いつも余計なことばかり!
「婚約破棄だ!
貴様は我が最愛を虐げ国政に要らぬ口を出し混乱させた!いつも余計な事ばかり!追放だ!
国を出て二度と戻ってくるな!!!」
とある夜会、王太子が愛人を抱えながら婚約者の公爵令嬢へそう告げた。
周囲はざわめきとまどい、あるいは公爵令嬢を睨みつけ、あるいは嘲笑った。
婚約破棄された令嬢は表情を変えることもなくただそこにいる。
反論したいことはいくらもあった。婚約してからの努力。おしつけられた労苦。どれだけの献身だったか。それを失えばこの国がどうなるか。
ーーーー言ってもどうせ、届かないーーー
馴染んだ諦めが口をつぐませた。
「かしこまりました」
それだけ告げて、ではーーと立ち去ろうとした瞬間ーーー
【言え!!!!】
何かが魂を貫いた。
言え!ちゃんと!!言うべきことを!!!
熱い塊がこみあげ彼女は口を開いた。
「お言葉ですがまずそちらのご令嬢を虐げたということですが私からは王宮にあがるものとしての最低限のマナーを指摘させていただいたのみでございますこれは独断ではなく彼女への王宮職員からのクレームをうけてのものでございますしクレーム対応日時もひかえております業務改善のため録音もしておりますまた国政に余計な口を出しということですがたとえば殿下がなんかあのへん橋ほしくね?と仰った際の計画立案予算確保工期管理完成祝典の準備のことでしょうかあるいは他国の王族へ相手国の文化から許容し難いマナー違反をぶちかましそうになっていたのをお止めしたことでしょうかあるいは他国の姫君を泥酔の挙句酌婦扱いし休憩室へつれこもうとし戦端がひらかれようとしていたのを紆余曲折の謝罪懐柔調整によりお止めしたことでしょうかあるいは国内貴族の派閥争いからの刃傷沙汰をお止めしたことでしょうか各部署の連携の調整をしたことでしょうか国を守る結界を張ったことでしょうかその維持をおこなっていることでしょうか国内インフラの全てをになっていることでしょうか疫病の蔓延を阻止したことでしょうか薬を配ったことでしょうか怪我人をなおしたことでしょうか溺れた猫を助けたことでしょうか教えていただけますか殿下!
全て余計なことですか!」
一同ええーとなった。王太子は怒った。
「嘘をつけ!お前がいなくなればこの国がまわらんとでもいうつもりか!女一人でどうやって!」
「分身の術と時間停止の術をもってですわ!!他に清掃自動化魔法自動書類分類魔法メンテナンス魔法職員へのバフあとそれから…」
「黙れたわごとを…!!」
切って捨てようとした時、王太子を何かがつらぬいた。
【聞け!!!!!】
熱い塊が王太子とその場のものたちの脳へ届いた。
確かにあの時公爵令嬢が対応していた!彼女が忘れられた仕事をしていた。あの仕事は誰かやったか考えたこともなかった。彼女だった。なんか右向いても左向いても彼女がいた。怖くて脳から消していた!いっぱいいた!!!!
そんな認識がしみわたりーーー…
「いややっぱ余計なことだわ一人でなにやってんだ属人化しすぎたろお前は国を潰す気か」
「なんでですの!!見過ごせばよかったといいますの!!」
「見過ごせ!というかまず指摘しろ!職掌外だろうが!なくなった備品気がついた人が足す決まりだけど私しかやんないのよね〜じゃないんだぞ!
せめてはじめのうちにどっかで痛い目みれば誰かが気付いただろ黙ってやってちゃ元の不備にも気づかんしお前が処理したって報告も出てないぞ!」
「出してますわよ無視されただけですわ指摘だって!!みんな人を小人さんあつかいして!!手柄横取り自分が全部やったような顔をして!!!」
「その上でなんで働くんだよマゾなのか!?つーかそんだけ能力あってなんで人に説明すんのだけくそ下手なんだよプレゼンできねえ職人かなんかかてか外交してたつーなら能力ある上でやんねーだけだろやっぱ嫌がらせか大体報告書出したってどこへだよ部署が全部違うだろうが全体統括者はなにやってんだあっおれか!わかった責任とって今後も奴隷労働たのんだぞ!!」
「お断りです!!!」
言い合う王太子と元婚約者。
そんな二人を眺めながら一人の男が微笑んでいた。
ようしうまくいった!
あのご令嬢が追放されては大変なことになっただろう。
やはり話し合いは大事だな…!!
彼は元冒険者であり、その功績でもって叙爵された紳士であった。
彼には後悔していることがある。
かつて組んでいた冒険者パーティーで、彼は支援魔法を担当していた。
しかしその地味さから功績がわかりにくく、不要なものとしてパーティーを追放されたのだ。
のちにそのパーティーは転落し、彼は支援魔法に磨きをかけて大成した。
そのきっかけは、追放時にギルド職員に言われたことにある。
「元パーティーの彼らはなぜあなたの能力を疑ったの?自分が何をどれだけ行なってるかきちんと説明したの?理解させようとしていたの?ざまあしようと思ってわざと黙ってたの?」
ショックだった。そんな言われ方するなんて!
仲間なら言わずともわかっていたはず!と告げれば、んなわけないだろと返され、一応説明したはず!と言えばそれは理解されるような説明だったのかと詰められた。
なんて不当なと歯噛みしたが、考えてみれば思い当たることはいくらもあった。
そして気付いたのだ。きちんと話すことの大事さに。伝えることの尊さに。
そんなわけで、目の前で一人の少女が説明不足から追放されようとしているのも、貴重な人材を理解不足から失おうとしているのも見逃せず、彼らの「発言力」と「傾聴力」にそれぞれバフをかけたのである。
彼らはきちんと話し合っている。
これでお互い理解し合えることだろう…
彼はそっとその場を立ち去った。
その後を、従者(元パーティーの一人で金が貯まったため念願の農村スローライフを楽しんでいたところ貴族になった馬鹿にそんな落ちぶれた君みてられないよ!と無理矢理貴族パワーで従者にされた)が付き従いながらため息をついた。公爵令嬢に同情していた。
彼女も逃げたかったんだろうにー…
ほんとにこいつは昔っから常時バフかけてくんの感覚狂うからやめろつってんのに僕の魔力量なら大丈夫だよ!てききゃあしねえし戦闘にくわわれないからせめて!てくそまず料理つくって食材無駄にしたり備品管理する!てクソ高ポーション騙されて大量購入したり本当に本当にーーー…
いつも余計なことばかり!!!
るんるんの主人に、うんざりの従者。荒れる会場。
王国の夜は、まだ続くのであったーーー…
支援魔法使いはギルド職員に言われた結果、君が諦めるまで説明するのをやめない!!!になったのでギルド職員はめっちゃ余計なことをしました。めいわく!(´∀`*)




