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その夜は雨にも関わらず客の入りが良く、ドラクールは早めに店じまいをする事が出来た。
━━良かった、肉屋も魚屋もまだ開いている。
彼は足早に食糧品の調達に向かう。耳たぶの重さを、気にしながら。
「間に合った。」
両手に荷物を抱えたドラクールは、足で茂みを掻き分けてリサの元へ急ぐ。
彼女の手には僅かな量の出来立ての粥が湯気を立てていて、それに塩を振っていた。
「それ、どうしたの!?」
「そっちこそ。」
ドラクールは粥を顎で差した。
「…盗んだ。」
微かな躊躇いの後、リサは正直に答えた。
「そうか、俺は買って来た。今日は金が作れたからな。」
ドラクールはリサの窃盗を注して気にもせず、荷物を彼らの傍らに置いた。
「お肉とお魚だよ、お姉ちゃん!」
目を輝かせるハクとミサ。
「いいの?」
一瞬、リサは全てを忘れた。自分に関われば極刑になる事を。
その返事を、見逃してしまいそうな程の微かな笑顔を添えて返すドラクール。
自分は極刑にはならない、と言った事をリサが信じようが信じまいが、彼にはどちらでも構わなかった。
ただ、
━━これで禁忌は免れた。
そう思った。
例えその場しのぎの術であっても。
半面、此処に来れば来る程に己の不甲斐なさが身に沁みて仕方なかった。




