Stage8:轟砲
ついにもてぎで行われるレースの日がやってきた。
「おっ!今年は去年よりさらに人が多いぜ!」
「本当だな」
今川と石井が口々に言う。
「俺も去年来たけど…緊張でほとんど覚えてないなぁ…」
土谷も来ていたようだ。
「うわぁ…人とメーカーのテントが一杯だぁ…」
「キ、キャプテン!」
「どうした、根本」
「あれ、高校生じゃないですか…」
高校の名前が入ったジャージを着ている。
「ありゃ…咲山高校の芝田伸二だな。…あれでまだ2年だぜ。」
石井が割り込んだ。芝田の周りにはマスコミが。
「全く、ちょっとイケメンだからって、マスコミにちやほやされやがって…」
石井が嫉妬したようだ。
「確かに。うちはメガネ主将にノッポにゴツい男…」
「そ、それ以上言うな…」
土谷が止めに入る。
「ま、それはさておき、プロの選手もいますね。」
「ああ、あれは招待選手だ、桜川。右にいるのがブリジロックの里内選手、真ん中がスキル・シマダの坂野選手、左が、エキップアクタの武田選手だ。ま、どれもそこそこ活躍している選手だな。あの3人は6時間部門に出る。」
「先輩と同じ部門ですね。僕ら1年は4時間ですけど。」
このレースには、2時間、3時間、4時間、6時間の部門があるのだ。
「おっと、あと1チーム忘れてないか?水明高校の今川キャプテンとやら。」
気がつくと、後ろには坊主頭の男が立っていた。
「お前は…」
「知らんのか?江川学園の尾田道信。お前と同じ、2年だ。このレースには俺だけの参加さ。」
江川学園。毎年茨城県からIH出場を多くの種目で決めている。
「そう簡単に勝たせると思うなよ…」
「出来たばかりだからってナメてるな?痛い目にあうぜ。」
今川と尾田が激しい火花を散らしていた。
「おい今川、そろそろ準備しようぜ。レース開始まであと1時間だ。」
その雰囲気を打ち壊そうとして、石井が間に入る。
「待ってろよ、今川。」
「その台詞、そのままお前に返す!」
5人は、ミーティングをしていた。
「…とまぁ、4時間部門では、まず完走を目指すこと。いいね。」
「「はい」」
2人が返事をした。
「そして6時間部門。第一目標としては、あの招待選手3人にきちんとついていくこと。そして第二目標は、個々の弱点をこのレースで浮き彫りにして、IH予選までの1ヶ月の間に解決することだ。」
IH予選…その言葉が全員に重くのしかかる。
「そして今日の最大の目標は…もちろん優勝だ!そのくらいの気持ちで行け!」
「「おう!」」
石井と土谷が応じる。
そして、5人が円陣を組む。そして一瞬忘れかけられていた須藤も入る。
「ガンバルゾォッ!」
「「「「「オオオッ!」」」」」
<6時間部門に出場する人は、招待選手から順番にスタートラインについてください。>
マシンの手入れはした。練習もした。休息もしっかりとった。疲れは残っていない。今のところ、万全の状態と言えるだろう。今回のレースでは特にエースを決めてはいない。目的が違うからな。…なに今更心配してるんだ。やれるさ、絶対にな。
今川はそんなことを思いながら自転車に跨った。
6時間部門に出場するメンバーのゼッケンは、
水明高校
今川37番、石井38番、土谷39番
江川学園
尾田198番
咲山学院
芝田112番
となった。
<さぁ、いよいよレースのスタートです。実況は私眞田、解説は牧洋平さんにお越しいただいています。よろしくお願いします>
<よろしくお願いします>
実況と解説の声が聞こえる。しかし、心臓の音のほうが大きくなっていく。スタート前の、独特の沈黙。
ドクッ…
ドクッ…
ドクッ…
パァン!
6時間に渡る、長いレースが、今スタートした。
レグルスです。
スタート!というわけでレーススタート!これから6時間に渡るながーいながーい戦いが始まるわけです。登場チームは3チームプラスプロ。これだけ書くのも大変なのに、話が進んだらもっと書くことになりますから、頭がこんがらがっちゃうかも…