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久方振りの暖かいまともな食事だったのであろう。腹が満たされた幼子達は、直ぐにすやすやと寝息を立てて眠りについた。
それを見届けたドラクールは長い髪の下で僅かに表情を緩めると、その場を立ち去った。
部屋に戻った彼は、今夜は少しだけ上等な酒を呷っていた。
すると突然、視界の隅を何かが横切った。
顔を上げて窓の外に目を向けると、半月を背景にして右に左に飛び回る物体があった。
━━鳥…?こんな夜半に?
不思議に思った彼が窓を開けると、まるで待っていたかのように中に入って来た。
━━蝙蝠か。
蝋燭の灯に照らされたそれは、見慣れた通常の個体とは異なっていた。
キィと鳴いた時に見せた長い牙と、金色の瞳と、赤色の体毛。
━━カーミラだ。
彼女の特徴をそのまま持つそれは、間違いなく当人からの使者だった。
しばらく辺りを飛んでいたが窓枠に翼を休めると、語りかける様な眼を彼に向けた。ドラクールもまた、蝙蝠を凝視していた。
再び、小さくキィと鳴くと飛び去って行った。
窓を閉めようと手を伸ばした瞬間、カーミラが夜空から舞い降りて来た。
「ちょっと、何故閉めるのよ?」
「あんたは何処からでも侵入して来るじゃないか。」
そうね、と、彼女は微笑んだ。
その後でカーミラは真剣な表情になり
「君が欲しがっていた情報を持って来たわ。」
と、ドラクールを自分の方へ向かせた。




