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第157話:対竜頭戦闘

 帝国軍と南蛮軍の男たちが、水龍王に突撃していく。


「さて、ロキ。こっちも負けずにいくぞ」


 そんな男たちの突撃に続き、オレたちも動き出す。

 残る龍頭に向かって攻撃をしかけるのだ。


『ガフォオオオン!』


 それは相手も同じで考えだったらしい。

 四つの竜頭が怒り狂いこちらに突撃してくる。


「リーシャさん、今だ!」

「撃て!」


 後方のウルド荷馬車隊に攻撃の指示をだす。

 同時にリーシャの号令が放たれ、クロスボウ隊の攻撃が開始される。


 ウルド式のクロスボウは金属板すら貫通が可能。その強力な矢が烈火の如く、四つの竜頭に襲いかかる。


『グルシュウウウ!?』


 比較的鱗の鱗が薄い、頭に攻撃を受け水龍王は叫ぶ。

 だが流石は鉄よりも固い龍鱗である。致命的なダメージは与えられていない。


「今じゃ、いくぞ! 皆の者!」


 だがクロスボウ隊の攻撃で、水龍王に隙が生まれていた。


 そのタイミングを狙ってシルドリアが飛び出していく。それと同時に他の仲間たちも突撃していく。


「兄上、置いていくぞ」

「シルドリア。私を誰だと思っているのだ? 先に、いくぞ!」


 まずはシルドリアたちヒザン兄妹が、雷光のように突撃していく。


 共にスピード重視の戦闘スタイルで、大陸でも最高峰の騎士たち。

 水龍王は二人を目で追うことができず、切り刻まれていく。



「優男、テメエは右側から!」

「ああ。バレス殿は逆を頼む!」


 リーンハルトとバレスの二人も動き出す。

 不動の防御力の大盾と、圧倒的な攻撃力の大剣。その二人の見事な連携で、竜頭を切り裂いていく。



「おお、さすがはロキさまたちだ! 後れをとるな、我らもいくぞ! 真紅クリムゾン騎士団……全突撃フル・チャージ!」


 そんなロキたちに即発されて、帝国軍の士気は更に高まる。


『グルシュウゥゥウウウ!』


 四つの頭に次々と攻撃を受けて、水龍王は叫ぶ。


 これは古代から南海の王者であった水龍王が、初めて受ける痛み。そして耐え難い屈辱であった。


『ガフォオオン!』

『ガフォオオオン!』


 そんな劣勢な水龍王は、残る二つの竜頭で反撃を試みる。


 狙うは最初に牙を吹き飛ばした、矮小な存在。オレに向かって二つの竜頭が、同時に攻撃をしかけてきた。


「ヤマト、くるぞ!」

「お気をつけてください、ヤマトさま!」


 レイランとリーシャも身構える。

 上空からの襲ってくる竜頭に、攻撃を仕掛ける。


「なんだ、あの動きは⁉」


 だが彼女たちの攻撃は当たらなかった。

 先ほどとは違い、竜頭の動きが空中で変化している。その不規則すぎる動きを、目で追えずにいるのだ。


「なるほど、一個体として、学習と成長をしているのか」


 オレはその動きを冷静に分析する。


 おそらく他の四本の竜頭が受けた攻撃を、本体が学習しているのであろう。

 並列思考とでもいうのであろうか。かなり厄介な存在である。


『ガフォオオン!』

『ガフォオオオン!』


 レイランたちを翻弄した竜頭は、オレに標的を変更してきた。

 変則的な動きで攻撃を仕掛けてくる。


「面白い動きだ……だが、遅い!」


 竜頭の動きは既に見切っていた。

 襲って来た二つの竜頭を、ガトンズ・ソードで同時に切り裂く。


 たしかに変則的素早い攻撃だった。だが何の技もなく単調。

 先ほど戦ったロキに比べたら、止まって見えるにも等しい。


『グルシュウ!?』

『グルシュウウ』


 鋭い反撃をうけた水龍王は叫ぶ。

 これまで経験したことの激痛が、大顎の中に走っているのであろう。


「まだ終わりではない。最後の仕上げだ!」


 切り裂いたのは鱗の薄い部分であった。

 その二つの穴に、装備していた二本の短槍に刺し込む。そのまま躊躇することなく、槍の引き金を引く。


『グ……』


 今度は叫ぶことすらできなかった。


 槍の穂先は激しい光を放つ。同時に二つの竜頭を、木っ端みじんに吹き飛ばす。


 オレが一瞬の攻防で、二つの竜頭を倒したのである。


「な、なんだ今の光は……?」


 後方で見ていたレイランは絶句していた。

 そういえば彼女は初めて見る攻撃である。


「これは“強弩槍バリスタ・ランサー”だ。攻城兵器を改造した霊獣用の武器だ」

「そのサイズで、攻城兵器だと……」

「ああ。原理は簡単だ」


 唖然とする彼女に強弩槍バリスタ・ランサーの原理を説明する。


 短槍の中に特殊な素材“火石神の怒り”を使用してと。刺激を与えることにより爆発する性質。

 それを利用した対霊獣用の決戦兵器である。


 三年前にオレが設計したこの短槍は、霊獣討伐で未だに一線級。


 だが欠点として発射時に、凄まじい衝撃が跳ね返ってくる。

 普通の者なら身体が吹き飛ぶほどの反動力であった。

 そのためオレしか使えない危険な武器である。


「げ、原理はよく分からないが、凄いのは分かった。それにしても私の出番があまりなかったな」

「いや、レイランたちが牽制したお蔭で、竜頭の動きが見えた。感謝している」


 さすがのオレも複数の竜頭を、同時に相手にするのは骨が折れる。

 だから牽制してくれたレイランとリーシャのお蔭で、一気に勝負を決めることができたのだ。


「さて、他も勝負がつきそうだな」


 思っていた以上に、自分たちは手こずっていたのであろう。

 他の者たちの戦いも、決着がついていた。


 まずはリーンハルト・バレス組は見事に、竜頭の一つを倒していた。


「最後はバレス殿の魔剣が、止めを刺したぞ、ヤマト」

「今回は優男がいたからな。手柄は半分ずつだぜ」


 彼らの戦いは力強いものだったという。

 リーンハルトが大盾で、相手の動きを耐え防ぐ。その隙に二人で竜頭に攻撃を仕掛ける。


 最後はバレスの魔剣“暴風マッド・ストーム”が火を噴いたのであろう。

 魔剣から発せられた巨大な真空斬撃が、竜頭のコアごと吹き飛ばしていた。



「おや、妾たちは三番目か? こっちも終わったのじゃ」

「待たせたな、ヤマト」


 ロキたちヒザン兄妹も見事に、竜頭の一つを倒していた。


 スピードと技に長けた二人は、終始にわたり水龍王を圧倒していたという。


 最後はロキの魔剣“幻影ファントム”の力によって、相手の動きを止める。そのままシルドリアが全身全霊の一撃で、“コア”に止めを刺していた。



「さすがお前たち四人は、別格だな。さて、あちらの両軍も終わったようだな」


 遠目に左右の陣での戦いを確認する。


 そこでは帝国軍と南蛮軍の男たちが、勝利の雄たけびをあげていた。

 その足元には、息絶えた竜頭が転がっている。彼ら騎士・戦士たちの被害も、決して少なくはない。


 だが誰ひとり怯まずに突撃していったのであろう。

 今は勝鬨かちどきを上げて、勝利の美酒に酔いしれていた。


「さて、ここまでは作戦通り。だが気を引き締めていけ」


 オレは全員の気を引き締める。

 今のところ六つの竜頭の全てを撃退していた。


 だが海中にはまだ水龍王の本体がある。まだ油断はできない状況なのだ。


「見ろ、ヤマト。水龍王が動き出すぞ!」


 レイランが相手の動きを感知する。


 水龍王の本体に動きがあったのだ。海面には水泡が溢れ、海岸に波が押してきた。


「くるぞ、みんな。気を付けろ!」


 オレは討伐体隊に、最大級の警戒を指示する。


 全ての頭を潰したとはいえ、相手は霊獣の中でも最大級の水龍王。

 最後にどんな足掻きがあるか予想もできないのだ。


「ヤマト、あれを見ろ……」


 同じくレイランの声に全員が反応する。


 そこには海中から出てきた、新たな竜頭が見えていた。形や大きさは先ほどと同じである。


「しぶといトカゲ野郎だな! まだ最後の一匹が残っていやがったか」


 舌打ちをしながら、バレスが息を整える。


 先ほどの竜頭との戦いで、皆の疲労がピークに達していた。

 だが残る竜頭が一つなら、何とかなるであろう。


「ヤマトさま……あちらを……」


 リーシャが他の異様な気配に気がつく。

 そこには二つ目の新たな竜頭が、水中から出てきたのである。


「そんなバカな……」


 レイランの三個目の影を見つけて、声を震わせる。

 そして竜頭の影は、どんどん増えていくのであった。


「そんなバカな……」


 その絶望的な光景にレイランは立ち尽くす。


 何故なら水中から新たに出現した、竜頭の数は全部で十三。


 先ほどの倍以上の竜頭が、更に出現したのだ。

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