エピローグ
あの後、三日後にデッド・ゲームの終了通知が早紀のもとに届き、それにともない口座には五千万もの大金が振り込まれた。
[risk]のホームページには「ターゲット勝利」の記事が表示され、同時に次回のデッド・ゲームの告知が行われた。
次のターゲットは四十歳の会社社長らしい。
「この人は自分で申し込んだのかな?」
そう言って弘子は笑った。弘子の傷も少しずつ良くなってきている。
弘子を病院に連れていったとき、そこの医者はちらりと見てからこう言った。
「おや、この程度か」
その時はそれがどんな意味なのかわからなかった。だが、時間がたつにつれ早紀はこう考えるようになっている。弘子の傷は本来カードマンを離脱したと認められるほどのものではなかったのかもしれない。それを掃除人が『離脱』と認めてくれたのは、自らが知らないうちにターゲットに指定された早紀への思いやりだったのかもしれない。
いずれにしてもゲームは終わった。
ゲームの最終日、弘子が担当していた作家の紅林孝が病死した。新聞記事で初めて紅林孝の本名が安田孝であることを早紀は知った。それは大学2年の時、早紀にストーカー行為をした男と同じ名前だ。早紀はそのことを弘子に言うのを止めた。きっと人違いだろう。
紅林と仲が良かっただけに弘子はショックを受けていたが、いずれは吹っ切ることが出来るだろう。
またいつもの退屈な日々が戻ってきている。
全てが過去のものとなりつつあった。
二月十八日(土)
PM11:20
昨夜、遅くまで本を読んでいたためだろうか、今朝は珍しく目が覚めなかった。
弘子の部屋はいつもの休みのようにぴったりと閉まっている。まだ起きてはいないのだろう。
眠い目をこすりながら、玄関の郵便受けに目を向けると一通のハガキが届いているのが見えた。
(なんだろ……)
手をのばしハガキを見る。
早紀宛の往復ハガキだった。
一瞬、早紀の表情が変わった。だが、それはすぐにもとに戻った。
「何か来たの?」
弘子の部屋のドアが開き、やはり眠そうな顔をした弘子が姿を現した。
「ううん……なんでもない」
早紀はそう言うとハガキを破った。
「今回、これまでデッド・ゲームを勝ち抜いてきた皆さんを特別なゲーム、『ライフ・ゾーン』にご招待いたします。賞金は一億、ゲーム期間は一ヶ月、ある特定の場所にて行います。参加人数に限りがありますので、参加希望の方は往復ハガキを切り取り、三月七日まで返信ください」
早紀は粉々に破るとゴミ箱に通知を捨てた。
ゲームはもうたくさんだ。




