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夜気が迫った頃にレオンハルトがリュユージュを訪ねると、彼はとても気怠そうに招き入れた。
「なに、レオン。」
「随分とお疲れの様ですね。」
レオンハルトは好奇の目を向ける。
「一日中、一人であの人数の相手をしてみろ。疲れるに決まってる。」
リュユージュはソファに深々と身を沈め、足を投げ出した。
「で?」
頬杖を付き、用件を話す様に促す。
「は。ギルバート殿とアンジェリカ殿は、恋仲なのですか?」
「うん、そうだよ。『何でもするから、山賊にさらわれた恋人を助け出してくれ』ってギルに頼まれたんだ。話してなかったっけ?」
リュユージュのその口調から他意は全く感じられず、故意に隠そうとしていた訳ではないらしい。
これで漸く、レオンハルトはギルバートの言葉の意味を理解する事が出来た。
『恩義に報いたい』と涙していた、その理由を。
「アンジェリカ殿は、ギルバート殿の現状を何も知らない様ですが…。」
「うん。教えたところで何一つ変わらないからね。」
リュユージュはずるずると体を滑らせるとソファに仰臥し、天井を見上げた。
「もう…、面倒くさい。」
リュユージュは溜息を吐く。
「ギルは、自分の為に生きる男じゃないんだ。それだけは僕にも良く分かった。」
その後、彼はゆっくりとレオンハルトに視線を移した。
「君達はどうしてもっと簡単に生きられないのかと、つくづく不思議に思うよ。」
「自分…、ですか?」
レオンハルトは疑問を口にする。
「うん。だってレオンは、生きる事そのものを拒んでいたじゃない。」
「は…。」
彼は過去を振り返る。否めない事実だ。
「僕からしたら、君達は理解不能だよ。生に執着しているあの女の方が、まだ分かる。」
リュユージュの言うあの女とは、アンジェリカの事だ。
「利他的に生きるなんて、我欲に塗れているよりよっぽど汚いね。」
翡翠色の双眼で射抜く様に見据えられ、レオンハルトは言葉を失った。




