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「あんたの父親の仇、…なのかもしれない。」
そう呟いたドラクールに対し、リサは事も無げに言い切った。
「まさか!あたしにとっては、」
突然、彼女はそこで黙った。
「何だ?」
「な、何でもない!」
ドラクールは訝しげに、真っ赤に頬を染めたリサを見ていた。
━━王子ならば仇敵と見做され、討たれていたのか?
この様な思念に囚われていたドラクールには、リサが飲み込んだ言葉の続きなど予想がつく筈もない。
「それにしても、自分が摩天城の住人になるなんてね。」
首を傾げるドラクールに対してリサは説明した。
「昔、バレンティナ公国との戦争で出たたくさんの難民が、この要塞に流れ込んで来たの。バレンティナ公国は軍隊の撤退と引き替えに、ヴォーダンの要塞の租借を要求した。」
一息入れると、彼女は続けた。
「これ以上の犠牲者を出したくなかった先王は、その条件を受け入れた。だからココはバレンティナ公国の領地なんだって。」
カーミラのどの説明よりも分かり易く、ドラクールは頷きながら聞いていた。
「でも争いばかりしている両国の駐在員に怒った難民達が団結して、どちらの駐在員も追い出してしまったの。そして建てられたのが、この摩天城。」
ドラクールは疑問を口にした。
「バレンティナ公国とやらは自国の領地なのに、一度追い出されたからと言って放ったらかしなのか?」
「ダーヴィッド王もフェンヴェルグ王も、バレンティナがココまで来る陸路や水路の通行を許可していないの。だから来たくても誰も来れないのよ。」
彼は無言だが納得している様だった。
バレンティナ公国の領地だが、国家権力の派遣も国家機関の設立もままならない。
キャンベル王国側は、治めている大陸内部に在っても統治権は無い。
故に、無法地帯と成ったのだった。




