「絢沙くぅん、君はこれから僕の親友ねぇ~ 」 1
高校1年の夏。
クラスの奴らが、大体誰が誰とつるんで、どんなグループに誰がいて、誰がどんな役割になるかが大体決まる時期。
人間関係が、大体構成されてクラスが機能していく....世間一般様のいう青春ってやつは、俺が思うに此処でやっと始まるんじゃないだろうか?
これは、まったくもって俺の見解だが、まずまず、世間一般のいう青春という物は、そもそも、人との付き合い即ち関係ががちゃんと定まってないと、始まるに始まれないと思うのだ。
それって、入学したての春に全部決まってたまるかよ、個人的に大体それが決まるのは、夏頃だと思う。
よって俺は、青春という言葉はこれより朱夏にかえるべきだと思う。
なぜ朱夏かというと、中国では、春は青、夏は朱(赤)、秋は白、冬は玄(黒)と季節に色をあてるらしい、日本でいう青春という言葉の語源はここからだ、なので春が青なら、夏は赤(朱)だと決まっている。
さてさて、それは置いておいてだ、「前置きはいいから俺のそんな、朱夏について話せよ」なんて、読者様方は思っている頃じゃないかだろうか!
そうかそうか、そうだよなー....聞きたくなっちゃうよなー、うん....よくぞ聞きたくなってくれた!!
俺という人間には、特に趣味がない、そして基本的にアンニュイとしている。
まぁ、頭の中はこの通り、全然元気満々マンなんだが....なんというか、頭ではいろいろと考えても、行動に起こせないタイプの無気力症なのだ。
そのため、なんとなーく過ごして終わってしまった中学時代、卒業まじかになってやっと、なんとなーくだが、高校生になったら、自分が納得する何かをしなくちゃいけないなーと、なんとなーく考えていた。
俺の中学時代はというと特に平凡で、中二病に感染することもなく、普通に部活やって、普通に友達つくって、普通に彼女つくって終わってしまった。
やはり話してみると普通すぎるこの中学時代を歩んできてしまったためか、こういった、なんだか偏った思考になってしまった中学卒業時、遅めの中二病に発症してしまった。
でも、そんな根本を考えるようなことをするより先に、自分に正直になって、普通の人間ではしないようなことを、そうだ高校生になったら中学の時味わえなかった、俺だけの青春....じゃないな、朱夏を見つけようと思った。
誰に迷惑をかけるわけじゃない中学時代を歩んでしまったのだ、だからどんなことでも、誰に迷惑をかけてもいい、よしほかの誰かとは違うことをしよう!
っと思ったのだが.....
そんな気になる俺の現状がこちら。
「絢沙ぁー、今日転入生来るらしいぜ。 」
「あやっち、そいつ男子だったら俺等のパシリにしようぜ。 」
前者のパツキン鼻ピアスがヤス。
後者の今時珍しいリーゼントがヒロ。
「あー....いんじゃね.... 」
そして、一人だけ冷めたテンションで肩を組んでくる二人をあしらっている、パツキン耳ピアスが俺、天原絢沙だ。
見た目はもっぱなチャラチャラ男なのに、女の子みたいな名前をしているのはあまり気にしないでいてほしい、これでも気にしてるんだから。
まぁ、それは置いておいてだ。
___ ...って、なぜ!?どうしてこうなった!?....と聞きたいのかな??
そうだな、俺も聞きたい....いや知ってるけれども....原因はもちろん、俺の無気力症による症状だ。
俺はなんで変なところでアンニュイなのだろうか....
最初は、入学式の日、さっきのこいつらとの絡みみたいな感じで、ヤスとヒロが俺をパシリにしようとしてきたのが始まりだ。
そのとき意外とケンカが強い俺が、この二人をボコボコにしたら、なんか「お前ならここの地区の頂点とれるよ」っとか言いだして、「一緒に不良して頂点とろうぜ」って、熱く熱弁されて断るのもなんか面倒だなーっと思って適当にあしらった結果がこれだ。
わかるだろうか、俺はこういうところで、アンニュイなんだ....今回の場合、頂点とるとかそんなだるいことしたくないけど、今こいつらを振り払うのも面倒だなー.....ってきな思想なのだ。
結果、確かに一般とは違う事をしているが、非常にダサくて残念な感じの朱夏になりそうになってしまった....。
しかし関わってみると、この二人もなかなか捨てがたい人格の持ち主で、いつのまにか俺の日常、即ち俺の高校生活での朱夏....っとなってしまった、俺、正直こいつら好きだ....だから別にこれでもいいかなと、アンニュイな思考の俺がいる....それが今現在に至るわけだ。
まだ高校生活も始まったばかりといえばばかりなのだが....出だしは肝心で、俺はおそらくここから抜け出さずに、だらだらと適当な感じで、この地区の頂点をとるのではないだろうか.....
何もしてない、真っ新な状態での新しい事ならいいのだが....できてしまった日常を壊してまで違うことをするのは、非常に面倒だ、そんなことなら、中学時代の理想なんてどうでもいい....ある意味では、一般とは違うことをしているし。
まぁ、俺の話はこの辺にしておいてだ、この時期に転入生とか超珍しいよね、どんな子だろ、男子なら俺のパシリか。
キーンコーンカーンコーン
っと、朝のホームルームが始まるようだ、チャイムの音ともにノータイムで、担任の朝林先生が教室の扉を開けた、時間感覚すごいんだよな、うちの担任。
「んじゃ、また後でな、あやっち。 」
「うぃ絢沙っ。 」
「おぅ。 」
軽く、手を振って自分の席に戻る二人に軽く手を振る。
ん?不良なのに、俺たちトリオはなんでまじめに朝のホームルームにいるんだよって?
それは、朝のホームルームと授業はちゃんとうける、テスト期間は不良活動禁止っていう俺の方針だ、一応この二人のリーダー俺だし。
やっぱり、ちゃんと単位は取りたいしね。
それに俺、何気成績学年トップだし...それは譲りたくないなーって。
成績不振で、親に呼ばれたり、先生に呼ばれたり、面倒でしょ。
朝林先生の低めな視線が、ヤスとヒロが席に着くのを確認すると、今日の日直に目で合図を送る。
「きりーつ、れー。 」
朝の眠たそうな、日直の寝ぼけ声と、だるそうに立ち上がる生徒達。
皆が着席するのを確認して、朝林先生は口を開く。
「今日から転入生くる....はいって。 」
朝林先生の鈴のような声色とは裏腹に、ガンッと乱暴に教室の引き戸が勢いよく開けられ、教室に大きな音が響いた。
転校生と聞き少し騒めいていたクラスが一瞬で静まり返る。
おいおい、出だしっからなんつー態度だよ、ろくなやつじゃないな.....。
「はぁ~いっ....どぉーもっ、どもどぉ~もっ。」
ひょこっと教室の開けた扉から、顔をのぞかせる転入生。
顔は中性的、髪は短髪なので、おそらく...男、、だろう?...男にしては、女々しすぎる顔な気もするので、判断するのは難しいが....__っあ、ほら!
ぴょんっと跳ねながら教室に入ってくる転入生は、男子用の制服を身にまとっていた。
「教室の扉....優しく開ける....先生....今おこ。」
「わぁ!うちのせぇ~んせぇ、小っちゃくてお人形さんみたぁいですねぇ~」
エヒィヒっと、少し甲高い笑い声とともに、ぴょんぴょんっと教室に入った転入生が、朝林先生の頭をぽんぽんと撫でる。
ばっ....バカ転入生、朝林先生は、確かに見た目こそ、小っちゃくて可愛らしく、さらにちょっと不愛想アンド常時ポーカーフェイスなところがあるのでほんとーーーに確かに、誰が見てもお人形さんみたいに見えてしまうお方で、一部の男子からの支持があり学校の同好会に『朝林先生ファンクラブ』なるものがあったりするお方、....なのだが....
「式鐘伊織」
「はぁいっ? 」
「___....後で職員室。 」
ニコッと、彼女が珍しく笑顔になる。
「___っ!? 」
やばいやばいやばいやばい。
彼女が笑顔になった瞬間、教室全体が凍り付いた。
俺が知る中で一番、いや、おそらく世界で一番怖い微笑みができる人間は、おそらくこの朝林先生だ。
俺でも、この笑顔の前では、声を上げて叫びそうになる。
きっと正規の方法で笑わせたのならば、想像しただけでも幻想的で、とても素晴らしく愛らしい微笑みをしてくれるだろうが。
しかし、前記の通り、朝林先生は常時ポーカーフェイスだ、そんな笑顔はこの学校の誰一人としてみたことがない。
もし見たことがあるとするならば、この鬼人の如き禍々しいオーラを発する、この猟奇的な笑顔だけだろう。
彼女は、めったなことではこの笑みを見せないが、ただ、身長の事をちょっとでも、いじるもしくは、バカにすると....こうなる。
しかも、今回は、ちょうど下の階に職員室があるのも関係があるが、親指を下に向けている。
完全にゴートゥーヘルな状況....。
転入せぇぇえええいっ、謝るんだ!!今なら間に合う!!!!今すぐ土下座しろぉおおおおお!!!!!
「はぁ~っい!わっかりましたぁ~!!」
ブンブンと、テンションとは裏腹にブカブカの制服の袖をだるそうに揺らす。
その態度にザワザワと教室の雰囲気が変わる。
「席はどこに座ればいいんでしょぉ~かっ! 」
朝林先生は無言で笑顔のまま、俺の右の席を指さした。
まてまてまて、確かに、一番後ろの席に座っている俺の隣は、席を置けば座れるようになっているが。
初日から、あの優しい朝林先生に、あの笑顔をさせたような、狂ったやつをこっちによこすんじゃぁねぇええ!!
俺の切望とは他所に、ぴょんっと一歩、教壇付近から、一歩こちらの方へ歩を進めた。
「___っと、いけないいけないっ。 」
キュッと、靴が擦れる音を奏でだし、綺麗に回れ右すると、ニコニコ笑みを浮かべる朝林先生のいる、教壇の方へ、ぴょんっと乗り出す。
おぃおぃおぃおぃ....。
「せんっせぇ~、ちょっっと、一歩右にどけてくださぁい。 」
教室の温度はもはや宇宙空間、温度はもちろん絶対零度。
もうだめだ、とクラスの全員が思ったとき。
ガガガッと、チョークで殴り書きする音が宇宙空間となり空気がないはずの教室に音が鳴り響く。
時間にして2秒。
「じっこしょぉ~っかいおくれましったぁ....。」
黒板には、チョークの特徴を最大限に活かしてできた、達筆の、『式鐘 伊織』という文字。
___って、えぇえ!?!?、今の数秒でこれ書いたの!?
「ぼく、式鐘 伊織ですぅ.....よろしくおねがいしますねぇ....。」
ニコォ、と不気味に笑う彼はきっとただ者ではないのだろう、頭がおかしいのは確かだけど....。




