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ドラクールは音響しない言葉を発しようと、懸命に努力した。しかしそれは叶わず、不様に唇がはくはくと上下するのみだった。
ちょうどその時、ルーヴィンが部屋を訪れて来た。
「おい、ベネディクト。」
彼は両手には氷塊が。
「ああ、目が覚めたか?」
ドラクールの顔色は、真っ赤とも真っ青ともどちらとも呼べる色をしている。
「まだ熱がありそうだな。どれ。」
体温を確認しようと手を伸ばすルーヴィンに対し、ドラクールは手元にあった水差しを乱暴に投げ付けた。それはルーヴィンの胸元に当たり、彼の霞色の法衣を濡らした。
「く、来るな!!近寄るな!!」
ドラクールは声を荒げてルーヴィンを頑なに拒絶する。
「どう…した?」
染みが広がって行く法衣もそのままに、ルーヴィンは唖然としていた。ここまで攻撃的な彼の姿を目にしたのは、相当、久し振りの事であった。
一体何事かと、懸念する。
しかし、直ぐにルーヴィンは状況を理解した。
何故ならベネディクトが髪で顔を隠しつつ、肩を震わせていたからだ。彼女は笑いを堪えているのだ。
「何か食えるならば、用意するが。」
そんな妹に内心呆れて溜息を吐き、まるで怯えた獣の赤子の様なドラクールに語り掛ける。
「いらねェよ!!何にもいらないから、出て行け!!」
ルーヴィンはその言葉に従い、ベネディクトの腕を掴むと半ば彼女を引き摺る様にして部屋を後にした。
ベネディクトを問い詰めて事情を聞いたルーヴィンが更に大仰な溜息を吐いて彼女にくどくどと説教を垂れたのは、言うまでもない。




