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「あれ、お兄ちゃんだ!」
ドラクールの姿を見付けるなり駆け寄って来たのは、真ん中の子供だった。
「ねー、お姉ちゃん。お兄ちゃんが来たよ!」
嬉しそうに洞窟内に声をかける姿に、彼の心は和む。
そんな自身に若干戸惑いながらも、彼は子供の後に続いた。
「ねー、お姉ちゃんってば!リサお姉ちゃん!」
「もううるさいな!なによ、ハク。」
ドラクールの影に、振り返った彼女は息を飲んだ。
「また来たの?」
その口調は疎むというより、呆れている様だ。
「あんた、リサって言うのか。」
末の子供が寝息を立てている様子を見て彼は離れた場所へ静かに、腰を下ろした。
「そうだよ。聞いた事ぐらいあるでしょう?」
彼女は小声で答えながら、弟と一緒にドラクールの側に座る。
「有名人か?」
「まあね。この子はハク。妹はミサ。」
「全然知らない。」
真実を告げるドラクールを、疑いの眼差しでじっと見つめるリサ。
「どんな生活してんの?この国にいてあたし達を知らないなんてウソでしょ?」
小首を傾げながら、彼女の態度には猜疑の色が濃く浮かぶ。
「監禁生活。」
またしても真実を告げた彼の言葉は、一蹴された。
「別にウソなんかつかなくていいんだよ。」
リサの言葉は理解し難くて、ドラクールは黙った。
出歩いているのに監禁を語ったからか。
それとも、知らぬ者はいない程に国中に名を轟かせているであろう彼女を知らないからか。
どちらにせよ、ドラクールは決して偽りを述べてはいない。
理解されずとも自身が真実だと確信しているから、それ以上を語る必要性は感じなかった。




