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「昨夜、女が殺された。」
ルーヴィンは煙草に火を付け、眉を顰めた険しい表情で紫煙を吐き出す。
「もう裏は取ってある。」
ドラクールは枕元にあった酒瓶の一つを手に取り、僅かに残っていたアルコールを喉に流した。
「あんた、何言ってんだ?裏?意味が分からん。」
ドラクールは空になってしまった酒瓶を忌々しく壁に投げ付けた。ぶつかり合った硝子と土壁は鈍くも鋭い音を上げる。
「その女が直前に会っていたのが…、お前だよ。」
ルーヴィンは乱暴にドラクールの黒髪を掴み、力を込めて引き寄せる。
「確かに昨夜、俺は婚期を占って欲しいと寄って来た女と会話した。売女に未来があっちゃ悪いのか?それとも、俺が犯人だとでも?」
それに怯む様子もなく、彼は怪しく微笑した。
毅然としているルーヴィンと、それを嘲笑うかの様なドラクール。
「言っただろう、『裏は取れた』と。殺人犯は判明している。」
「ベネディクトが指揮を取っての犯人捕縛劇って訳だ。それ、何処に俺の出る幕があるんだよ?」
剣術に長ける彼女。
将軍を勤める彼女。
普段は穏やかな人格だが、断固とした善を信念としている。
目に映るこの国師と、同じに。
━━勧善懲悪など、無意味なのに。
ドラクールはやはり気力のない瞳でぼんやりそう考えていた。




