜数千倍。」


スタッフ「数千倍!?」


真斗「爆発を逃れても有毒性の物質により体は犯され不治の病に感染する。」


前薗「そんなものまで作っていたというの!?」


真斗「これは広島に投下されたリトルボーイをそっくりそのまま作り直した逸品だ、こいつは人ではなく神に使う。」


真斗は続ける。


真斗「これらの武器はGLOAの物だ、これからも命令があれば作るしお願いがあれば改造もする、しかしこれを使うのは君達だ、神への復讐は君達の手で成し遂げるのだ!!」


スタッフ一同「おお!凄え!!あれが全部GLOAの物かよ!!」


スタッフ一同「かくとか言うのを神に向けて放つんだ!!!」


スタッフ一同「もう第六階層なんて怖くねぇ!!俺たちは最強だ!!」


前薗「どうしちゃったの?躊躇いはないの?」


真斗「呉越同舟、共通の敵のためなら一致団結できる人間の力だ。」


前薗「こんなの、こんなのおかしいよ。」


真斗「君達ができるだけ早くこれらの武器を使えるようにするために最新鋭のVR訓練プログラムをインプットしたマシンを用意してある!!今から順番にその訓練を行ってもらう!!」


スタッフ一同「よっしゃぁぁぁ!!」


スタッフ一同「天使なんてイチコロだぜ!!」


真斗「それと射撃訓練の際に命中率の高いスタッフを司令室に連れて行ってくれ、選ばれた者には『スナイパー』の技術を教えよう。」


スタッフ達はわき上がっていた。

これまでにいなかったタイプの人間、真斗は完璧に近い人間故に人心掌握もいつのまにか心得ていた。


真斗「計画通りだ、神よ、お前の椅子に尻を乗せるのは俺だ。」


背中を向けた真斗はゆっくりと自分の部屋に帰っていく。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ