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彼は懐紙を取り出すと、慣れた手付きで血糊を拭い始めた。
「僕の名前はリュユージュ・ルード。職業はベネディクト・クロイツァー将軍直属軍 第二隊隊長だよ。」
皆、固唾を飲んでリュユージュの一挙一動に神経を尖らせていた。
何せ彼は未だ抜き身の剣を手にしたままなのだ。いつ斬られるとも分からない状態で、目を離す事など出来ない。
当のリュユージュは、手首を押さえながら血塗れの床をのた打ち回っている男を蔑視した。
「それで、この男は一体何者なの?」
「あ…、さ、山賊の…頭目でさ…。」
俄然、彼の瞳が鋭く光った。
同時に、頭目を足で突けやると両肩を踏み付けて押さえ込んだ。
「悪者は僕が処刑してあげる。」
リュユージュは嬉々とした口調で頭目の頸部に刃先を向けた。
次の瞬間。
翡翠色の瞳を爛々と輝かせた彼の蜂蜜色の髪は、鮮血に染まった。
「…っ…がっ…はっ…!!」
横一文字に斬られた頭目の喉元はぱっくりと開き、まるでもう一つの口の様に見えた。
「あ、失敗しちゃった。」
どこか落胆した様子のリュユージュは腰を抜かした先程の男や他の野次馬を振り返ると、問い掛けた。
「貴方達は将軍が執行した斬首刑を見た事ある?」
皆、首を横に振る。
「誰もないの?もったいない。」
顔色の失われた一同を見渡し、彼は微かな溜息を吐いた。




