Stage10:今川の過去
去年のジャパンカップに出場していたメンバーたちにより、今川の過去が明かされる。
「あいつは、あの山口と、ジャパンカップの山岳で一対一でやりあった男だ。」
「えぇ!?あの山口!?翔邦の?」
芝田と高井が話している。
(…なんか噂されてるな)
もちろん今川の気づかないわけはない。(特に高井の大声のせいで)
「去年のジャパンカップのチャレンジ部門でのことだ。―――
その年、参加していた高校生は俺、山口、今川、そしてあと2人くらいいたかな…。ジャパンカップの山岳の傾斜は結構きついから、集団もだいぶ崩れていた。先頭集団にいた俺は、後半の平地に脚を残しながら上っていた。その時だ。アタックしたやつがいたんだ。
それが、今川だった。
そして、そのアタックに乗ったのが山口。今川はすぐに山口に追いつかれ、追い抜かれていった。だが…」
「だが?」
「俺が完全に振り切ったと思ったところだ。一時は俺の視界から消え去っていた今川が一気に追いついた。そして、山岳のトップを取ったのは、奴だった。」
山口が、自分より少々背の低い男に話していた。
「へぇ〜、でも山口先輩、その今田だか何だかって選手、平地ではどうだった?」
どうやら、山口の後輩のようだ。山口は2年なので、彼は入部したての選手であろう。
「ま、今川はそのあと特に目立ったアタックとかはしなかった。最終成績は俺が7位、奴が15位。そこそこいい順位だった。」
「ほぅ、でも、この天才ルーキー東海林、いつも先輩と練習してますからねぇ、ま、山岳で俺とやったらコテンパンにしてあげますよ。」
そう、彼は翔邦高の1年、東海林史憲。自称天才ルーキー。だが、中学時代にレーシングクラブのエースとして活躍した経験があり、その自信は決して過信や妄想といった類ではない。
「下手な過信は禁物だぞ、東海林。だが、入部早々山口についていけるとは、まさか私も思わなかったがな。うちの3年でもついていけない奴がいるほどだ。」
「もちろんです監督!天才ですから!ナハハハ!」
翔邦を去年のインターハイ、選抜優勝に導いた監督、更級。観客として3人はレースを見に来ていた。
レースが始まって、すでに2時間が経とうとしている。
4時間部門に出場している桜川と根本は、第二集団につけている。その横を、6時間部門の先頭集団が通り過ぎていった。
「やっぱり先輩たちは速いなぁ」
「でも桜川、なんかつまらないな。先輩たちなら、なんかアタックを仕掛けそうな感じがするんだが…。」
その根本の予想が、まさか当たるとは、誰しも思わなかっただろう。
「なぁ、今川。前に誰かが言ってたんだ。最近のホビーレースは、アタックが全く出なくてつまらないんだとさ。」
「ほう」
「変にヨーロッパのレースを意識して、果敢なアタックが出ない。そんなアタックが出たほうが面白いって、言ってた。」
「なにが言いたいんだよ、石井。」
「―――ちょっと、行ってくる」
やっと今川の過去、そして新たなキャラ登場!
東海林は、企画段階から「やっぱ、こういう『自称天才』みたいなキャラは必須だよな」ということで用意されていました。やはり、いろんなところにSLAM DUNKの影響入りまくりですね。スラダンは私の大好きな漫画ですから…。
次回からは、水明メンバーのマシン紹介でもしていきたいと思います。