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4-2 流れる涙に少年は思い悩む

大樹視点。

昼休み。


いつも通り放送室のドアに鍵を差し込む…と、開錠の手応え無い。


そのままドアノブを捻ると、すんなりとドアは開く。


「…先客か…?」


授業終了と同時に来たのに…どこの誰だろう?


ゆっくりドアを開くと、室内は静寂に包まれていた。


「…失礼しま〜す。」


一応声をかけながら歩みを進める。


…と、宿直室から拝借し、俺が窓際に設置したソファに誰かが横たわっているのが見えた。


遠目からでも直ぐにわかる…金髪と、手に持たれた赤い眼鏡、金田沙世だ。


俺は溜め息一つ、機材の前に腰を下ろす。


「金田ぁ〜寝てんのか?」


控え目に声をかけるが、返答は無し…。


念のため近付いて口の前に手をかざす。


「スー…スー…。」


「呼吸は…あるな。まぁなきゃ困るけど。」


規則正しい寝息を漏らす金田を、俺はなんともなしに眺めていた。


なんつ〜か…睫毛なげぇな。


「いつもこんだけ静かにしてりゃあ可愛いのに…。」


いつもは口うるさい上に、眉間には皺が寄りっぱなしで…この安らかに眠る姿を見ると別人なのではないかとすら思う。


…まぁ金田の皺の原因はほとんど俺だというのはこの際置いておこう。


ふと金田は寝返りをうつ。


「ったく…あぶねぇなぁ。」


俺はサッと金田から眼鏡を外してやる。


…ってかこの眼鏡…伊達かよ…。


眼鏡属性付加…まぁ、いいか。


俺はCDの積まれたラックの上に無造作に赤い眼鏡を置いてやると、近くにあった小さな椅子に座り鞄を手に取る。



「さて!今日は弁当じゃ〜♪」


俺は気まぐれで雪が作ってくれた弁当を意気揚々と取り出した。















「…起こした方が良いのか?」


弁当を食べ終えた俺は、直もソファで眠り続ける金田を眺めて嘆息した。


校内放送を流す定刻まであと5分…さて、どうしたもんか。


「襲っちゃえば?」


「…そんな卑劣なことできないですよ。」


「大樹君ヘタレだもんねぇ…。」


「余計なお世話です…って。」


誰っ!?


俺が高速で振り向くと、そこには小悪魔の様に微笑む千里さんがいた。


「なななっ、何してんすか!?千里さん!」


「大樹君を探してたの。」


いや、何故?


「携帯のアドレス知らないし。」


疑問点はそこでは無いです。


「一緒に帰ろうと思って。」


疑問が一つ減り、また増えたんですが…。


「だから、まだ道わからないでしょ?」


思考………情報整理。







喫茶カノンで働き始めたのは昨日…。


その帰りに迷子になったのも昨日…。


普通に考えて…俺が今日すんなり喫茶カノンに辿り着ける確率は…0だ。


つまり一緒に帰ろうという台詞には、救済の意図があるわけで…






「ありがとうございます。」


俺はうやうやしく頭を垂れた。


千里さんはそれを見ると満足そうに微笑む。


何故こんなにも気が回るのだろうか?


天は二物を与えない…って嘘だな、絶対。


「じゃあ帰りに校門で待ってるからね。」


「あ、はい。」


そうだ。


俺は歩き去らんとする千里さんの腕を無造作に掴む。


「へ?どうしたの?」


「これ、一応俺のアドレスと番号です。」


俺は胸ポケットから小さなメモ張を取り出すと、一枚破る。



俺は方向音痴以上に機械音痴だ。


…兄貴の音楽機材をいじくって何度殺されかけたことか…。


まぁ…とにかくそんなわけで俺には『赤外線』たらいう機能を活用どころか起動すら出来ない。


よって俺は自分の電話番号及びアドレスを書いたメモを常備している…というわけだ。


今の所このメモを使うことはかなり少ない…別に友達が少ないわけではないと言っておく。


とにかくメモを受け取った千里さんは、メモをポケットに突っ込むと軽く微笑んだ。


「じゃあ後でメールするわね?」


「あ、はい。お願いします!」


メールの見方すら良くわからない…というのはここでは黙って置く。


千里さんはそんな俺の思考を知ってか知らずか…まぁ確実にしらないだろうが、優雅に歩き去って行った。




ため息一つ分の時間。






さて、千里さんとのやりとりで既に時計は校内放送の定刻に迫っているが…金田はどうしたもんか。俺は振り返りソファに寝ている………


いや…さっきまで寝ていた金田を見た。


癖毛だな。


「お、金田。起きたのか?」


「出てって。」







は?









「…なんだよいきなり…」


「いいから出てって、お願い。」


金田の表情はいつもより幾分か無表情だったが、なにやら必死な気持ちが強く伝わってきた。


ってか…何だか目潤んでないか?


眼鏡無しでそれはちょっと…いや、かなりクる…いや、そんなこと言ってる場合じゃねぇな。


相変わらず表情が固い金田の顔を覗き込む…と、目をそらしてくる。


ちょっとストレス…。


「…どっか痛いのか?もしくは風邪とか…」


「いいから早く出てってよ!!」













なんつ〜か…あそこまであからさまに拒絶されたんじゃ…出て行かないわけにはいかないだろ。


…金田は何で泣いていたのか…ってか俺には言えねぇってか…。


何だか…イライラする…。



「いたっ…!あれだよ!」


「あの赤髪のか?」


「マジかよ…!うわぁ〜もろヤンキーじゃん…なんであんなんが…!?」




…ん?




なんか…皆…見てる?


むしろ物凄い量の男子生徒が俺の教室の前に…おいおい、三年や一年も混じってんじゃん!?


何のお祭りだ?


男達は立ち止まる俺を見て…構える。




「…俺達がすべき事は一つ…。」



「「「西河大樹を殺るっ!!!」」」






…気付かないうちに死亡フラグが立っていたらしい。


「なんかしらんけど…俺今虫の居所悪いからな?」


俺は誰にともなく小さく呟いた。

大樹、今回から少し頑張ります(笑)



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