表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/43

2-2 かくして条約は改正された

大樹視点。

「うわぁぁ!兄貴!落ち着いてぇ!」


「黙れゴルァ!!邪魔をするなぁ!!!全部ぶっ壊してやる!!!」


俺は暴れる兄貴から必死に逃げ回っていた。


しかし誰だあれは!?


兄貴に何があったんだ!?


「くそっ!」


俺は兄貴が投げたバナナを後頭部に受けながら、急いで洗面所に逃げ込んだ。


バタン!


「はぁはぁはぁ…。」


外ではまだ兄貴が暴れている音が聞こえる。


「はぁはぁ…ふぅ…。」


何とか息を落ち着けると、俺はドアを背に座りこんだ。


と、視界に白い物体が入る。


「………?」










「むぅ…。」










「………………!?雪!?」


俺は急いで白い物体に歩み寄る。


そこにはあらん限りのバスタオルで縛られ、みの虫状態と化した雪がいた。


しかも口は手ぬぐいで綺麗に縛ってある。


「なんという無駄のない縛り方だ…!」


「むぅ…むぅ…。」


俺は改めて兄貴の偉大さを学んだ。














兄貴が落ち着き、掃除を命じられてから一時間。


凄まじい惨状と化していた部屋は、なんとか元の姿に戻っていた。


「………掃除、終わりました。」


「よし、二人とも、そこに座って。」


俺と雪はソファに座る兄貴の前に正座した。


兄貴は俺達を見下ろすと、小さく溜め息を吐く。


「ルールブック…出して。」


俺は兄貴に命じられるがままにルールブックと呼ばれるメモ張を取り出す。


「一通り確認していこうか。」


「うん。」




基本ルール


1・自分達の身の周りの世話は自分達でする。掃除は当番制。(当番についてはカレンダーを参照)



2・日中兄貴は寝ているため基本的には存在しないものと考える。寝起きが悪いので用事の場合は注意して起こすこと。



3・基本的な生活費や雑費は両親から受け取った口座で済ますこと。(光熱費等は洸平持ち)



4・洸平は仕事で家を空けることが多い為、合鍵は肌身離さず持つこと。



5・各自友人等を招く際は事前に全員に連絡をする。




追加ルール(大樹のみ)


洸平の音楽機材を勝手にいじらない。


洸平の自室に勝手に入らない。


無意味に走り回らない。




「先ずは大樹の追加ルール。『料理をしない』。」


「了解。」


俺はそれをルールブックに書き込む。


兄貴はそれを確認すると、一枚の木で出来た板を取り出した。


「そして君達が掃除をしている間にこんなものを作った。」


俺は兄貴の手に持たれた板をよくよく確認してみる。



『使用中』



「裏には『使用可能』と書いてある。」


………。


「これは…つまり…。」


「洗面所に掛ける。使うときは『使用中』にすること。出たら『使用可能』。わかったね?」


ここまで徹底するか?普通。


一体さっき洗面所で何があったんだ…。


ちなみにその原因となった雪は、横で無表情のまま鎮座している。


「…雪。特に君に活用して欲しいんだけど?」


「…むぅ…。」


雪は何故か不満げに息を漏らす。


兄貴は笑顔のまま雪に呟いた。


「また…縛られたい?」


「うん。」


お前はいったいいつからマゾになったんだ!?


俺は悲しいぞ!!雪!!


「はぁ…とにかく僕は風呂に入って寝る。君達も明日から学校だろ?早く寝てよね…。」


兄貴はそれだけ言うと、ソファから立ち上がり、フラフラと洗面所へと向かう。


ライヴの後だって言うのに…俺達のせいで疲れさせてしまったな。


俺はいまだに不満そうな雪に話し掛ける。


「なぁ雪。」


「何?」


「もっと兄貴の事考えよう?」


雪は目を丸くして俺の顔を見る。


「いつも考えてるよ?」


「………。」


コイツは駄目だ…。


とにかく俺だけでも兄貴のストレスを減らすよう努力しなきゃ…。


俺はそう思い立ち上がると、水を飲みにキッチンへ向かう。


ふと洗面所を見やると、何時の間にか洗面所のドアに何かがかかっていた。




『使用中』




俺はまた兄貴のことが少しわかったような気がした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ