表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オレの恩返し ~ハイスペック村づくり~【書籍化&重版】  作者: ハーーナ殿下
【第4章】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

97/177

第91話:【閑話】実りの秋~前半~

 これはオレたちウルド荷馬車隊が、帝都から村へ帰還した後の話である。

 時期は秋。ウルド村では穀物イナホンの収穫が終盤にさしかかっていた。


「収穫は、この田で最後だ」

 

 刈り終えた場所を確認して、オレの合図をする。周囲にはカマで刈られた水田の光景が広がる。

 栽培していた穀物イナホン刈りが、この最後の区画で終わるのだ。


「今年は早く収穫できそうだね!」

「前は腕と腰が痛くて泣きそうだったからね!」

「僕たちはもうイナホン刈りの達人だね!」


 収穫完了を目前にして、村の子ども達は笑顔を浮かべている。

 だが楽勝との言葉とは裏腹に、誰もが全身が汗と泥でまみれていた。自分たちの力で成し遂げたことに、素直に感動している。


 そんな村の子ども達の様子を、指導係りであるオレは眺めていた。


(イナホン栽培は二年目になるが、今年は大豊作だな)


 刈られて棒に乾燥されているイナホンを見つめながら、オレも感慨にふける。

 イナホンは稲と同じく、栽培には一年を通して手間がかかる。


 オレが村に来てから二年をかけて、野牛ワイルド・オックスと農具で“田起こし”をして、田んぼの土を良くしてきた。

 更には自然の堆肥たいひや稲植えで収穫量も増やす。

 これにより最初の事に比べて、数倍のイナホンの実の収穫が可能となった。


 だが専用コンバイン機械のないこの世界では、稲刈りはまだまだ人力で行う重労働。こればかりは仕方がない。


「ヤマトよ、イナホン刈りはここで終わりか?」

「ああ、そうだ。シルドリア」

「なんだ、つまらんのう」


 誰もが疲労困憊ひろうこんぱいのなか、赤髪の少女だけは余裕の笑みを浮べていた。

 それはヒザン帝国の皇女シルドリア。

 つい先日からウルド村に居候している新しい住人である。


「すごいね、シルドリアちゃんは!」

「一人であんなに、たくさん収穫したのに、まだ元気なんだね!」

「僕たちと背はそんなに変わらないのに!」

「ふふふ……わらわを誰だと思っておるのじゃ。このくらいは余裕なのじゃ」


 子ども達の言葉にあるように、皇女シルドリアの刈り取った量は尋常ではない。

 普通の十倍以上のイナホンを、たった一人で狩り終えていた。さらにはまだ体力的に余裕がある。


「たいしたものだな、シルドリア」

「な、なにを急に……そんなに褒めても何も出ないぞ、ヤマト」


 謙遜しているが、シルドリアの身体能力は凄まじいものである。

 このウルド村の子ども達や少女リーシャも、先祖ウルド人の血を引くために能力は高い。


 だが彼女の場合はそれ以上であった。

 少しコツを教えただけで、両手に鎌を構えて次々とイナホンを刈り取ったのだ。


 樹海遺跡での霊獣との戦闘でも感じていたが、現代人とは別次元の資質をもっていた。

 これは彼女だけではなく騎士リーンハルトや帝国の大剣使いバレス、そして皇子ロキもそうである。


(この世界の住人は明らかに、現代人より身体能力が高い。さらにその中でも特異体質な者がいるのであろう……)


 荷馬車隊で各国を回ってみると、彼ら以外にも腕利きの騎士や兵士たちはいた。

 オルンと同じ都市国家群の戦士団長や、傭兵団の巨躯の団長。ヒザン帝国の帝城にいた書く騎士団の団長など。


 だが彼らは“かなり強い、だが普通”であった。

 人の域を超えていないのである。

 巨大な巨竜アグニと単身で渡り合える、シルドリアやバレス、リーンハルトとの間には、絶対に超えられない壁がある。


(シルドリアの話では、同等の強さを持つ騎士は、帝国にも皇帝を含めて、あと数人しかいないという話だ……)


 そう考えるとこの大陸の人口に比べて、資質を持つ者の比率はかなり低いのかもしれない。

 その辺の情報は近いうちにまとめておく必要がある。

 

 霊獣管理者レイジュウ・マスターを名乗るあの少年が、次にいつ現れるか分からない。その時のための対策として。


「ねえ、ヤマト兄ちゃん。ここのイナホン刈りも、もうすぐ終わるよ!」

「あっ。なんか、また“難しい顔”しているね!」

「きっと、お金の計算をしているんだよ!」


 そんな考えごとをしていると、子ども達から声がかかる。

 どうやら自分たちだけで、最後のイナホン刈も終わらせていようだ。

 三回目となるイナホン刈りで、子ども達も手慣れてきたのであろう。


「浮かれるのもいい。だが来年の春の田植えに向けて準備があるぞ」


「えー、本当に人使いが荒いよね、ヤマト兄ちゃんは!」

「本当だよー」

「おにー」


 浮かれていた子ども達にビシッとさせる。

 身体能力の高い村の子ども達であるが、精神的にはまだ幼い者も多い。

 “勝って兜の緒を締めよ”の精神を教え込む。


「だが、今日の午後から収穫祭で、明日は一日休みだ」


「おお!」

「早く狩り終えて、身体を洗って収穫祭の準備をしないと!」

「今宵はご馳走だね! 急げー!」


 オレの言葉に誰もが歓声をあげる。

 先ほどの疲労具合はどこに。子ども達は一斉に稲刈りを終わらせていく。


(相変わらず元気の塊だな……)


 三度目のイナホン刈りは大豊作に終わる。

 そして村で一番盛大に行われる収穫祭が始まるのであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ