4
最後に一つ、ルーヴィンは溜息を吐く。まるでそれを合図とするかの様に、二人は真剣に話しを始めた。
「一晩で雰囲気が変わったな。」
「ええ、そうね。それにしても、昨夜は一体、何処にいたのかしら。」
「調べるか?」
ドラクールは疎か、実際にその場所で生活している一般の国民すら恐らくは知らないだろう。
ルーヴィンが国中に隙間なく監視要員を配置している事実を。
「まあでも、事件を起こした訳ではないし。」
ベネディクトは僅かに迷ったが、今回はドラクールの動向を探る事はしない結論を出した。
「最終的には手段もあるしね。」
ベネディクトには特に深い思惑はなく、口にしたこの言葉。
「冗談じゃない!」
それに対し、ルーヴィンは憤慨した。
「何故だ?何故、お前はいつもそういう扱いをする?」
「え?兄さん、何を。」
「何、じゃないだろう!どうして、どうしてそう頼りにするんだ!当てにするんだ!」
ベネディクトは即座に意味を理解した。
「決まってるじゃない。彼女本人もそれを望んでいるからよ。」
「分かっている。それでも、だ!」
ルーヴィンはベネディクトを睨み付けた。
「いいか、お前は知らないだろうがな!ウィルは毎回、眠れなくて食べれなくなっているんだぞ!」
詰め寄られても物怖じなどはせず、ベネディクトは眉一つ動かそうともしない。
「凡そ人間の所業とは思えん程の暴行を加えらえ、放置の末に腐敗が始まっている遺体を、お前は間近で見た事があるか!?ウィルはそのぐずぐずに崩れた肉に触れ、被害者の過程を辿るんだ!!死に至るまでのな!!」
掴みかからんばかりの激しい感情をぶつけられても、彼女はまるで聞こえていないかの様だ。
「だから、兄さんがいるんじゃない。感じた恐怖は、跡形もなく全て消して差し上げれば良い。何か問題でも?」
ベネディクトは不敵に笑みを浮かべた。
「記憶と感情を思うままに操る事が出来る――貴方程、秀逸な薬師は存在しないもの。」
「もう…、止めるべきだ。」
ルーヴィンは哀愁と悲壮にかられ、眉間に深い皺を寄せた。
「矛盾してるわ。王女を一番苦しめているのは貴方よ、兄さん。」
理性と感情の狭間で、彼が足掻いている事は誰一人として知らない真実。




