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カーミラは一つ条件を出した。
それは、金の工面。
だが彼女は具体的な金額は言明しなかった。
━━面白い、試されてやるよ。
翌日の夕食が済むと、ドラクールは髪を束ねて掩蓋を深く被り、部屋を後にした。
普段ならば決して出歩かない、宵闇刻。
座り慣れた石畳がどこか違って見えた。
当然だが、深夜とは比較にもならない程に人通りが多い。
彼はそれに耐え、客を待った。
最初の客は若い女だった。
指輪を探して欲しいと言う彼女に、ドラクールはこう言った。
「必ず見付けるが、安くはないぞ。」
到底、街角の易者とは言えぬ様な相当な金額を吹っかける。
「絶対に見付かるのなら高くないわ。見付かるのならば、ね。」
そう話す女の瞳を、掩蓋の下から見据えた。
暫くした後、彼は先見した状況を詳しく説明した。
「それ…、私の部屋だわ。」
彼女は余りに鮮明に語られた内容に、目を丸くして驚いていた。
ドラクールが手を出すと初めは疑念の表情だった女も、黙って提示された枚数の紙幣を取り出した。




