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「あ…、ありがと…う…。」
少女は噎せ返りながら、ドラクールに礼を言う。
「普通、あの場面で見殺しに出来るか?」
自身が一番、らしくない行動だと虫酸が走る思いだった。
「さっきは…ゴメンなさい。」
少女の態度は打って変わって、しおらしく謝罪をする。
「もう忘れた。」
ドラクールは濡れた服もそのままに、立ち去るべく来た道を引き返そうと彼女に背を向けた。
「あ、待って!ウチで乾かして行きなよ!」
その呼び掛けに彼が振り返ると、其処には視線を泳がせて迂闊な自分の発言に後悔してるらしき表情の少女がいた。
「来いって言っといて、何だ。その顔。」
「違うよ、そうじゃなくて…。ウチなんか見たらびっくりしちゃうだろうなって。汚いから。」
全身からぽたぽたと雫を垂らしながら踵を返すと、ドラクールは彼女にずかずかと歩み寄る。
━━その成りから逆にどうやって綺麗な家を想像しろって言うんだ。
「案内しろ。」
吹き付ける夜風は、容赦なく彼の体温を奪う。身震いするドラクールは堪らずに両手で肩を抱き、かちかちと奥歯を鳴らした。
「…早く。」
健康には自信があるが、如何せん体の芯から冷えきってしまっていた。
「ココ。」
少女の指差す方向には、何もない。
否、正確には巨大な岩がある。
━━洞穴…がか?俺の方がまだマシな生活してるな。
心中に過る、何とも低俗な手前の対比。
自身と相手を比べ、優越感に浸るのも同情心を抱くのも、どちらも同等に失礼な事だ。
ドラクールはそれを知っているから無表情を保ち続けた。
元々これは彼の得意分野でもあるから苦にはならない。
「ちょっと待っててね。」
少女は洞穴からマッチを持って来て、入り口からは少し離れて焚き火をした。
「服、ソコの木に引っ掛けておきなよ。」
彼は言われた通りに上着を脱ぐとそれをぎゅうっと絞り、火の側の適当な枝に掛けた。
「はい、タオル。ボロボロだけど。」
躊躇いがちにおずおずと使い古されたそれを差し出す彼女の心中を察しながらも敢えて無視をし、ドラクールは無遠慮に奪い取って髪をがしがしと拭いた。




