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「しかし異様に早いな、捕捉から処刑まで。昨日の今日だろ?」
ドラクールは黒パンに手を伸ばし、噛り付く。
「有力な目撃証言でもあったのか?」
彼は直後に口内に牛乳を流し込んだ。柔らかく解されたそれは、殆ど咀嚼をしなくとも喉を通過して行った。
「言っただろう。事件解決のエキスパートがいる、と。」
ルーヴィンは、ドラクールとは決して視線を合わせずにいる。何処か居心地が悪そうだ。
━━分かり易いな。何かを隠してる。
ドラクールは再び黒パンを口に運びながら、ルーヴィンの横顔を凝視していた。
髪をきつく束ねて纏め、顔を見られぬ様に目深に帽子を被るとドラクールは外出の支度を整えた。
━━面白そうだ。
彼を衝き動かしたその理由は単純に、好奇心。
ルーヴィンが隠してるであろう何かを明かしたかった。
ただ、それだけの理由。
彼はこれから、故意に回避していた出来事の続きに遭遇する。
此れ程までに皮肉な事はないだろう。
自身の未来は、知る術がない。
そう。
彼は、予見者。
卜いなど、彼にとっては児戯も同然である。
生来の能力を疎む事も拒む事も、また好く事も誇る事もなく。
平静に受容し、認知し、共存し、あるがままを安逸に受け入れていた。
真実の彼は穏やかな思想の持ち主なのだが、それを知る者は誰一人としていない。




