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5-6 リベンジャー、現る

大樹視点…ですが、大樹・雪はほぼ空気です。



街に一つの小さな商店街は朝早くという事もあり、閑散とした静けさに満ちていた。


「で、何処行くんだよ?そろそろ教えてくれよ。」


俺は三歩程前を歩く兄貴と零さんに問う。


朝起きるなり強引に引きずられてきたわけだが、未だに何処に行くのか、目的は何か、などの説明は一切無し。


さらに欲を言えば聞きたい事は山ほどある。


例えばそれは昨日の夕方から無表情に磨きがかかった…もちろん今も視点の前に固定したまま淡々と左隣を歩く雪のことだったり、兄貴の腫れ上がった左頬についてだったり…。


この二つの事柄がどう繋がるのかはわからないが、兄貴の頬の腫れが、殴られた事によって出来たものだという事はわかる。


不本意ながら昔はあの手の傷を幾つも負っていたからな…間違いない。


その兄貴は突然足を止めると、俺達を振り返った。


「ほら、あそこに行くんだよ。」


「あそこって…学校?」


兄貴の視線の先には学校と思しき建築物が悠然と佇んでいた。


「そ、俺らの母校だ。校舎っぽいのが二つ並んでるのは、中学高校が一つくくりになってるからだ。」


と、零さん。


「なんたってここはガキの人数が少ねぇからな、そこかしこに学校を立てても人数が集まんねぇわけ。だからどうせ同じ県立だし、隣接しちまおうってことで出来たのがあの学校だ。」


「ほぉ〜…。」


ずっと都会で過ごしてきた俺には人数が足りないなんてこと考えもつかなかった。


といっても…今更学校行って何すんだ?


母校を訪問するなら俺達を連れてきた理由が…


「ん…?あっ、待てよ〜!!」


いつの間にやら校舎に向かって歩みを進めている兄貴達を、俺は小走りで追いかけた。















「お久しぶりです。」


「うっす、ケンちゃん。おひさし〜。」


俺が追いついた時には既に兄貴達は高校校舎の事務室の小窓を覗いていた。


雪と俺は後方で待機…と、ガタンガタンという物音が事務室の中から聞こえてくる。


俺がそれが何の音かを確認する間もなく、事務室の扉が勢い良く開き、中年の男性が飛び出して来た。


「おおおおおおおおおおおおお前ら!!」


と、中年男性。


白髪交じりの頭に無骨な作りの顔を驚愕に固めた姿は、何故だか屈強な体育教師を思わせる。


「九条に瀬山…!!」


「そうですよ。」


「はっはっは!!ケンちゃん、変わらねぇな!!」


兄貴と零さんは笑顔で中年男性を見つめる。


中年男性はワナワナと体を震わせていたかと思うと、突然その太い両腕で兄貴と零さんの首をガバッっと抱き締めた。


「久しぶりじゃねぇか!オイ!この問題児どもめ!」


「は、離して下さいよ…!」


「く、苦しいからやめろって!」


ガハハと豪快な笑い声を上げる中年男性に絞められながら、兄貴達は必死に声を漏らす。


む…むさくるしい…。


「ん、そこのガキどもはなんだ?」


と、そこでようやく中年男性の視線が俺と雪に向けられる。


「あ…俺たちは…」


「こいつらは僕の弟と妹で、大樹と雪です。」


俺が口を開くより先に、兄貴が手早く説明をした。


中年男性は一瞬驚いたような顔をしたが、直ぐに笑顔を浮かべ俺たちに歩み寄ってきた。


「そうかそうか。俺はそこの馬鹿二人の担任をしてた三島 (みしま)だ。よろしくな。」


「どうも、西河大樹っす。」


「雪です。よろしくお願いします。」


自己紹介と共に俺と雪は三島さんのぶこつ手と握手を交わす。


なんとなく高嶋さんに雰囲気が似ていると思った。


本当になんとなくだけど…。


と、自己紹介が終わったのを見るやいなや、零さんがニヤニヤしながら三島さんの肩に腕を回す。


「ってかケンちゃんさぁ、相変わらず長期休業の宿直引き受けてんのな。暇なんか?」


「うるせぇ!俺だって好きでやってんじゃないわ…てめぇらみたいに無断で音楽室入ってドカドカやる馬鹿がいるからやってんだよ。」


三島さんはうっとおしそうに…しかし少し嬉しそうに零さんの腕を払った。


零さんも特に気にした様子もなくケラケラと笑う。


「なんだ、やっぱ暇なんじゃん。ってか何?俺らに似た、可愛い奴らが居るわけ?」


「何が可愛いだ。…まぁお前に比べたら何倍も可愛いがな。というか…九条ならギリギリ知ってんだろうが、お前が3年の時1年だったやつらだからな。」


話を振られた兄貴は数秒思考した後、軽く首を傾げた。


「…わかりませんね。名前は?」


「田村、北岡、根岸…大体こいつらが一番の問題児だな。お前の後に良くついて回ってただろう?」


兄貴は未だに首を傾げたままだ。


「おいおい…、本当に覚えてないのか?北岡辺りお前のことを未だに崇拝し続けてるぞ?」


「いやいや…教祖になった覚えはないですけど…。」


兄貴は言いながら苦笑した。


多分本当に忘れてるな…可哀想に…。


「それはともかく…絶対まともな人間にならねぇと思ってたんだが、まさかお前らがなぁ…。」


「あ、やっぱり俺たちこっちでも有名だったりする?いやぁ、嬉しいね〜!」

零さん…もっと突っ込むべき所があるような気がするぞ?


一方顔を綻ばせた零さんとは逆に、兄貴は顔をしかめていた。


「…昔は不良だってさんざん煙たがっていたくせに、有名になったら簡単に掌返すんですね。ここの人達は…。」


「まぁそう言うな。人間なんてそんなもんだ。」


「あ〜…ケンちゃん、それ言っても無駄だぜ。洸は恨み深いからな〜。」


それはこの間身を持って体験したので激しく納得。


本当に兄貴の恨みはしつこい…もはや呪いと言ってもいいな。


兄貴は自覚しているのか、苦笑混じりに呟いた。


「実の所、今回もリベンジの為に来たんですよ。」


「俺を殺りに来たのか?よし、受けてたとう。」


いや、貴方と闘ったら確実に死にますって。


ってか…リベンジ?


なんの?


兄貴はそんな俺の疑問を察したかのようにニヤリと笑った。


「残念ながらお礼参りじゃありません。」


「じゃあ何のリベンジだ?」


「ここの体育館で…ライブをしたいんですよ。」


場は静寂に包まれた。


兄貴…一体何考えてんだ?

更新が遅れがちで本当に申し訳ございません…。

どうか忘れないで下さいm(_ _)m

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