五十七、ナツヒの疑問
「キサラの小屋にお邪魔しよう!」というマサの余計な一言により、キサラの狭い小屋に鬼が二人入る。
想像以上に奇妙な状況だ。
「キサラ!僕はいつものぉ!」
「はいはい」
マサはいつもの場所に座り、そんなことを言う。
ナツヒは居心地が悪そうに周りを見ながら、椅子に座る。
しかし、マサの一言にはっとする。
「おいまて、いつものとはなんだ、いつものとは」
「ここは僕の領土!キサラにはいつもお茶をもらってるんだぁ」
「はい、いつものお茶です。ナツヒ様も飲みますか?」
「……もらう」
ぶすっと不機嫌そうなナツヒだが、机にお茶を置くと、こわごわながら手を伸ばす。
「苦いですよ」
「……っ!」
「この苦さがたまらないよねぇ。いつも飲んでいるのとは違う、この素朴というか、乱暴な苦さ!」
「マサ……それはキサラを馬鹿にしてないか?」
「え?褒めてるんだよぉ?」
マサはニコニコとお茶を飲んでいる。
「すいません。前もってわかればシノを呼んだのですが」
「いいよ、いいよぉ。シノだって大変だろ?」
「まて、シノってだれだ」
ナツヒはそう言って、眉をひそめる。
しかし、にらみつけてはこない。
キサラは、不可解に感じながらも、答える。
「この近くに住む河童の子です。お茶を淹れるのが上手なので」
「それは河童の能力だねぇ。気温や湿度によって、茶葉の量やお湯の温度とかが感覚的にわかるんだろぉ」
「河童……」
「ナツヒ様の部屋においた植物に与える爪を分けてくれたのもシノですよ」
「ああナツヒ。礼はいらないぞ。僕が伝えておいたからな!」
「……そうか」
マサはニコニコと楽しそうにお茶を飲んでいる。
ナツヒは落ち着かないようにキョロキョロと小屋を見渡していた。
一向に話が始まる気がしない。
自分のお茶を用意したキサラは、自分の寝床に座った。
「で、マサ様。ナツヒ様。今日はどのような用件ですか?」
「いや、ちょっと、その前に……」
ナツヒが手を上げてキサラを制した。
いつもはキサラをまっすぐみて話をするのに、なぜか今日はあまり目が合わない。
「キサラに、聞きたいことが…あるんだが……」
気まずそうな声色。
坂城からは適宜報告があり、冬頃からナツヒが薬を減らしていることも知っているし、その後も調子がいいと聞いている。
マサからも、ナツヒが元々の力を戻してきていると聞いたのに。
「なんでしょう」
「その……」
「キサラ、正直に答えてあげてほしいんだ」
マサも神妙な顔をして、そう言う。
手紙にはそんな真剣な話とは書いていなかった。
「さぁ、ナツヒ」
「なんでお前が仕切ってんだよ」
ナツヒがはぁ、とため息をついてから、お茶を一口飲む。
眉を顰めてごくり、と飲み込んで、キサラを見た。
「その、キサラ」
「はい」
「君には、もう心に決めた人がいるのか……?」
「はい?」




