2
翌朝。
久々に深く眠り込んだドラクールは、覚めきっていない意識の中で違和感を手で確かめた。
━━まだいたのか。
指先に触れたのは、柔らかく温かいカーミラの身体。
彼女は未だ寝息を立てている。規則的に上下する肩を暫らく、ドラクールは静かに見つめていた。
カーミラを起こしてしまわない様にそっと上手にベッドから抜け出すと、一口水を飲んだ。
何気なく再びベッドに視線を戻すと、
カーミラは消えていた。
毎度の事とはいえ、神出鬼没な彼女にはどうしても驚かされる。
一体何処からやって来て、何処へ去って行くのだろうか?
ドラクールは暫し思案に暮れるも、真相は不明だ。
彼の一番の疑問は、彼女の名前以外は何一つ、年齢すらも知らないと言うのに、安堵と信頼を己が抱いてしまっている事実だ。
ドラクールがカーミラに想いを馳せていると、ルーヴィンが部屋の扉を開けた。
彼は感情が散漫した表情のまま、扉を振り返った。
「ああ、悪い。ノックを忘れた。」
ルーヴィンは乱暴に朝食をテーブルに置くと、匆卒な様子で出て行った――、
かと思った瞬間、ルーヴィンは踵を返してドラクールに詰め寄る。
「女は?」
「え?」
ルーヴィンの言う、『女』がカーミラを指しているのは百も承知だが、敢えてドラクールは聞き返す。
何故なら直前に姿を消したカーミラを、ルーヴィンは目撃してはいない筈だからだ。
彼女は扉や窓からは出ていない。
この部屋から外に繋がる場所からは出ていない。
消えた、としか表現出来ないのだ。
「隠れているのか?」
よくよく見るとルーヴィンの呼吸は荒く、顔色が酷く悪かった。




