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「失礼致します、リュユージュ隊長。ベネディクト将軍がお呼びです。」
翌朝。寝室のノックと同時に、惰眠を貪っていたリュユージュは飛び起きる。
「ああ、直ぐに行く。」
寝癖の付いた髪を掻き上げながらベッドから下りると、彼は寝室を出た。
「おはようございます。ベネディクト将軍は、大聖堂にてお待ちです。」
「うん、分かった。」
リュユージュは洗面所の蛇口を捻ると其処に頭を突っ込み、乱暴に髪を濡らす。伸びるに任せていた蜂蜜色の癖毛を、彼は酷く鬱陶しく感じた。
「お待たせ致しました。」
重々しい、大聖堂の巨大な扉を開ける。
真っ先にリュユージュの視界に飛び込んで来たのは、正面に掲げられた黄金の太陽十字の造形だった。
天窓から射し込む柔らかな日光は、内陣の手前に立つベネディクトを照らしている。
「貴方、私以上に朝に弱いわね。」
反論の余地なく、リュユージュは無言で身廊を進んだ。
会話をするには、少し遠い。
そう感じさせる程度の場所でリュユージュは足を止め、彼女に向き合った。
ベネディクトは短い溜息を吐くと腕を組み、彼に厳しい視線を向ける。
「一体どういうつもり?貴方、何を考えているのよ。」
昨日リュユージュが上奏した恩赦について、早くもベネディクトは難色を示す。
「いい加減、興味本位で他人を左右するのは止めなさい。」
「僕はそんな事、一度もしていません。」
「神の御元において、堂々と嘘を吐かないで頂戴。」
「いいえ、興味本位と仰られた事についてです。」
「興味本位でないにしろ、他人の生命を手の平の上で転がす様な真似をするなと言っているのよ。」
「僕は理由なく、恩赦を上奏した訳ではありません。」
「貴方には貴方の思惑があるのだろうけれど、其処にとても真理は見えないわ。」
それは会話と呼ぶには高揚し過ぎていて、しかし口論と呼ぶには余りに冷静だった。




