エアガン・折り畳み傘・腕時計
そこにあるものをキーワードに書いてみました。
暇とリクエストがあれば書いていきます。
後書きは『俺の周りが異常すぎる』の終盤と同じ形式になっています。
どうぞ。
「先輩せんぱ~い。」
ドタドタと誰かが走って来る音がする。まったく、騒々しい。
「なんだ、蜜柑。」
「聞いてくださいよ先輩!こんなの見つけたんです。」
「なんだこれ?エアガンか?」
うちの後輩が拾ったものはどうやら『ソフトエアーガン』、通称『エアガン』のようだ。
「そうなんですよ。ここの廊下を歩いてたら、偶然見つけちゃって。」
そんな偶然があるのかと後輩の蜜柑と話していると、突然蜜柑がこんなことを言い出したのだ。
「折り畳み傘の耐久性を試しましょう!」
だ、そうだ。正直言ってどうでもよかったのだが、
「ほら、折り畳み傘って持ち運びに便利でも、すぐに風とかで折れちゃうじゃないですか。その傘が、この銃撃に耐えられるかを試したいんです!」
と押し切られてしまった。めんどくさい。まったくもって面倒だ。今日は今はまっているラノベの最新刊が発売するから、早く帰りたかったのに。
しかし、神というのは気まぐれだ。今日に限って雨が降ってしまった。・・・俺が家を出た後に。
まったく、今日は晴れると言っていたじゃないか。騙したな!お天気アナウンサーもグルだったんだな!
「すぐやみそうだったのに、本降りになってきたな。」
「ほらほら、早くしましょうよ先輩。」
てか、傘あるなら貸してくれよ。家近いし。最悪相合傘でもいいから。
といったら
「え?いやですよ。私、別に先輩の彼女じゃないですもん。」
いつもはベタベタしてくるくせに、こういうときはしっかりしているのである。
「なんだよ、とっくに惚れてるのかと思ったじゃねーか。」
冗談だが。
「先輩の目は腐ってるんですか?そんなわけないでしょ。私がいつそんな素振りを見せましたか?」
「だって、たまにお弁当作ってくれるし。」
「あれは、一人分作るよりも作り甲斐があるからですよ。」
確かに一人分だけだとめんどくさくなっちゃうよね。
「あと、先輩がいつも「金がない、金がない」って言ってるから。」
「本当にないんだからしょうがないだろ。」
趣味ってお金がかかるよね。
「それに、私だって嬉しいんですから。」ボソッ
「ん?なんか言ったか?」
「いえっ、何も。」
心なしか不機嫌になったように見えなくもない?・・・かな?
「それよりも、早く耐久テストをしましょう。」
そんな、企業みたいなことしなくても・・・。
「てか、よく考えたら、いや、よく考えなくても、校則違反物だよな。」
「んん?そういえばそうですね。何故今まで気が付かなかったんでしょう?」
「そんなことは今はどうでもいいことだ。今の問題は、これをどう処理するかが問題だ。」
「そうですね。」
「まず、この学校に『サバゲ部』あるいは、それに準ずる部活は無い。」
「そうですね。」
「では、これはたぶん私物だろう。」
「そうですね。」
「次にこれの持ち主をどう探すかだが、」
「そーですね。」
「・・・どうでもよくなってないか?」
「そーですね。」
「おい、ちゃんと聞けよ。」
「はいはい、聞いてます聞いてます。」
ちゃんと聞いてるのだろうか。
仕方ない、雨が止むまで相手をしてやろう。どうせこれじゃ帰れないし。
「とは、言ったものの、なーんか探すのめんどくなってきたな。」
「だから早く耐久テストを!」
「却下。」
「そんな~。」
コイツの戯言に付き合っていたら、こっちの身が持たん。
「雨もまったく止む気配はないし。」
時間は、・・・午後五時半か。今日は新刊あきらめるしかなさそうだな。
「あっ!先輩の腕時計、スッゴイかっこいいですね。」
「そ、そうか?一昨日の日曜に買い換えたんだ。」
「前のはどうしたんですか?」
「ああ、階段から落としちまって、ガラスも針もダメになっちまったから、買い換えたんだ。」
「それは残念でしたね。大事にしてらしたのに。」
「俺の管理ミスだからな。しょうがないさ。」
「でも、高校の入学祝いのものだったんですよね?」
「まあな。まっ、過ぎちまったことはしょうがねぇ、の一言でかたすのが一番だぜ。」
俺の信条である。今適当に考えたけど。
「でも、よく覚えてたな。この話したの結構前だったろ?」
「あれだけ大事にしていれば覚えてますよ。」
「そんなに大事にしてるように見えた?」
「ええ、傷一つありませんでしたよね。」
「それが普通じゃないのか?」
「その普通が、なかなかできないものなんですよ。」
「それを言っちゃ、傘の耐久性を測ろうとしたお前のものに対する扱いは知れたとこだな。」
「何を言いますか。私は私のものだけ大事にするんです。」
「この傘は?」
「お母さんのです。」
「身内のもそんな扱いなの!?」
「私の傘に打つくらいなら、先輩の耐久力を測ります。」
「なんで俺を打つんだよ!?他にも色々あるだろ。」
俺の教科書とか、俺のカバンとか、俺の筆箱とか。・・・俺のしかねぇ。
「では行きますよー、それっ!」
「バカッ、まてっ!」
あ~あ、打っちゃった。
しかし、折り畳みでも傘は傘。広げていればビービー弾の一つくらい簡単に弾いてしまう。
良かった。傘は無事か。
「先輩!」
「ん?うおいっ!?」
ビックリした!メチャメチャビックリした!何が起こった!?
「だ、大丈夫ですか?先輩?」
「ああ、とっさに腕を出したから、大丈夫。」
そう、俺は大丈夫だったのだが・・・
「あっ!先輩の腕時計が!」
「どうした?ああ、ヒビ入ってんな。」
「ごっ、ごめんなさい!しっかりと弁償しますので、あのっ、そのっ、」
「いいよいいよ。そんなに謝るな。こっちが申し訳ない気分になる。」
「でっ、でも。」
「お前に怪我がなかっただけでも良かったよ。」
「先輩。・・・では何かさせてください!」
「そう言われてもな。」
「なにかしたいんです!」
「そうだな。・・・悪いと思ってるなら、一つ俺の頼みを聞いてくれ。」
俺の願いはただ一つ。
「なんですか?覚悟はできてます。」
「よし、では・・・、俺を傘に入れてくれないか?」
「え?あ、ああ、いいですよ。」
そんなことでいいのかと、その後何度も帰り道に言われたが、今はそれが一番大事だったのだ。
・・・その後部室からエアガンが発見され、二人は反省文を書かされる羽目になるのだが、これはまた別のお話。
はい、初めての方は初めまして。そうでない方もこんにちは。河異零次です。
今回はとある学校の文芸部と同じ方式の『三題話』をやらせていただきました。(漢字あってるかな?)
主「なんだこの肩書は。」
作「しょうがないだろ。君は作中では『先輩』としか出てこないんだから。」
蜜「私は名前あるのに。残念ですね『先輩』。」
主「そこで名前を言ってくれよ。」
作「はい、今回の登場キャラクターはたぶんもう出ないでしょう。」
蜜「え?私たち出番これだけ?」
作「リクエストや指名。ご要望やお題によっては再登場もあり得るかもね。」
蜜「皆、リクエストや意見は随時募集してるから、たくさん送ってね。」
主「そんなテレビ番組みたいな。」
作「では今回はこれまで。」
主「ありがとうございました。」
蜜「応援してねっ。」