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「確かにお前さんの言う通り、多くの血が流れた。」
抗った者達、そしてそれを抑えた者達も。
「ワシは運良く生き長らえたがな。仮に戦死したとしても後悔はなかっただろう。」
穏やかに語る翁の心情は、ドラクールには理解出来ない。
「何故だ。あんたは何故、戦った?」
「後世に残す為だ。和平を。」
深く刻まれた額の皺から覗く強い眼差し。
其処には一片の偽りもないと、簡単に汲み取れる。
「第三者の為に戦ったのか?」
訝しげなドラクールと、それとは対照的な翁。
「そうだ。」
━━そんなもの糞食らえだ。
しかし些か、口には出すのは躊躇われた。
翁の左足首から先には何も無いのを目にした、今では。
「若いの。」
ドラクールは慌てて視線を翁の足元から外した。
「いつかはお前さんにも機会が訪れる。」
「第三者の為に戦う機会がか?」
彼は自嘲気味に口角を上げた。翁はそれを見て首を横に振る。
「『何か』を守りたいと思う機会に、だ。」
翁が立ち去った後に強くなった、雨足の中。
ドラクールは未だ一人、其処に佇んでいた。




