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蒼穹をも脅かす様にそびえ立つ、偉大なる王宮。
見る者には豪奢さよりも懐古さを感じさせ、威容と尊厳を誇っている。
「どういう事だ?」
玉座にゆったりと腰を掛ける、貴顕たる一人の男。
その名はフェンヴェルグ・キャンベル。
彼の持つ不壊の威厳と無限の権能は、正に王者に相応しい。その光輝く長い銀髪もまた、一役かっていた。
ルーヴィンは黙したまま、御前にただ跪いている。
「昼食にも来なかったらしいな。」
射抜く様な厳しいフェンヴェルグの視線。その碧眼はまるで青白い炎を湛えたかの様に、冷たい怒りを表している。
しかし生憎ルーヴィンには更々、理を言挙げするつもりはない。
「至上命令に反しているのは既知しております。」
「何故だ?」
フェンヴェルグは体勢を少し崩し頬杖をつく。そしてゆっくりと、自身の頬の傷を食指の腹でなぞる。
「言い訳があるならば、じっくり聞いてやろう。」
「御座いません。」
フェンヴェルグの尊顔の右側には、額から顎にかけて縦一文字の非常大きな古傷がある。
つまりそれは、右目を潰していた。
故に彼は【隻眼の聖王】の異名を持つ。
「痛むのですか?」
「ああ。疼く。」
頻りにその古傷を気にしている。
「今、薬を。」
扉の外で待つ側近を呼ぼうと立ち上がったルーヴィンを、フェンヴェルグは制止した。
「また今夜も雨の様だ。」
そう、不敵に笑んだ。
どんな予見師よりも正確に、彼の古傷は雨の到来を示す。
「さあ、今宵は何が起こるかな。」
声を忍ばせて笑うこの男、腹の内は何人にも決して曝さない。




